三礼(読み)さんらい

精選版 日本国語大辞典 「三礼」の意味・読み・例文・類語

さん‐らい【三礼】

(「らい」は「礼」の呉音)
[1] 〘名〙
中国天神地祇(ちぎ)・人鬼(亡き人の魂)をまつる儀式。〔書経‐舜典〕
② 仏語。身・口(く)・意の三業に敬意を表わして三たびひざまずいて礼拝すること。三拝。
※貞信公記‐抄・延長三年(925)八月二三日「僧綱十一人・延暦寺座主等為揚御経題人、三礼以上僧綱」
③ 三種類の礼拝。すわって頭を地面につける稽首礼(上礼)と、ひざまずいてする跪礼(中礼)と、胸の前で組み合わせた両手を前に出して上下させる揖(ゆう)礼(下礼)の三つ。〔書言字考節用集(1717)〕
仏像を彫刻する時、一刻みするごとに三度礼拝すること。一刀三礼(いっとうさんらい)
※雑俳・柳多留‐六七(1815)「三礼の小刀蓮の水で研ぎ」
御堂関白記‐寛弘八年(1011)三月二七日「呪願定澄僧都、読師成秀、三礼懐寿、唄慶命」
[2]
[一] 中国古代の礼儀、制度を記した周礼(しゅらい)儀礼(ぎらい)礼記(らいき)の三書の総称
※続日本後紀‐承和一二年(845)二月丁酉「真貞以三伝三礼業。兼能談論」 〔南史‐伝隆伝〕
[二] 真言宗で唱える声明曲。「一切恭敬…」という句をきわめて重重しく唱える。

さん‐れい【三礼】

〘名〙 (「れい」は「礼」の漢音)
① 三つの大切な礼儀作法。すなわち、食事の際の礼法茶の湯の礼法、書道の礼法をいう。〔譬喩尽(1786)〕

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デジタル大辞泉 「三礼」の意味・読み・例文・類語

さん‐らい【三礼】


三たび礼拝すること。
中国で、天神地祇ちぎ・人鬼を祭る三つの儀式。さんれい。
稽首けいしゅゆうの3種の礼拝。
儒教経典うち、礼に属する儀礼ぎらい周礼しゅらい礼記らいきの3書。

さん‐れい【三礼】

さんらい(三礼)

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普及版 字通 「三礼」の読み・字形・画数・意味

【三礼】さんれい・さんらい

経典中の儀礼・周礼・礼記。〔後漢書、盧植伝〕少(わか)くして玄と(とも)に馬融に事(つか)ふ。能く古今の學にじ、を好みて句を守らず。~句、三禮解詁を作る。時に始めて太學の石經を立て、以て五經の字を正す。

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改訂新版 世界大百科事典 「三礼」の意味・わかりやすい解説

三礼 (さんらい)
Sān lǐ

中国の礼に関する3種の古典,《周礼(しゆらい)》《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》の総称。《周礼》は《周官》ともいい,理想の官制をしるした行政法典。《儀礼》は士人階級の冠婚喪祭など宗教的政治的儀礼の集録。《礼記》は礼の精神や理論および解説を記した書。この三礼に注を施した後漢の鄭玄(じようげん)は,とくに《周礼》を重視し,《周礼》を中核に,《儀礼》《礼記》を関連させ,学説を調整して,礼の強固な体系化をこころみた。
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世界大百科事典(旧版)内の三礼の言及

【葬制】より

他界【内堀 基光】
【中国】

[葬礼]
 中国は,礼の国と言われるほどに各種の儀礼が発達しているが,その中でも死者に対する葬礼は細微な点に及んで複雑である。それは,危篤が確認されたときから始まり,儒家の経典である《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》《周礼(しゆらい)》の三礼(さんらい)に基づいて進められる。賓客の来訪に備えて家を清掃し,病人を北牖(まど)の下に頭を東にして寝かせる。…

※「三礼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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