一見(読み)いちげん

精選版 日本国語大辞典 「一見」の意味・読み・例文・類語

いち‐げん【一見】

〘名〙
① (「げん」は「げんざん(見参)」の略) 初めて対面すること。
※仮名草子・心友記(1643)下「大かた人間の心は、一げんにて見ゆるなり」
② なじみでなく、初めてであること。もと、上方遊里で「初会」の意に用いたが、のち、一般町家でも用いた。一面識。
浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)中「今日の客は一げんの田舎の侍」
婚礼諸式の一つ。婿が初めて嫁の親に対面すること。初婿入り。もともと婿入婚儀式であったが、嫁入婚になって意味内容が混乱し、親族初対面里帰りの挨拶の意にまで使われるようになった。
人情本・萩の枝折(1818‐30)前「婚礼の前に聟どのを、一現(ゲン)に連れて来て下すっては」
※浄瑠璃・心中天の網島(1720)上「痛はし共笑止(せうし)共一げんながら武士の役」

いっ‐けん【一見】

〘名〙
① (━する) 一度見ること。一通り見ること。ちらっと見ること。一覧
古今著聞集(1254)二〇「微禽奇体、今遂一見之望
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)あさか山「黒塚(くろつか)岩屋一見し、福島に宿る」 〔漢書‐趙充国伝〕
② (━する) 一度会うこと。初対面。いちげん。
③ (副詞的に用いて) ちょっと見ると。
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四「其一見人を射るの異彩なきにもせよ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「一見」の意味・読み・例文・類語

いっ‐けん【一見】

[名](スル)
一度見ること。ひととおり目を通すこと。「一見に値する」「百聞一見かず」
ちらっと見ること。「一見して事の重大さを悟った」
(副詞的に用いて)ちょっと見たところ。「一見まじめそうな人」
一度会うこと。初対面。いちげん。
「―ながら武士の役、見殺しにはなりがたし」〈浄・天の網島
[類語]ちらりちらとちらっとちらちらちらりちらりちら見一瞥いちべつ一目ひとめ一目いちもく瞥見べっけん一顧ちょっと見

いち‐げん【一見】

初めて会うこと。特に、旅館料理屋などの客がなじみでなく、初めてであること。また、その人。「一見さんはお断りしています」
遊里で、遊女に初めて会うこと。初会。
「―に馴れ馴れしきことながら」〈浄・万年草
[類語]顧客花客得意クライアント乗客旅客観客観衆聴衆お客様

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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