七声(読み)シチセイ

デジタル大辞泉 「七声」の意味・読み・例文・類語

しち‐せい【七声】

中国日本音楽で、音階を構成する七つの音。五声に、呂旋法では変徴変宮律旋法では嬰商えいしょう嬰羽の二音を加えたもの。七音。

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精選版 日本国語大辞典 「七声」の意味・読み・例文・類語

しち‐せい【七声】

〘名〙 中国・日本の音楽理論用語。宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)の五声に変徴(へんち)・変宮(へんきゅう)または嬰商(えいしょう)・嬰羽(えいう)の二声を加えた七つの階名。七音(しちいん・しちおん)。〔古今著聞集(1254)〕 〔魏書楽志

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改訂新版 世界大百科事典 「七声」の意味・わかりやすい解説

七声 (しちせい)

中国,日本の音楽理論用語。宮・商・角・徴(ち)・羽の五声に変徴,変宮の2声を加えたもので,7音音階を意味する。角を三分損一して変宮を求め,変宮から三分益一により変徴を求める(三分損益)。音高を低い方から高い方へ順に並べて宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮・宮とする。変徴は徴より約半音低く,変宮は宮より約半音低い。

 中国における七声の起源は,《国語》(前5世紀)の七律,《左氏伝》《呂氏春秋》(前3世紀)の七声にさかのぼる。《淮南子(えなんじ)》(前2世紀)では変徴を繆(びゆう),変宮を和と称するが,《後漢書》律暦志では変徴,変宮を加えた七声を記している。しかし湖北省随県の曾侯乙墓(戦国初期)から1978年に発掘された64個の鐘(しよう)と32個の磬(けい)に刻まれた七声・十二律の名称から,古くは後世の七声名のほかに多数の名称があったこと,および七声が実用されたことも明らかになった。雅楽では五声を正声と称して重視したが,俗楽は七声も用い,六朝時代後半に西域楽の影響を受けた俗楽,胡楽では七声は頻繁に用いられた。亀茲の蘇祇婆(そぎば)が北周代に伝えたインド系の七調は七声組織に基づくと考えられ,それを理論的に発展させたものが隋の鄭訳の八十四調であり,唐の俗楽二十八調はこれを整理したものである。七均(7組の7音音階)上にある宮・商・角・羽をそれぞれ調首とするものが二十八調であって,後世の俗楽に大きく影響したが,近世の中国の調では五声が用いられることが多い。
五声
 日本には奈良時代に七声の名称と理論が中国から伝えられ,雅楽や声明の呂旋(りよせん)に中国の七声の名称がそのまま用いられている。しかし,調によっては変徴・変宮は徴・宮より1音低い場合もある。律旋では嬰商(えいしよう)・嬰羽の独自の名称を用い五声に加え宮・商・嬰商・角・徴・羽・嬰羽の七声とする。嬰商・嬰羽は商・羽より約半音高い。しかし実際の日本音楽では,7音音階は雅楽に用いられるほかは,ほとんどの音楽が5音音階によっているために,嬰商・嬰羽の名称は用いられても商・羽と並んで七声を構成することは少ない。
音階
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百科事典マイペディア 「七声」の意味・わかりやすい解説

七声【しちせい】

中国・日本の音楽理論用語。1オクターブ内の7つの音からなる音列(7音音階)のこと。中国では三分損益で得られる最初の7つの音をいい,結果的に下から順に,宮(きゅう),商(しょう),角(かく),徴(ち),羽(う)からなる五声に,変徴(へんち),変宮(へんきゅう)の2音を加えたもの。各音の音程関係は西洋音楽のファソラシドレミに等しい。日本の雅楽や声明(しょうみょう)でも,その理論を取り入れたが,実際の音列は異なり,ソラシドレミファに等しくなった。そのほか,律旋では独自の名称を用いて,商よりも半音高い嬰(えい)商,羽よりも半音高い嬰羽の2音を加えてレミファソラシドに等しい音列が想定された。しかし事実上は七声が全部使われるわけではなく,ときによりそのうちの5音のみが使われる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「七声」の意味・わかりやすい解説

七声
しちせい

中国,日本の音楽理論用語。7音音階の別称。5音音階において,固有の5音のほかに派生の2音を加えたものの称。中国では五声のほかに変徴と変宮の2声を加えたもので,インド起源の西域楽が流入したために生れたと考えられる。日本では,その七声のほかに,五声に嬰商,嬰羽の2声を加えた七声が考えられ,五声を五音ともいうのに対して,七音ともいった。しかし,いずれの七声理論も音楽の実際に合致しないということから,古来,さまざまな議論が続けられてきている。

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世界大百科事典(旧版)内の七声の言及

【五音】より

…そのため,前者を呂角,後者を律角ということがある。五音や,これに変徴,変宮の二つを加えた七声の概念は,雅楽や声明(しようみよう)の理論として中国から伝えられたものだが,音楽が日本化するとともに理論の修正も行われて,律の調子において嬰商,嬰羽の二つを加えるなどのことも行われた。さらには,日本固有の各種の音楽も,五音や七声の理論で説明された時期があったが,近年はごく限定的に用いるのみとなった。…

※「七声」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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