三社祭(読み)さんじゃまつり

精選版 日本国語大辞典 「三社祭」の意味・読み・例文・類語

さんじゃ‐まつり【三社祭】

[1] 〘名〙 東京都台東区にある浅草神社(旧称三社明神社)の祭礼。正和五年(一三一六)に神託を得てはじめられたもので、五月第三金・土・日曜日(古くは三月一七、一八日。明治以降は五月一七・一八日)に行なわれる。拍板(びんざさら)行事が有名で、江戸三大祭の一つ。浅草祭。さんじゃさい。《季・夏》
※清元・彌生の花浅草祭(善玉悪玉)(1832)「彌生なかばの花の雲、鐘は上野か浅草の、利生は深き宮戸川誓ひの網の古(いにし)へや、三社祭の氏子中」
[2] 歌舞伎所作事。
[一] 清元節。二世瀬川如皐(じょこう)作詞。清元斎兵衛作曲。二世藤間勘十郎、松本五郎市振付。本名題「彌生の花浅草祭」。天保三年(一八三二)江戸中村座初演。浅草三社祭の山車(だし)の人形を舞踊化したもの。漁師浜成と武成が船で網を打っていると、天から善玉と悪玉が降ってきて二人にのり移り、踊るというもの。別名「善玉悪玉」。
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「三社祭(ジャマツリ)の善玉悪玉のごとき宝珠の玉が二つ」
[二] 常磐津節。「三世相錦繍文章(さんぜそうにしきぶんしょう)」三社祭礼の段の通称。

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デジタル大辞泉 「三社祭」の意味・読み・例文・類語

さんじゃ‐まつり【三社祭】

東京都台東区にある浅草神社(旧称、三社明神社・三社権現)の例祭。毎年5月17・18日の両日(近年は5月中旬)に行われ、びんざさら舞などが奉納される。浅草祭。 夏》
歌舞伎舞踊清元。本名題「弥生の花浅草祭」。2世瀬川如皐せがわじょこう作詞、初世清元斎兵衛作曲。天保3年(1832)江戸中村座初演。三社祭の山車だしの人形を舞踊化したもの。通称、善玉悪玉。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三社祭」の意味・わかりやすい解説

三社祭
さんじゃまつり

東京都台東区浅草寺境内に隣接する浅草神社例祭。正和1(1312)年に始まったと伝えられ,本来は 3月17,18日の祭りだったが,1872年以降 5月17,18日となり,今日ではこの日に近い金曜日から日曜日にかけて行なわれている。浅草神社は,浅草寺創建伝承に語られる隅田川から観音菩薩像を引き上げた 3人の漁師を祭神とすることから,江戸時代には三社権現社と呼ばれ,1873年に浅草神社と改称してからも三社明神,三社さまの名で親しまれており,例祭も三社祭と通称される。祭りの中心行事は,日曜日の 3基の宮神輿(→神輿)の氏子町内渡御だが,江戸時代末までは,祭神の観音像引き上げの故事にちなんだ船祭りが中心で,宮神輿は浅草橋の船着場から駒形橋まで大森の漁師の船に乗って船渡御し,神社にかえっていた。また,船渡御に先立って,各町から出された山車が神輿に参って芸能を奉納していた。今日では,土曜日の例大祭の神事のあと,各町から出された約 100基の神輿が集合し,浅草神社でお祓を受けて各町に向けて渡御する連合渡御が行なわれている。このほか,祭り初日の金曜日には,鷺舞やビンササラ舞(→ささら)の奉納もある。

三社祭
さんじゃまつり

歌舞伎舞踊曲。本名題『弥生の花浅草祭』。通称『善玉悪玉』ともいう。天保3 (1832) 年江戸中村座で初演。作詞2世瀬川如皐,作曲清元斎兵衛,振付2世藤間勘十郎,松本五郎市。浅草観音の守護神とされた江戸三社権現の例大祭に題材をとったもので,現存の宮戸川の場は,山車人形に擬した神功皇后と武内宿禰の踊りを引抜いたあとの部分。浅草寺の観音像を網打ちで引上げて2人の漁師が踊っていると,にわかに天から降りた善玉,悪玉が乗移る。この善玉,悪玉は山東京伝の黄表紙『心学早染草』に趣向を仰いでいる。速いテンポと軽快な振りがこの曲を特異な秀作としている。

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改訂新版 世界大百科事典 「三社祭」の意味・わかりやすい解説

三社祭 (さんじゃまつり)

東京都台東区浅草の浅草神社の夏の例大祭。5月中旬に行われる。浅草神社は,推古天皇のころ宮戸川(隅田川)に出漁して浅草寺(せんそうじ)本尊の観音像を網で引き上げたという,土師真仲知,檜前(ひのくま)浜成,檜前武成の3人の漁師をまつっている。このため古くは三社権現,三社明神と称された。三社祭は古くは3月に行われていたが,明治時代以後5月17,18日に行われるようになった。祭では氏子区域の町から100余基の神輿(みこし)が,宮入りと称して,神社におはらいを受けに繰り込み,仲見世(なかみせ)を練る。また古い伝統をもつ拍板(びんざさら)の舞が五穀豊穣を祈って奉納される。これは〈びんざさら〉や太鼓,笛にあわせて田楽,獅子舞を行うもので,一時中断していたが,近年復活したものである。本社の神輿3基も氏子の町内を渡御する。
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三社祭 (さんじゃまつり)

歌舞伎舞踊。清元。本名題《弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり)》。作詞2世瀬川如皐。作曲初世清元斎兵衛。振付2世藤間勘十郎。1832年(天保3)3月江戸中村座で4世坂東三津五郎と2世中村芝翫(4世歌右衛門)により初演。浅草の三社祭に材を得た三段返しの一つで,山車(だし)人形を舞踊化したもの。漁師浜成と武成が,天から降ってきた善玉と悪玉に魅入られて踊る。跳躍的な軽快さを見せる舞踊として,現在まで流行している。
執筆者:

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知恵蔵mini 「三社祭」の解説

三社祭

東京都台東区で行われる浅草神社の祭礼。運営・浅草神社奉賛会。江戸時代には浅草寺と一体となった祭として行われ、1872年から5月17日・18日の両日に祭礼を行うようになった。1963年からは、5月17日・18日に近い金曜日から翌土曜日、日曜日の3日間に行われている。主な行事は次の通り。金曜日「大行列(雨天中止)」「氏子各町神輿神霊入れの儀(うじこかくちょうみこしみたまいれのぎ)」、土曜日「町内神輿連合渡御(ちょうないみこしれんごうとぎょ)」、日曜日「宮出し」「本社神輿各町渡御(ほんしゃみこしかくちょうとぎょ)」。毎年計150万人ほどの人出がある。

(2015-5-15)

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「三社祭」の解説

三社祭
(通称)
さんじゃまつり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
弥生花浅草祭
初演
天保3.3(江戸・中村座)

三社祭
さんじゃまつり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治40.4(東京・宮戸座)

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事典・日本の観光資源 「三社祭」の解説

三社祭

(東京都台東区)
台東区思い出の景観30選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の三社祭の言及

【浅草寺】より

…また三社権現(現,浅草神社。檜前兄弟と土師をまつる)の祭礼三社祭は江戸三大祭の一つとされ,四万六千日(ほおずき市),歳の市(羽子板市)などとともに今日も続く代表的祭礼となっている。堂塔は関東大震災にも無事で人々の観音信仰を集めたが,太平洋戦争による空襲で焼亡し,本堂は1958年,五重塔は73年再建された。…

【三社祭】より

…このため古くは三社権現,三社明神と称された。三社祭は古くは3月に行われていたが,明治時代以後5月17,18日に行われるようになった。祭では氏子区域の町から100余基の神輿(みこし)が,宮入りと称して,神社におはらいを受けに繰り込み,仲見世(なかみせ)を練る。…

※「三社祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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