ローマー(英語表記)Romer, Paul

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローマー」の意味・わかりやすい解説

ローマー
Romer, Paul

[生]1955.11.7. コロラド,デンバー
アメリカ合衆国の経済学者。フルネーム Paul Michael Romer。シカゴ大学卒業後,1983年同大学で博士号を取得した。2010年よりニューヨーク大学経営大学院教授,2016~18年には世界銀行チーフエコノミストを務めた。1980年代初頭から,経済成長原動力である技術革新(イノベーション)を,科学的進歩の(外的な)結果としてではなく,市場経済の(内的な)産物として研究し,ロバート・M.ソローの研究を嚆矢とする経済成長論を発展させた。ソローの研究の延長線上にある「(新古典派)最適成長モデル」では,経済は消費者や企業による投資消費のバランスで進行していくと考えるため,長期的には 1人あたりの所得や富は一定の水準に収束し,成長は止まってしまうことになる。このようないわば成長の限界を突き破るものがイノベーションであるが,その推進メカニズムについては理論体系化がなされないままであった。そこでローマーは,イノベーションを推進するものは知識やアイデアであると考え,最適成長モデルの枠組みを拡張し,論文 "Endogenous Technological Change"(1990)などに発表した。これは新発見・新発明への投資やその拡散によって経済が飛躍するような内在的なメカニズムであり,「内生的成長」と名づけられた。2018年,イノベーションを経済成長に組み込んだ研究への功績により,アメリカの経済学者ウィリアム・ノードハウスとともにノーベル経済学賞(→ノーベル賞)を受賞した。

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改訂新版 世界大百科事典 「ローマー」の意味・わかりやすい解説

ローマー
Sax Rohmer
生没年:1883-1959

イギリスの大衆小説作家。本名はウォードArthur Henry Ward。黄禍論にからむ東洋人への恐怖を具現した怪人物フー・マンチューFu Manchuを創造し,《フー・マンチュー博士の秘密》(1913)をはじめ13冊のベストセラー・シリーズを刊行した。幼少年期,彼は夢遊病に苦しみ,同じ寝室で眠る父親を殺しかけたこともあったといわれ,また一時期にはオカルト結社〈黄金の暁教団〉にも参加した。
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世界大百科事典(旧版)内のローマーの言及

【フー・マンチュー】より

…イギリスの作家S.ローマーのベストセラー連作小説の主人公。単行本第1作《ドクター・フー・マンチューの秘密》(1913)によると,彼は北京の篤実な漢方医であったが,義和団の鎮圧にあたった西欧列強軍によって妻子を殺されたのを機に,白人への復讐と世界征覇の野望に燃える冷酷な殺人鬼と化した。…

※「ローマー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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