精選版 日本国語大辞典 「ロビンソンクルーソー」の意味・読み・例文・類語
ロビンソン‐クルーソー
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イギリスの小説家D.デフォーの小説。1719年刊。正式タイトル《ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe》。その写実的手法のゆえに近代イギリス小説の原点と評される。17~18世紀に流行した多くの航海記や,チリ沖のフアン・フェルナンデス諸島に漂着し,5年間孤島生活を送ったというアレクサンダー・セルカークなる人物の実話に刺激されて作られた。商人の息子ロビンソンは父の忠告に反して船員となり,さまざまな苦労ののち,無人島に漂着,28年間,最初は1人で,のちには従僕フライデーとともに自給自足の生活を送り,最後には救出されて帰国する。この作品の成功によって,同年続編も出版された。
この物語は単なる冒険小説ではなく,宗教的寓意があることも重要である。つまり,父に背いて罪を犯した人間が罰せられ,苦しみ,悔い改め,最後に救われるという当時のピューリタンの伝統にそった〈霊的自伝〉でもある。また,限られた物資のなかで生活を築いていくロビンソンの姿は,後世マルクスやウェーバーらの考察するところともなった。たとえばウェーバーは,ロビンソンの現実的・合理的行動様式に〈資本主義の精神〉に照応する目的合理的思考を読みとっている。《ロビンソン・クルーソー》はイギリスだけでなく広く読まれており,この物語をまねた漂流記も多く作られた。ドイツ語には〈ロビンソン・クルーソーもの〉を意味する〈ロビンゾナーデRobinsonade〉という言葉も生まれ,フランス語の俗語〈ロバンソンrobinson〉はロビンソンが用いていたような大型こうもり傘を意味する。日本では早くも幕末にオランダ語訳からの重訳が出版されたが,原文からの翻訳としては井上勤《絶世奇談 魯敏遜(ロビンソン)漂流記》(1883)が初期のものとしては注目に値する。
執筆者:榎本 太+山本 泰男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…だから小説はあくまで真実を語り道徳を高める役割を果たさねばならない,と主張したのである。イギリス小説の初期の傑作たるJ.バニヤンの《天路歴程》(1678,84)はキリスト教精神の弘布の役割を果たすから,デフォーの《ロビンソン・クルーソー》(1719)は事実の記録(今日でいうノンフィクション・ドキュメンタリー)だからという理由で,当時の市民階級の読者から歓迎されたのである。
[特質]
イギリスの小説,特に〈ノベル〉には,それを生み出した地域社会に共通する精神構造や風俗に依拠している部分が多い。…
…だから〈人間と海とが,いわば互いに浸透し合っている国――たいがいの人間の生活に海がはいり込んでいるし,人間の方でも,娯楽なり,旅行なり,または生計の道なりによって,海についてある程度,ないしは何から何まで知っている国〉と,コンラッドの小説《青春》(1902)の中でイギリスが描かれるのも当然であろう。 イギリスの近代小説の発生とほぼ同時に,デフォーの《ロビンソン・クルーソー》(1719)という,今日なお海洋小説の世界的傑作と認められている作品が生まれた。この表題になっている主人公のように,どれほどの危険な苦難を経験しても,海に抵抗できぬ魅力を感じる(主として男の)人物が,未知への探究を求めて多くの小説に登場する。…
…トーリー主義者として知られたアン女王の死後,彼は表面的な政治的活動はひかえざるをえなくなった。しかし,1719年孤島漂流記《ロビンソン・クルーソー》の発表とともに,小説という新しい活動分野を見いだし,以後5年間にわたって《シングルトン船長》(1720),《モル・フランダーズ》《疫病年の記録(ペスト)》《ジャック大佐》(いずれも1722),《ロクサーナ》(1724)などをやつぎばやに出版した。これらの大半は波乱に富む主人公の一代記を〈事実〉の記録として描いたものであり,その写実的な手法のためにイギリス最初の近代小説とみなされている。…
…1498年5月30日,コロンブスが第3次航海の際トリニダード島を〈発見〉し,アリポ山などの3峰を見てトリニダード(スペイン語で〈三位一体〉の意)と名づけた。また,D.デフォーの《ロビンソン・クルーソー》で知られるトバゴ島の名は,先住民たちが愛好していたタバコがなまったものといわれている。行政区域は,8州とトバゴ特別区に分かれている。…
…現在でこそ〈旅行記〉は真実でなければならないと考えるのが常識だが,18世紀ごろまでは事実か創作かの区別はひどくあいまいで,読者も厳密な区別を作者に要求することはなかった。例えば有名な《ロビンソン・クルーソーの生涯と奇しくも驚くべき冒険(ロビンソン・クルーソー)》の初版(1719)の表紙には,〈彼自身によって書かれた〉と記されている。作者デフォーはこれを実録と呼び,読者もそれを信じていたし,これが詐欺であるとか背信行為であると責めることもしなかった。…
※「ロビンソンクルーソー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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