上人(読み)ショウニン

デジタル大辞泉 「上人」の意味・読み・例文・類語

しょう‐にん〔シヤウ‐〕【上人】

知徳を備えている、すぐれた僧。
法橋ほっきょう上人位」の略。→法橋
浄土宗日蓮宗時宗で、敬称。「日蓮上人」「親鸞上人
寺院住職
[類語]和尚大師阿闍梨三蔵猊下

じょう‐にん〔ジヤウ‐〕【上人】

身分の高い人。また、道理のよくわかっている人。
「―は彼を呼んで才子となすも、下人は却て之を嫌忌す」〈織田訳・花柳春話

うえ‐びと〔うへ‐〕【上人】

殿上人てんじょうびと」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「上人」の意味・読み・例文・類語

しょう‐にん シャウ‥【上人】

〘名〙
① 智徳を備え、仏道の修行に励み、深大な慈悲心をそなえている高僧をいう。聖人(しょうにん)
※凌雲集(814)「謁海上人五位下行内膳正仲雄」 〔釈氏要覧‐称謂・上人〕
隠遁の高僧。
壒嚢鈔(1445‐46)二「隠遁の僧を上人と書、又聖人と書は何れか正そ」
僧位の名。法橋(ほっきょう)上人位の略。
薩戒記‐応永三三年(1426)一〇月一七日「御祈願寺及上人号等之綸旨」
僧侶の敬称。浄土宗、日蓮宗、時宗でいう。
平家(13C前)一〇「ふたたび上人の見参にまかり入るべきで候けり」
※浮世草子・好色五人女(1686)一「正覚寺に入て上人をたのみ、十六の夏衣けふより墨染にして」
⑤ 江戸時代、天明一七八一‐八九)頃、京都の遊郭で幇間(ほうかん)をいう隠語
談義本・つれづれ睟か川(1783)四「上人とさへいへば、髭のながい東山辺の和尚様ならんとおもひのほか、短い羽織きたたいこもち」

じょう‐にん ジャウ‥【上人】

〘名〙
① 身分の高い人。上流の人。また、物の道理をよくわきまえた人。
仮名草子・古活字版竹斎(1621‐23頃)上「一条殿か二条殿の御公達と打見えて、上人おはします」
② 気だてのよい人。正直で温和な人。

うえ‐びと うへ‥【上人】

〘名〙 (「うえひと」とも) 昇殿を許された人。四位、五位の人および六位蔵人(くろうど)。うえの男(おのこ)殿上人
※宇津保(970‐999頃)国譲下「大殿、うへ人などしてわたり給ひぬ」

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改訂新版 世界大百科事典 「上人」の意味・わかりやすい解説

上人 (しょうにん)

一般的には,智徳を備えた僧への敬称。また法橋上人位(ほつきようしようにんい)の略称。864年(貞観6)僧位三階(僧位)の一つとして法橋上人位が設けられ,僧官の律師階に相当した。この上人号は,後世,僧官制が乱れるとともに,諸宗や民間で転用かつ私用されるようになった。平安中期から本寺を離れて別所に隠遁したり,回国遊行して修行,作善勧進する僧が現れ,彼らを上人,聖人(ひじり)などとよぶことが一般化した。上人号をもって世人から敬慕された最初は空也といわれる(《諸門跡譜》《和訓栞》)。室町~江戸時代には各宗で上人号の綸旨を受けることが行われた。その綸旨を受けると,香衣を着ることができた。浄土宗では上人号を受けることを出世といった。浄土系諸宗や日蓮宗では僧の通号となっている。浄土宗では〈誉〉の字を用いて何誉上人,浄土真宗では〈如〉の字を用いて何如上人,時宗は〈阿〉の字を用いて何阿上人,日蓮宗は〈日〉の字を用いて日何上人と号する。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上人」の解説

上人
しょうにん

仏・菩薩や徳行に秀でた聖者,高徳な僧侶に対する敬称。中世以降はとくに遁世した僧侶に対する呼称となり,時宗では阿号,浄土宗では誉号,浄土真宗では如字,日蓮宗では日字につけられて使用されたほか,禅僧・律僧にもみられる。聖(ひじり)・聖人と混用されるが,15世紀初頭前後からは上人号として勅許され,一種の僧位に転じた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上人」の意味・わかりやすい解説

上人
しょうにん

学識や人徳,すべてに卓越し,人々を導くにふさわしい高徳の僧侶をいう。ときに聖人と書いたり,上人と聖人とを区別して用いる場合もある。

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普及版 字通 「上人」の読み・字形・画数・意味

【上人】しようにん

僧の尊称。

字通「上」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の上人の言及

【住職】より

…住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。南都系や平安仏教系寺院では寺主(じしゆ),維那(いな),院家(いんけ),隠元(いんげん),浄土真宗や日蓮宗(法華宗)や時宗では上人(しようにん),禅宗では方丈,和尚,住持,長老(ちようろう)などの,住職をさす尊称がそれである。また,由緒ある大寺院ではその寺固有の歴史的呼称もある。…

【聖人】より

…また仏・菩薩を聖人と名づける場合もある(《大般涅槃経》聖行品)。上人と音が同一のため混用される。また上人をさらに尊んでいう場合に聖人の語を用いる。…

※「上人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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