ワサビノキ(英語表記)horseradish tree
Moringa oleifera Lam.

改訂新版 世界大百科事典 「ワサビノキ」の意味・わかりやすい解説

ワサビノキ
horseradish tree
Moringa oleifera Lam.

ワサビのような辛みのあるワサビノキ科半落葉性の小高木。樹高5~10mほどになり,まばらに分枝した枝に,通常3回羽状に切れ込んだ大きな葉を互生あるいは対生状につける。黄白色の花は葉に腋生(えきせい)する大きな円錐花序に多数つき,花弁は5枚,径2~3cm。果実は長円柱形で両端はとがり,長さ30~60cm,熟すと裂開して多数の翼のある種子を放散する。インド原産で,現在は東南アジアからマレーシア地域,アフリカやアメリカ熱帯域で栽植されている。若葉は柔らかく野菜として利用されるが,根は特に辛みが強く,ワサビダイコンのように香辛料として利用される。種子からはベン油ben oilが搾られ,時計油,絵画材料あるいは香油原料に使われる。熱帯では庭園に観賞樹として植えられることもある。

 ワサビノキ科Moringaceaeはワサビノキ属だけからなる単型的な科で,マダガスカル島に茎が多肉化する数種を産し,アフリカにも少数種が分布する。マダガスカル産の多肉種は観賞用に栽培されることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワサビノキ」の意味・わかりやすい解説

ワサビノキ
わさびのき
[学] Moringa oleifera Lam.

ワサビノキ科(APG分類:ワサビノキ科)の落葉小木。モリンガともいう。インド、ミャンマービルマ)一帯が原産地。樹高数メートルで、樹皮はコルク質で灰色。葉は枝に互生し、3回羽状複葉で長さ約60センチメートル、裏面は灰白色。花は葉腋(ようえき)に円錐(えんすい)花序をなしてつき、白い蝶形(ちょうけい)の五弁花で香りがよい。果実は棒状で30~60センチメートル、9本の稜(りょう)があり、枝からぶら下がる。果実の中には球形で翼のある種子がある。植物体全体に辛味がある。とくに根の辛味が強く、香辛料に用いる。未成熟の果実はドラムスティックとよばれ、インドでは一般的な野菜である。また、種子は良質の油を含み、これを絞ってベン油またはモリンガ油とよび、時計など高級機械油に用いた。またサラダ油や香油としても用いられる。繁殖は実生(みしょう)により、生育は速く、熱帯全域に広まっている。ワサビノキ科は双子葉植物、離弁花類。草質の低木で、1属10種あり、熱帯に分布する。

[星川清親 2020年10月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワサビノキ」の意味・わかりやすい解説

ワサビノキ
Moringa oleifera; horse radish tree; ben tree

ワサビノキ科の落葉高木で,インド東部とミャンマーに原産する。大型の3回羽状複葉を互生し,葉の裏面は粉白を帯びる。葉腋に大きな円錐花序を出し,白色5弁の花を多数つける。花弁の基部には黄色の斑点があり,5枚のうち上側の3枚は大きく,立上がって全体は蝶形花のようになり,芳香がある。長さ 50cmあまりもの長大な棍棒状の果実 (莢) を下垂する。植物体全体,特に根に辛み成分があり,香辛料となる。若い莢は野菜として食用,また種子をしぼってとる油 (モリンガ油 moringa oil) は時計用などの機械油とする。

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