三河万歳(読み)みかわまんざい

精選版 日本国語大辞典 「三河万歳」の意味・読み・例文・類語

みかわ‐まんざい みかは‥【三河万歳】

〘名〙 三河地方を本拠として発達した万歳。また、その演者烏帽子大紋を着た太夫と鼓を打つ才蔵とが家々を回って祝言を述べ、こっけいな掛け合いを演じた。国の重要無形民俗文化財。《季・新年》
談義本・艷道通鑑(1715)四「春の始より世事をわするる媒となせりける今の世、国ひろまりし三河万歳(ミカワマンザイ)は是也」

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デジタル大辞泉 「三河万歳」の意味・読み・例文・類語

みかわ‐まんざい〔みかは‐〕【三河万歳】

愛知県三河地方を根拠地として、各地を回った正月祝福芸中啓ちゅうけいを持った太夫たゆうと鼓を打つ才蔵が、家々を訪れて祝言を述べたり、こっけいな掛け合いをしたりするもの。西尾市安城市に伝わる。 新年》

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三河万歳」の意味・わかりやすい解説

三河万歳
みかわまんざい

愛知県西尾市上町(かみまち)の森下万歳(西野町万歳)と、同県安城(あんじょう)市別所町の別所万歳の総称。しかし、この二つの万歳は別物である。森下の伝承演目は「御門開き」(御殿万歳とも)一つ。別所は「三羽鶴(さんばづる)の舞」「七草の舞」(以上旧風を称す)「天の岩戸開きの舞」(新風を称す)の三つ。しかし、同じ安城市でも福釜(ふかま)万歳は尾張(おわり)万歳系で、西尾市の隣の額田(ぬかた)郡幸田(こうた)町の万歳も同様で、三河万歳と尾張万歳は混同されやすいが、まったくの別種である。森下も別所も太夫(たゆう)と才蔵の2人1組で、太夫は烏帽子(えぼし)に大紋の直垂(ひたたれ)、才蔵は侍烏帽子に素襖(すおう)風のものを着るが、森下は太刀(たち)持ちを従える。ともに徳川家康と同郷国の縁で、江戸時代には苗字(みょうじ)帯刀の待遇を受けたが、現行四曲に徳川家をたたえる寿詞(ことほぎ)はなく、明治以降神道(しんとう)職的傾向を強め神道三河万歳を称したためか、皇祖をたたえる寿詞も混在する。来歴は森下が六説、別所が四説を伝え、不詳ながら文武(もんむ)天皇時代の吉良(きら)太夫を祖とする説は一致する。なお、別所万歳は万歳師の転居によって茨城県筑西(ちくせい)市にもある。

[西角井正大]


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百科事典マイペディア 「三河万歳」の意味・わかりやすい解説

三河万歳【みかわまんざい】

西三河地方を根拠地として,各地を門付(かどづけ)してまわる万歳。江戸時代,三河が徳川家の出身地であることから,三河のある大夫が毎年江戸城に参入するならわしもあり,三河万歳は各地でなじまれ,盛んになった。現在も安城市,西尾市にのこり,新年に関東,関西を訪れる。

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デジタル大辞泉プラス 「三河万歳」の解説

三河万歳

愛知県の三河地方(現在の安城市、西尾市、額田郡幸田町)に伝わる民俗芸能。中啓(ちゅうけい)を持った太夫と、鼓を持った才蔵が祝言を述べ、舞を舞う。古くは「千秋万歳」とも呼ばれた新春の祝福芸。1995年、国の重要無形民俗文化財に指定。

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世界大百科事典(旧版)内の三河万歳の言及

【万歳】より

…万歳の宮中への参入は大正時代中ごろまであったといい,民間では第2次世界大戦ころまでは盛んであったが,戦後はしだいに衰微し,現在は全国をめぐり歩く万歳の姿はほとんど見かけなくなった。 民俗芸能として地域に残るのは〈尾張万歳〉〈越前万歳〉〈伊予万歳〉などで,〈三河万歳〉〈秋田万歳〉〈加賀万歳〉〈会津万歳〉〈豊後万歳〉は衰微し,〈大和万歳〉〈仙台万歳〉〈津島万歳〉〈伊六万歳〉,沖縄の〈京太郎(ちよんだらあ)〉は廃絶した(京太郎の芸系をひく民俗芸能は現存する)。 万歳は一般には太夫と才蔵の2人が一組になり,太夫が扇をかざし,いろいろとめでたい寿詞(ほぎごと)を言い立て,才蔵が小鼓を打ち囃して合の手を入れる掛合いで進行する。…

※「三河万歳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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