ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローマー」の意味・わかりやすい解説
ローマー
Romer, Paul
アメリカ合衆国の経済学者。フルネーム Paul Michael Romer。シカゴ大学卒業後,1983年同大学で博士号を取得した。2010年よりニューヨーク大学経営大学院教授,2016~18年には世界銀行チーフエコノミストを務めた。1980年代初頭から,経済成長の原動力である技術革新(イノベーション)を,科学的進歩の(外的な)結果としてではなく,市場経済の(内的な)産物として研究し,ロバート・M.ソローの研究を嚆矢とする経済成長論を発展させた。ソローの研究の延長線上にある「(新古典派)最適成長モデル」では,経済は消費者や企業による投資と消費のバランスで進行していくと考えるため,長期的には 1人あたりの所得や富は一定の水準に収束し,成長は止まってしまうことになる。このようないわば成長の限界を突き破るものがイノベーションであるが,その推進メカニズムについては理論体系化がなされないままであった。そこでローマーは,イノベーションを推進するものは知識やアイデアであると考え,最適成長モデルの枠組みを拡張し,論文 "Endogenous Technological Change"(1990)などに発表した。これは新発見・新発明への投資やその拡散によって経済が飛躍するような内在的なメカニズムであり,「内生的成長」と名づけられた。2018年,イノベーションを経済成長に組み込んだ研究への功績により,アメリカの経済学者ウィリアム・ノードハウスとともにノーベル経済学賞(→ノーベル賞)を受賞した。
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