三菱ふそう MIQCS燃焼システム

日本の自動車技術240選 の解説

三菱ふそう MIQCS燃焼システム

低スワール,大口径燃焼室,高圧燃料噴射を組み合わせ,燃焼温度を低減し,低排出ガス化と低燃費化を両立。--ディーゼルエンジンの低排出ガス化と低燃費化を両立するための燃焼コンセプトは,予混合燃焼の抑制拡散燃焼の活性化です。そのためには,燃料噴霧と空気を均一希薄(リーン)混合気化することと,火炎温度の低い燃焼を実現することです。そこで,コモンレールシステムによる高圧噴射化と小径多噴口噴射ノズルに,低スワール吸気ポートと口径大浅皿燃焼室を組み合わせたMIQCSを開発,ニ段燃焼の具現化による熱効率の高い低排出ガスエンジン実現し,2000年に大型トラックに搭載・発売しました。2003年にはMIQCSに,高精度なクールドEGRや電子制御技術を導入,一層のNOxとPM低減を図りました。同時にブローバイガス吸気還元システム(PCV),故障診断装置(OBD)を採用しています。さらに新開発「連続再生式DPF」を組み合わせ,PM排出量を大幅に低減,国内大型トラックで初めて新短期排出ガス規制および超低PM排出ディーゼル車認定制度(新短期PM規制値の75%以上の低減)に適合しています。そしてお客様に,低燃費で高い信頼性を持つクリーンなディーゼル車をお届けすることが出来ました。製作(製造)年2000
製作者(社)三菱ふそうトラック・バス㈱(当時 三菱自動車工業㈱)
資料の種類量産品
種類ディーゼル
会社名三菱ふそうトラック・バス株式会社
用途排出ガス浄化,燃費向上
実物所在国内
搭載車種大型トラック・バス
製作開始年2000
製作終了年2000
設計者協力:Bosch㈱
エピソード・話題性長期規制対応のための新エンジン開発に当たり,燃焼システムをどうするかが最大の解決課題でした。ジャーク式ユニットインジェクターかコモンレールシステムのどちらにするか?・・・も揉めに揉めていました。EGRシステムの導入は必須でした。そして,低排出ガス化に加え燃費改善は至上命題でした。使命を終えるエンジンの燃費が良く,市場を席捲していたからです。燃費の三菱!の評判を勝ち取ったエンジンでした。新エンジンの低排出ガス化と低燃費化の両立を賭け,エンジン開発陣の総力を挙げた戦いが続きました。ディーゼルエンジンの燃焼を支配する,空気エネルギーと燃料の噴射エネルギーの分担をどうするか?リッチ・リーン二段燃焼の実現のために空気利用率を見直し,改善し,EGR導入下での燃焼をどう成立させ低NOx化と低燃費化を両立するか?・・・各コンポーネントの特性や性能や機能を全て洗い出し,新たな組み合わせを模索し続けました。まさにプロジェクトXの世界でした。・・・そしてついに,MIQCSを見出す事が出来ました。3年にも渡る苦難道程を,研究・開発陣の力を合わせ乗り切りました。MIQCSを新エンジンに装着,車両に搭載し,販売に漕ぎ付ける事が出来ました。
特徴低NOx化を狙い,低スワール化と口径大浅皿型燃焼室を組み合わせて空気流動を抑制し低温予混合燃焼の実現を図りました。さらに,低黒煙や低燃費化を狙いとし,吸気ポートの流量係数向上とVG過給機制御による空気量の増大および燃焼室外のシリンダー周辺空気の積極的活用による,低温でリーンな拡散燃焼が実現出来ています。噴射系は,コモンレールシステムによる高圧噴射に小径多噴口噴射ノズルを組み合わせ,いわゆる二段燃焼を直噴ディーゼルエンジンで実現した世界初の燃焼システムです。さらに,低スワール化に伴う空気流動抑制は,熱損失低減が図れ燃費低減の効果を高めています。
参考文献・SAE2000-01-1811(森 一俊,上瀧 裕史,酒井 健次 他)・自動車技術会2000年春春季大会前刷集 20005034(上瀧 裕史,酒井 健次,森 一俊 他)・自動車技術会シンポジウム「新開発エンジン」 20014124(岡田 誠二,東新 元伸,松口 竜弥,内海 紀之)・三菱自動車テクニカルレビューNo.13(上瀧裕史,森一俊,酒井 健次 他)・三菱自動車テクニカルレビューNo.15(上瀧裕史,森一俊,酒井 健次,岡田 誠二)

出典 社団法人自動車技術会日本の自動車技術240選について 情報

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