三部仮名鈔(読み)さんぶかなしょう

精選版 日本国語大辞典 「三部仮名鈔」の意味・読み・例文・類語

さんぶかなしょう サンブかなセウ【三部仮名鈔】

浄土宗向阿上人証賢による「帰命本願鈔」三巻・「西要鈔」二巻・「父子相迎」二巻の総称。元亨年間(一三二一‐二四)の成立。立派な和文体で、巧みに浄土教を宣揚する。

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デジタル大辞泉 「三部仮名鈔」の意味・読み・例文・類語

さんぶかなしょう〔サンブかなセウ〕【三部仮名鈔】

鎌倉時代の仏教書。向阿証賢こうあしょうけん著。元亨年間(1321~1324)成立。「帰命本願鈔」3巻・「西要鈔」2巻・「父子相迎」2巻の総称。和文で、浄土宗教義を説く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三部仮名鈔」の意味・わかりやすい解説

三部仮名鈔
さんぶかなしょう

証賢(向阿(こうあ))の著作。『帰命(きみょう)本願鈔』『西要(さいよう)鈔』『父子相迎(そうごう)』の3部の総称で、1321年(元亨1)ごろに成立。法然(ほうねん)の浄土教の旨趣を流麗な和文で説いた書。『帰命本願鈔』は、真如堂(しんにょどう)参籠(さんろう)のおり、夢うつつに聞いた修行者と老僧問答を記す形をとって、阿弥陀仏(あみだぶつ)の本願と本願力による往生を明らかにし、悪人往生の道を説く。『西要鈔』は、清凉寺(せいりょうじ)参籠中に見聞した老僧と老少男女との問答の形をかりて、信心念仏のあり方を述べる。『父子相迎』は、慈父である仏に迎えとられた衆生を子に例え、この世のいとわしさと浄土の願わしいさまを説く。

伊藤博之

『『国文東方仏教叢書1 法語』(1925・東方書院)』『『大正新修大蔵経83』(1924~34・大蔵出版)』

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改訂新版 世界大百科事典 「三部仮名鈔」の意味・わかりやすい解説

三部仮名鈔 (さんぶかなしょう)

浄土宗一条派の向阿証賢の作,浄土宗の教義を和文で平易に説く。元亨年間(1321-24)に成立。《帰命本願(きみようほんがん)鈔》3巻,《西要(さいよう)鈔》2巻,《父子相迎(ふしそうごう)》2巻の3部7巻よりなる。《帰命本願鈔》では弥陀の本願に帰依して念仏往生を願うべきことを勧め,《西要鈔》では女人往生,一念多念など教義上の問題を平易に説き,また《父子相迎》では弥陀と衆生の関係を父子になぞらえ,厭離穢土(おんりえど)・欣求浄土(ごんぐじようど)の思想に徹すべきことを強調している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三部仮名鈔」の意味・わかりやすい解説

三部仮名鈔
さんぶかなしょう

鎌倉時代末期の仏教書。向阿 (証賢) 著。7巻3冊。元亨年間 (1321~24) の成立。「帰命本願鈔」「西要鈔」「父子相迎鈔」の3部から成る浄土宗の教義を説いた書。

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