三次元蛍光スペクトル(読み)サンジゲンケイコウスペクトル

化学辞典 第2版 「三次元蛍光スペクトル」の解説

三次元蛍光スペクトル
サンジゲンケイコウスペクトル
three-dimensional fluorescence spectrum

波長の異なる励起光によって得られる複数の蛍光スペクトルを,励起波長,蛍光波長,相対蛍光強度の三つの直交軸からなる空間座標のなかに三次元的に表したもの.通常は,励起光として紫外から可視光線領域の単色光を用い,波長の異なる単色光を固体試料あるいは液体試料に順次照射しながら,そのつど蛍光スペクトルを測定し,測定されたすべての蛍光スペクトルを一括して表示したもので,物質固有の蛍光特性を励起波長,蛍光波長,相対蛍光強度の三つのパラメーターで同時にみることができる.三次元蛍光スペクトルを等高線図に書き換えれば,物質固有の蛍光特性が等高線のパターンとして現れ,指紋情報としてとらえることができ,その等高線ピークの位置は,物質固有の励起極大波長と蛍光極大波長を示し,斜めに連なるピークは,励起光の散乱光(二次,三次,1/2次…)またはラマン散乱光など蛍光ではない成分を示す.この手法によって,単一成分だけではなく,多成分系の異なる蛍光物質を等高線ピークの位置とパターンによって同定することができる.日本古来の染織物や浮世絵版画の非破壊分析において,その染色や着色料として使用された貝紫,紫根,藍(あい),黄檗(きはだ),苅安(げあん),梔子(くちなし),蘇芳(そほう),茜(あかね),紅花(べにばな)などの動物植物に由来する染料が同定されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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