一旦(読み)いったん

精選版 日本国語大辞典 「一旦」の意味・読み・例文・類語

いっ‐たん【一旦】

[1] 〘名〙 (「旦」は朝の意)
① ある日の朝。また、朝の時間の一回分。ある朝。ひと朝。また、一日。
※霊異記(810‐824)下「一旦に二人の命を亡(ほろぼ)さむ」
※山王絵詞(1310頃)三「一旦に雷電して盤石ことごとく摧破しぬ」 〔白居易‐燕詩示劉叟詩〕
② 本格的でない短期間。また、永続的でない短時間。一時。しばらくの間。多く「いったんの」の形で用いられる。
※玉葉‐承安三年(1173)一〇月二一日「雖其実、一旦之風聞、奇怪無双者」
※平松家本平家(13C前)一「一旦の楽にほこって後生を知らざらん事の心憂さに」 〔史記‐蕭相国世家〕
一度。ひとたび。かつて一度心に決めたことなどについていうことが多い。
[2] 〘副〙
① 本格的でなく、かりそめであるさま。また、持続的でなく一時的であるさま。しばらくの間。一時的に。ちょっと。
古事談(1212‐15頃)三「一旦蘇生せさせて、念仏をも申してきかせまほしく侍り」
※平家(13C前)七「汝等は一旦したがひつく門客にあらず、累祖相伝の家人(けにん)也」
② (一時的である可能性はあるが、ともかく) 今までとは異なる事態に移る区切りとなるさま。ひとたび。一朝(いっちょう)。仮にも。
徒然草(1331頃)一二九「一旦恥ぢ恐るることあれば、必ず汗を流すは、心のしわざなりといふことを知るべし」
※虎明本狂言・禰宜山伏(室町末‐近世初)「一たんはむりをいひかけた程に」
[語誌]→「いったん(一端)」の語誌

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デジタル大辞泉 「一旦」の意味・読み・例文・類語

いっ‐たん【一旦】

《「旦」は朝の意》
[名]
一度。「一旦中止と決まっていた」
しばらくの間。一時。
「―の楽しみにほこって、後生を知らざらん事の悲しさに」〈平家・一〉
あの時一度。
「―の御心をそむき」〈曽我・七〉
[副]
ひとたび。一度。「一旦怒りだすと、手がつけられない」
ひとまず。一時的に。「一旦帰国する」
アクセントイッタン、はイッタン
[類語]一度一回一遍ひとたび一朝

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「一旦」の読み・字形・画数・意味

【一旦】いつたん

ひとたび。〔後漢書、王符伝〕察の仁義の志りと雖も、一旦富貴なれば、則ち親に背きを捐て、其の本心を喪(うしな)ふ。

字通「一」の項目を見る

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