三物(読み)みつもの

精選版 日本国語大辞典 「三物」の意味・読み・例文・類語

みつ‐もの【三物】

〘名〙
武具で、鎧(よろい)の胴・袖・兜(かぶと)三種の称。
※太平記(14C後)一〇「三つ物四つ物取著て、あたりを払て馳向ければ」
騎射の三種。流鏑馬(やぶさめ)笠懸(かさがけ)犬追物(いぬおうもの)の称。流鏑馬がすたれた後は、かわりに歩射(ぶしゃ)を加えた。
※世阿彌筆本謡曲・柏崎(1430頃)「ゆみわ三ものとやらんをいそろえ、うた・れんか・さうか・こうたも、じゃうずにて」
連歌俳諧発句(第一句)と脇(第二句)と第三句の称。近世以降は歳旦の祝儀に特に詠むことが多い。三物連歌。《季・新年》
※咄本・百物語(1659)上「脇第三をいたし三つ物仕らんとて」
武家の奏者の所持する品物で、太刀折紙・状箱の称。
※風呂記(16C後‐17C前か)「状箱折紙太刀、是を三物と云なり」
⑤ 三つ身の着物をいう。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)三「偖此眼七が単物は、昨日富沢町で買てさんじましたゆゑ、是がみつものでござります」
⑥ 古着。引き解いて、表・裏・中綿の三つに分けて売ったところからいう。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「みつものを下女は直斗聞て見る」
田楽で、鼓や笛など同種の鳴り物三つで演奏すること。
⑧ 料理で、椀盛り刺身甘煮の三品、または口取り・刺身・焼肴の三種の称。
洒落本・廓宇久為寿(1818)前「大広蓋の三つ物(モノ)銚子さかづきのみぞ、残りける」
⑨ 江戸時代、大坂堂島の米市で、米の三斗俵をいう。〔大坂繁花風土記(1814)〕

さん‐ぶつ【三物】

〘名〙
① 民を教化する三つの事柄六徳六行六芸の称。〔周礼地官大司徒
② 古く中国で、いけにえの血をすすり合って盟約を結ぶ時、いけにえにする三種の家畜、豕・犬・鶏の総称。〔詩経‐小雅・何人斯〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三物」の意味・わかりやすい解説

三物
みつもの

3種のそろった物の意で、武家では武具の鎧(よろい)の胴、袖(そで)、兜(かぶと)をはじめとして、馬上から弓を射る騎射のうちの流鏑馬(やぶさめ)(これが廃れたのちは歩射(ぶしゃ))、笠懸(かさがけ)、犬追物(いぬおうもの)をいい、武家の奏者が所持する太刀(たち)、折紙、状箱をいった。連歌(れんが)、俳諧(はいかい)では発句(ほっく)(第一句)、脇句(わきく)(第二句)、第三句をいい、とくに近世以降には、この三物を歳旦(さいたん)の祝儀として詠むことが多い。庶民的なところでは三つ身の着物をいったり、古着をいったが、これは表、裏、中綿の三つに引き解いて売ったからだといい、また料理でも椀(わん)盛り、刺身、甘煮の三品をいったり、口取り、刺身、焼き魚をいったりする。

[宇田敏彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三物」の意味・わかりやすい解説

三物
みつもの

(1) 鎌倉時代以来行われた3つの射芸。馬上で行う流鏑馬 (やぶさめ) ,笠懸 (かさがけ) ,犬追物 (いぬおうもの) と,徒歩で行う大的 (おおまと) ,草鹿 (くさじし) ,円物 (まるもの) がある。 (2) 武具のうち,の胴,袖,冑をいう。 (3) 連歌,俳諧における発句脇句,第三句をいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「三物」の読み・字形・画数・意味

【三物】さんぶつ

詛盟の犠牲。

字通「三」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android