(読み)した

精選版 日本国語大辞典 「下」の意味・読み・例文・類語

した【下】

[1] 〘名〙
[一] 位置の関係で、低い方。一定の広さのある下部の平面。
① 低い場所や位置。⇔
(イ) 見おろされるような低い所。下方。
※古事記(712)上・歌謡「烏草樹(さしぶ)を 烏草樹の木 其が斯多(シタ)に 生ひ立てる 葉広 斎(ゆ)つ真椿」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「水鳥のあをははいろもかはらぬを萩のしたこそけしきことなれ」
(ロ) その上に、あるものが接して乗っている位置、場所。
※古事記(712)上・歌謡「栲衾(たくぶすま) さやぐが斯多(シタ)に あわ雪の 若やる胸を 栲綱(たくづの)の 白き腕」
(ハ) 転じて、有力者の庇護を受けている地位。有力者の保護のもと。
※源氏(1001‐14頃)須磨「ありかたき御かへりみのしたなりつるを」
(ニ) 物が自然な状態にあるとき、地面に近い部分。底。
※書紀(720)天智九年六月(北野本訓)「六月に邑中(むら)に亀(かはかめ)を獲(え)たり。背に申の名を書(しる)せり。上(うへ)黄に下(シタ)(くろ)し」
※伊勢物語(10C前)二七「水口に我や見ゆらむかはづさへ水のしたにて諸声になく」
(ホ) 階下。また、遊里(吉原)で、二階にいる女郎に対し、階下にいる主人・男衆などをいう。
※歌舞伎・傾城壬生大念仏(1702)上「姫君は是にござるぞ、と下へ降り蔵を開き」
※婦系図(1907)〈泉鏡花〉後「上草履の音に連れて、下階(シタ)の病室を済ました後(あと)
(ヘ) (特に、遊女屋などで、主人の居る部屋(内証)が階下にあったところから) 内証をいう。また、そこにいる主人。
※洒落本・禁現大福帳(1755)一「先の器量ほどに持てまいり、内證(シタ)へも損かけず」
(ト) 本や紙を置いたときその人に近い部分。また、正常に立てたとき下部になる位置。
(チ) あることがらの決定的な影響下。…のため。
※太平記(14C後)三九「侍一人に仰付けられて、忠諫の下に死を賜て、衰老の後に尸を曝さん事、何の子細か候ふべきと」
② 事物の程度が低いこと。
(イ) 比較して、力量の劣っていること。劣勢であること。敗勢。
※義経記(室町中か)三「さては早我はしたになるござんなれ」
(ロ) 比較して、数量、年齢などの点でより少ないこと。また、そのもの、人。
※塵劫記(1627)上「先づ下の五厘より下へ二けた下がり居て」
※道(1962)〈庄野潤三〉二「上の子が五つ、下が三つで」
(ハ) 比較して、階級や身分、地位などの低いこと。また、その人。部下。下男。
※四河入海(17C前)八「昔の山簡は只葛強一人をしたにもったぞ」
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉一一「彼(かの)士官の無口なのには誰しも閉口〈略〉況(ま)して部下(シタ)の者に歯など見するはおもひもよらず」
(ニ) 能楽で、ワキ・ツレなど従の立場にある演技者。
※申楽談儀(1430)観阿「十二六郎は若くて下にてつけし也」
(ホ) 高音に対して低音。音階の低い音。
※申楽談儀(1430)文字なまり・節なまり「『皆人は六塵(ぢん)』と急に『わ』を言ひ捨てて直に移るべし。『六塵』、したより言ふ、悪き也」
(ヘ) 下等の見物席。桟敷(さじき)などの特別席に対していう。
浮世草子世間胸算用(1692)三「芸子に目をつかはせ、下なる見物にけなりがらせける」
(ト) 「したばたらき(下働)」の略。
※桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉二四「併し下を働くには下女もゐるのだし」
[二] 物事の裏面に関すること。さえぎられて見えない部分。内側。
① 包まれている部分。他の物でおおわれて隠れている部分。物の内側。中。内。
※万葉(8C後)七・一二七八「夏影の嬬屋(つまや)の下に衣(きぬ)(た)つ吾妹(わぎも) 裏まけて吾がため裁(た)たばやや大に裁(た)て」
※平家(13C前)三「浄衣のしたに薄色のきぬを着て」
② こころ。心の奥。内心。
※古事記(712)下・歌謡「大和へに 行くは誰が夫 隠津の 志多(シタ)よ延へつつ 行くは誰が夫」
曾我物語(南北朝頃)一「上にはなげくよしなりしかども、したには喜悦の眉をひらき」
③ 内々であること。多く、動詞の連用形を伴って、副詞化したり、「したに」の形で副詞的に用いる。ひそかに。
※古事記(712)下・歌謡「志多(シタ)問ひに 我が問ふ妹を 斯多(シタ)泣きに 我が泣く妻を」
※源氏(1001‐14頃)帚木「狭き所に侍ればなめげなることや侍らむとしたに歎くを聞き給ひて」
④ 表立たせないこと。争いなどを公に持ち出さないこと。転じて、示談(じだん)
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)三「此論下(シタ)にて済難く両人御前へ罷出右の段々申あくれば」
[三] 時間的もしくは空間的に、あとの時点、個所。
① すぐあと。直後。即刻。
※曾我物語(南北朝頃)一「滝口が弟の三郎、いでよ、といふ、ことばのしたより、いでにけり」
② つながったもののあとの部分。
※平家(13C前)三「年号月日の下には、孝子成経と書かれたれば」
[四] 食べ残し、飲み残しのもの。特に、貴人が食べ残した食事の残り。おした。
※源平盛衰記(14C前)三三「其の後根井猫間殿の下(シタ)を取って中納言の雑色に給ふ」
[五] 代償や代金の一部分としてさし出す品物。
※咄本・聞上手(1773)暦「その代り今までの暦を下(シタ)にやりますから、取りかへてくださりませ」
[六] (江戸時代、大奥や大名などの奥向きで) 実家、町方などをいう。さと。やど。
※人情本・春色玉襷(1856‐57頃)三「宿(シタ)へ下るのは止しにいたさう」
[2] 〘語素〙
① 名詞の上に付いて、現在より前、過去などの意を表わす。「した夫(お)」など。
② 名詞の上に付いて、準備、試み、また、あらかじめするなどの意を表わす。「下書き」「下稽古」「下検分」など。

しも【下】

〘名〙 もと、「流れの下流のほう」をいった語か。または、「ひと続きのものの末」をさしていった語か。後には「ものの低い部分」「地位や価値の低いもの」「中心から離れた地域」などの意にもいう。した。⇔上(かみ)
[一] ひと続きのものの末の方。
① 川の、川口に近いほう。下流。川下。
※古今(905‐914)離別・三九六「あかずしてわかるる涙たきにそふ水まさるとやしもはみゆらん〈兼芸〉」
② 和歌などの後半、または、終わりの部分。また、物語などの後半部分。→下(しも)の句
天徳四年内裏歌合(960)「右歌のかみしものくのかみに、おなじもじぞあめる」
③ 時の移り変わりを水の流れに見立てて、現在に近い方をいう。
※千載(1187)序「かみ正暦のころほひより、しも文治のいまにいたるまでのやまとうたを、えらびたてまつるべきおほせ事なんありける」
④ 月の下旬。→下(しも)の十日
⑤ ある時点またはある箇所からあとの部分。以下。次。
※本百法顕幽抄平安中期点(900頃)「答曰下(しも)は是れ後を生す文なり」
⑥ (①の意から) 川の下流に近い開けた地方。
※明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎憲法発布と日清戦争「夏祭に下(シモ)(東京前橋等すべて川しもの開化した地方を指す言葉)の方から来た射的の的は」
[二] 高い部分に対して低い部分。
① 低い所。下部。下方。した。
※蜻蛉(974頃)中「夜うちふけて外(と)の方を見出だしたれば、堂はたかくて、しもは谷と見えたり」
② 体の腰より下の部分。特に、陰部、尻(しり)などをいう。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉附録「瘡守(かさもり)稲荷とも云ひ、腫物だとか下(シモ)の方の病に御利益が有る」
③ 袴(はかま)。肩衣(かたぎぬ)を上(かみ)というのに対する。
※虎明本狂言・二人袴(室町末‐近世初)「下はあれども上がなひ、いまからかりにやってもおそからふず、それも大事なひ、しも斗きせてやらふ」
⑤ (客間、座敷、客席などを上(かみ)というのに対して) 台所、勝手などの称。
⑥ 大小便。
⑦ 月経。
俚言集覧(1797頃)「下(シモ) 糞を云〈略〉又月水の下と云下を見るなど云り」
⑧ 下品なこと。みだらなこと。しもがかり。
ヰタ・セクスアリス(1909)〈森鴎外〉「Gin が利いて来る。血が頭へ上る。話が下(シモ)へ下って来る」
[三] 価値の低い方。劣っている方。
① 価値、能力などが劣っていること。
※古今(905‐914)仮名序「人丸は赤人がかみにたたむ事かたく、赤人は人まろがしもにたたむことかたくなむありける」
② 官位、身分の低いもの。臣下。人民。した。
※古今(905‐914)雑体・一〇〇三「身はしもながら ことの葉を あまつそらまで きこえあげ〈壬生忠岑〉」
③ 雇われている者。召使い。
※枕(10C終)一〇四「しもなどとりつぎまゐる程、これはたおほやけしう唐(から)めきてをかし」
④ 貴人の座から離れた座席。下座。
※大和(947‐957頃)一四五「上達部(かむだちめ)、殿上人、みこたちあまたさぶらひたまうければ、しもに遠くさぶらふ」
⑤ 貴人の座から離れた建物や部屋。入口や台所に近い部屋。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「藤壺(ふぢつぼ)は踏歌のよりはしもにおはしませば、御せうそこも聞き、きみたちも参り給ふ」
[四] 中心から離れた地方をいう。御所から離れた地。また、都から離れた地方。
① 下京(しもぎょう)のこと。
※今昔(1120頃か)二七「今昔、或る人、方違(かたたが)へに下(しもの)辺也ける所に行たりけるに」
② 京都から見て、大坂をさしていう語。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)五「太夫さまに御目にかかり下(シモ)へ参る段申し上げたれば」
③ 中国・四国・九州などの西国地方。「日葡辞書」「ロドリゲス日本大文典」などでは、とくに九州地方に限定して用いている。
※日葡辞書(1603‐04)「Ximo(シモ)〈訳〉下方の部分。また、西のこのあたりの島々、あるいは諸国」
※虎明本狂言・鈍太郎(室町末‐近世初)「わきざになをり、下京はかみ、上京は下になをる」

さが・る【下】

〘自ラ五(四)〙
① 一端が物に付いて下方にたれる。ぶらさがる。
※万葉(8C後)五・八九二「綿も無き 布肩衣(ぬのかたぎぬ)の 海松(みる)のごと わわけ佐我礼(サガレ)る 襤褸(かかふ)のみ 肩にうち懸け」
※俳諧・続猿蓑(1698)夏「姫百合や上よりさがる蛛の糸〈素龍〉」
② 高い所から低い所へと移る。
※枕(10C終)一八〇「髪のかしらにもより来ず、五寸ばかりさがりて、火をさしともしたるやうなりけるに」
※平家(13C前)四「あがる矢をばついくぐり、さがる矢をばをどりこえ」
③ 一方、または一部が他より低くなる。
※大鏡(12C前)二「御めのしりのすこしさがり給へるが、いとどらうたくおはするを」
④ 前から後へと位置が変わる。
(イ) 進んで行く仲間から遅れる。あとになる。
※平家(13C前)四「さがらう物をば、弓のはずにとりつかせよ。手をとりくみ、肩をならべてわたすべし」
(ロ) 後へ引き退く。
※落語・鉄拐(1890)〈禽語楼小さん〉「後方へ退(サガッ)て見て居ろ」
⑤ 地位の上の人のいる所から離れ去る。
(イ) 目上の人や客などのいる前などから退く。退出する。
※落語・将棋の殿様(1889)〈禽語楼小さん〉「設令(たとひ)上のお手討ちに成ますとも決して御前は退(サガ)りません」
(ロ) 食べ終わった料理の膳が台所などへ運ばれる。
※雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一四下「ほうばって置て禿はさがりんす」
(ハ) 奉公先から暇をもらって家へ帰る。
※雑俳・柳多留‐三(1768)「下る乳母てい主にこにこ櫃をしょい」
(ニ) ((ハ)から転じて) 勤務先、稽古所、学校などから帰る。また、そこへ行くのをやめる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「おいら抔(なんざ)ア、お師匠様から下ると毎日行まアす」
⑥ (内裏が北にあったので、北に行くのを「あがる」というのに対して) 京都で、南へ行く。また、大阪では城と反対の方へ行く。
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「京極を下(くだ)りに三条までさがりて」
⑦ 物事の程度などが低くなる。
(イ) 価値や技能が低くなる。劣る。
※東大国文研究室本十訓抄(1252)三「或はふかくなるをもあなづる。或はわれより下れるをも侮る」
※風姿花伝(1400‐02頃)一「さる程に、あがるは三十四五までのころ、さがるは四十以来なり」
(ロ) 値段、相場などが安くなる。
※日葡辞書(1603‐04)「ネガ sagaru(サガル)
(ハ) 温度が低くなる。
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生と虚空「熱は前より下がってゐたが、脈は依然として思はしくなかった」
(ニ) 強さ、良さなどの度合がおとろえる。また、おちぶれる。
※虎明本狂言・楽阿彌(室町末‐近世初)「猶も輪廻の妄執は、此としまでも、すきのさがらぬ」
⑧ 官庁から許可や命令などの書類、また、給与などが渡される。
※暴風(1907)〈国木田独歩〉二「父の専一は昔しの判事で多少の恩給は下(サガ)るが」
⑨ 時がある時刻を過ぎる。また、時代が移る。
※宇治拾遺(1221頃)一一「辰の時とこそ催しはありしか、さがるといふ定(ぢゃう)、午未の時には、わたらんずらんものをと思て」
⑩ 支払いがすまないで、掛けになってたまる。
※談義本・風流志道軒伝(1763)三「(こじり)のつまる鐘撞堂(かねつきどう)、借(サガッ)た跡での板橋より」
⑪ 魚、肉などが腐る。
※日葡辞書(1603‐04)「イヲ、または、ニクガ sagaru(サガル)
⑫ 鷹(たか)が死ぬことをいう、忌み詞。
※龍山公鷹百首(1589)「鷹の死ぬるをば、そこねたる共、さかりたる共云也」

さがり【下】

〘名〙 (動詞「さがる(下)」の連用形の名詞化)
① 下方に垂れること。また、そのもの。
(イ) つりさげて用いる釜。→鍑(さがり)
(ロ) 衣服の飾りとして垂らす紐。
※装束抄(1577頃)「奴袴之括〈略〉腹白の組は二筋にて、さがり四つあり」
(ハ) 六尺ふんどしの前部に垂らす布。歌舞伎では奴(やっこ)などが豪華なものをつける。
※浮世草子・好色万金丹(1694)五「せわしき御見(ごげん)に枕もとらず帯もほどかずに胸を押し上げ、褌のさがりは跡へはづして置き」
(ニ) 相撲で、力士がまわしの前に垂らす紐(ひも)状の飾り。
※俳諧・野の錦(1767)「手を当る角力のさがりわづか也」
(ホ) 和船の船首材みよしの先端につける黒い縄の装飾。近世初期以来、みよしを長く突き出した関船や弁才船につけられ、衝突の際、船を痛めないためというが、効果は疑問。琉球産のクロツグ、または、シュロを縄になって作る。かもじ。〔和漢船用集(1766)〕
② 目上の人のもとから退くこと。
※読本・昔話稲妻表紙(1806)一「藤波が妹の於竜、姉の下(サガ)りのいつより遅きを案じ」
③ 神仏の前からさげた供え物。転じて、目上の人からゆずり渡された衣類や品物。
※浮世草子・新色五巻書(1698)二「身はなまくらものと人にいはれ、さがりくふ身は我ながら知らず」
④ 高い所から低い所へと移ること。また、ある部分が他より低くなっていること。
八雲御抄(1242頃)六「管絃に長ぜん人は、ことふえのさがりあがり、いささかのたがひも明らかにきくべし」
⑤ 価値、値段、相場などが安くなること。→下がりを請ける
※漢書列伝竺桃抄(1458‐60)一「左遷は為中(ゐなか)へいた事を云ぞ〈略〉朝廷にいるよりはさがりぞ」
⑥ 物事の程度が低くなること。衰えること。
⑦ 時がある時刻を過ぎること。
※十訓抄(1252)七「さきざきは巳時ばかりかならず鳴が、午時のさがりまでみえねば、いかならんと思て」
⑧ 支払いのしてない金額。未払い分の勘定。未払金。さがりがね。
※広福寺文書‐文中二年(1373)一二月一三日・平澄隆去状「高良山御如法経料足借用物のさかりの分に引申候田地事」
⑨ 卑賤の者や芝居者の称。
⑩ 囲碁で、盤端の第二線ないし第四線の位置にある石から、盤端に向かって下降するように同一線上に並べて打つ手。

くださ‐・る【下】

[1] 〘他ラ下二〙 ⇒くだされる(下━)
[2] 〘他ラ五(四)〙 (近世以降、(一)が四段活用化したもの)
[一]
① 「与える」「くれる」の意の尊敬語。お与えになる。お下しになる。
※歌舞伎・仏母摩耶山開帳(1693)一「三匁下さるなら取持ちませう」
② 「もらう」の意の謙譲語。いただく。頂戴する。特に、飲食物をいただくの意で、飲食するのをへりくだっていうのに用いる。
※洒落本・駅舎三友(1779頃)二階「『まだまだもちるいでくへねへのは、疝気もちとはいとりもち』『アイその外、なんでも下さります』」
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五「ハイ、さけはすきで、一升ざけを下さります」
③ (もらっても、ありがたくないの意からか、また、「くだらない」に連想してできたものか) 好ましく感じられる。また、下に打消の語を伴って、くだらない、つまらない、の意に用いる。→くださらぬ
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「さういふ似而非なる奇人は、あんまり下(クダ)さった方じゃアないネヱ」
[二] 補助動詞として用いる。他の動作を表わす語句について、その動作の主が恩恵を与える意を、恩恵を受ける者の立場から敬っていう。「…(て)くれる」の尊敬語。
(イ) 動詞に接続助詞「て」のついたものにつく。
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三「よふ生きてゐて下さって、父をおがむ有がたや」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「私のやうなものでもあちこちからお世話遊して下(クダ)さいますがネ」
(ロ) 動詞の連用形に「お」を冠したもの、あるいは動作性の漢語名詞に「ご」を冠したものにつく。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)初「御慈悲に命をおたすけ下さりまし」
※人情本・いろは文庫(1836‐72)二五「御気に障ったら、御勘弁下(クダ)さい」
[補注](1)命令形が「ください」となること、助動詞「ます」に続くとき「ください」の形が現われること、「ます」の命令形「まし」「ませ」が直接付くことなどから、特別ラ行四段活用とか、ラ行変格活用とか呼ぶ意見もある。→ください
(2)「た」「て」に続くとき、「浮世風呂‐三」の「をばさんがうめて下(クダ)すって、てうどよいお加減だ」などのように「くだすって」「くだすった」の形をとる場合がある。

げ【下】

〘名〙 (「下」の呉音)
① した。⇔上(じょう)
② 価値が低いこと。劣ること。下等。⇔上(じょう)
※蓮如上人御一代記聞書(16C後)「下(げ)としたる人の云事をば用ひずして心ず、腹立するなり」
③ 書物、文の章段、演劇の場面など、二つまたは三つに分けたものの、最後のもの。
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉上「跡は下の巻で話すでござろう」
④ 能楽用語。
(イ) (「下三位(げさんい)」の略) 世阿彌が能の美を上中下の三段階に品等した、その下の三風。強細風(ごうさいふう)、強麁風(ごうそふう)、麁鉛風(そえんふう)をさす。
※風姿花伝(1400‐02頃)三「能に上・中・下の差別(しゃべつ)あるべし」
(ロ) 「げおん(下音)②」の略。
⑤ 邦楽用語。
(イ) 雅楽の琵琶の感所(かんどころ)の名、また、その音。
(ロ) 横笛の指孔の一つ。譜字としては省略してと書き、「げ」と読むことが多い。
※懐竹抄(12C末‐13C初か)「竹腹上一二三四五六七穴。如行呼之為次干五夕中六口也」
(ハ) 笙(しょう)の管の名の一つ。およびその管の出す音(嬰ヘ)。またその音を基本とする合竹(あいたけ)(=和音)の名。
※吉野吉水院楽書(1239‐1336頃)「一、笙笛竹名 千十下乙工(く)美一八也言(ごん)七行上()凡(ぼ)乞毛比」

くだん・す【下】

〘他サ特活〙 (「くださんす」の変化した語)
[一] 近世語。「くださいます」の意の女性語。
※浮世草子・御前義経記(1700)六「是爰なうそつき、やくそくの鼻紙はいつくだんす事ぞ」
※随筆・独寝(1724頃)上「たばこ火ひとつくだんせ」
[二] 補助動詞として用いる。「…てくだんす」の形で、「…てくださいます」の意の女性語。
※歌舞伎・当麻中将姫まんだらの由来(1698)上「はてこな様さへ女ばうにしてくだんすなら、わしはどう也共」
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「ああいやもういふてくだんすな、〈略〉いっそしんでのけたい」
[語誌](1)江戸時代前期に上方で遊女詞として発生し、やがて一般女性にも広まった。上方では、後期になると男性一般にも用いられたが、江戸では、後期になっても主に遊里で用いられた。
(2)活用は、終止形に「くだんす」とともに、「浄・長町女腹切‐下」の「聞へぬこといふてくだんする」のように、「くだんする」もみられる。

くださん・す【下】

〘他サ特活〙 (「くださります」の変化した語。一説に「くださる」に助動詞「んす」の付いた語という) 近世の遊里語。
[一] 「くださいます」の意の女性語。
※評判記・難波鉦(1680)二「すこしづつでもしうぎとて、との達からくださんすこともござんす」
[二] 補助動詞として用いる。助詞「て」を介して、用言の連用形(音便形)について、その動作の主が恩恵を与える意を、恩恵を受ける者の立場から敬っていう。「…てくださいます」の意の女性語。
※歌舞伎・金岡筆(1690)二「先おやま人形より、ざとう人形をさきへつくりてくださんせ」
[補注](1)活用は文語サ行変格活用とほぼ同じだが、連体形は「くださんす」、命令形「くださんせ」。
(2)終止形は普通「くださんす」だが、「浄・心中重井筒‐中」の「ほっけになってくださんする」のように、「くださんする」の例も見られる。

おろせ【下】

(江戸時代、駕籠かきが「重くばおろせ」と歌いながらかついだところから)
[1] 〘感動〙 駕籠かきのかけ声。
※評判記・野郎虫(1660)「あんだのり物に、のせられて、はいはいをろせをろせといさみすすむ」
[2] 〘名〙 上方の遊里語。
① 「おろせかご(下駕籠)」の略。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
② 駕籠かき。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
③ 「おろせやど(下宿)」の略。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)三「賃(ちん)は卸(オロセ)の並とて五分くれられける」

ください【下】

五(四)段活用動詞「くださる(下)」の命令形「くだされ」の変化したもの。一説に、「くださいまし(ませ)」の略ともいう。現在、標準口語では、この形が、「くださる」の命令、要求表現として用いられる。動詞用法をはじめ、「行ってください」「御覧ください」のような、補助動詞用法もある。
※洒落本・遊子方言(1770)発端「手のごひを、ちょと、あつい、ゆで、しぼって、ください」
※唱歌・桃太郎(文部省唱歌)(1911)「お腰につけた黍団子、一つわたしに下(クダ)さいな」
[補注]次の例のように、「まかして下さい」の気持で用いることもある。「夫婦喧嘩も世間へ対して外聞が悪い。かみさんも、宿六も、大概な事は、この家主に下(クダ)さい。大家が貰ひました」〔伎・貞操花鳥羽恋塚‐六立〕

くだし【下】

〘名〙
① (動詞「くだす(下)」の連用形の名詞化) くだすこと。申しわたすこと。下命。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「これ、目の当りにて参らせよと侍つるくだしの侍つれば」
※実隆公記‐明応四年(1495)五月一五日紙背(宗祇書状)「宗長はくたしをたへ候間、今日まかりあからす候」
※仮名草子・浮世物語(1665頃)一「目の際迄爛れし程に、尼子・佐竹の瀉薬(クダシ)を与へて、程なく癒へにけり」

おり【下】

〘名〙 (動詞「おりる(下)」の連用形の名詞化)
① 坂道のくだり。くだり坂。
※浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)二「寒風に汗たらたら、おりの我が家の門」
② (身分を表わす語の下に付いて) その身分より一段さがること。特に、素人女が遊女になることをいう。
※随筆・羇旅漫録(1802)中「はじめてつとめに出るものを、腰元おり、てかけおりといふ」

くだは・る【下】

[1] 〘他ラ四〙 四段動詞「くださる(下)」の変化した語。上方で、侠客、相撲取、盗人などが多く用いた。
※浄瑠璃・釜淵双級巴(1737)上「お侍様味ようしやました。どれ分け口下はりませ」
[2] 〘他ラ下二〙 ⇒くだはれる(下)

くんだり【下】

〘接尾〙 (「くだり(下)」の変化した語) 中心地から遠く隔った地をさす場合に、地名に付けて用いる語。現代では、「そんな遠くまで」「そんなところに」などの気持をこめていうことが多い。〔倭語類解(17C後‐18C初)〕
※酒中日記(1902)〈国木田独歩〉五月一〇日「新町から青山くんだりまで三円ばかしのお金を取りに来るやうな暇はない」

くだっし【下】

(四段活用動詞「くださる(下)」の命令形「ください」の転じた「くだせえ」の変化した語) 相手に物事を請い求める意を表わす尊敬語。敬意はうすく、江戸末期以降、主として職人仲間に用いられた。補助動詞として用いることもある。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「コウ酔ていふぢゃアねへが聞てくだっし」

くだあ・る【下】

〘他ラ四〙 (「くださる」が「くだはる」を経てさらに変化した語。江戸時代、侠客や雲助などが用いた粗暴な言いかた) =くださる(下)
※浄瑠璃・夏祭浪花鑑(1745)六「マアそふ思ふて下あれと、事を分たる一言に」

くだせえ【下】

(四段活用動詞「くださる(下)」の命令形「ください」の変化した語) =くだっし(下)
※咄本・無事志有意(1798)富士講「コレ伴頭、是で三百かしてくだせへ」

くだい・す【下】

〘他サ特活〙 「くださります」の変化した語。
※咄本・軽口五色紙(1774)中「フン其青龍湯(せいりゃうたう)とやら、醒めるものなら一服下いせんか」

くだは・れる【下】

〘他ラ下一〙 くだは・る 〘他ラ下二〙 「くだされる(下━)」の変化した語。
※浄瑠璃・太平記忠臣講釈(1766)六「くだはれくだはれ、下はれませと河原伝ひに来る非人」

か【下】

〘語素〙 漢語の名詞を受けて支配や影響などを受ける範囲にある意を表わす。
※小説の方法(1948)〈伊藤整〉日本の方法「漱石は一時期明かに鏡花の影響下に立ち」

おろし・む【下】

〘他マ下二〙 見くだす。さげすむ。ばかにする。
※浄瑠璃・曾我七以呂波(1698頃)三「君傾城はいやしき者と人がおろしめあなどれ共、傾城に筋はなし」

くんさ・る【下】

〘他ラ四〙 「くださる(下)」の変化した語。
※浄瑠璃・鶊山姫捨松(1740)二「『茶もわいてをる、一つおまそか』『いえ、お構ひくんさりますな』」

くだはん・す【下】

〘他サ特活〙 「くださんす(下)」の変化した語。
※浄瑠璃・双蝶蝶曲輪日記(1749)四「むつかしながら燗して遣って下はんせ」

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デジタル大辞泉 「下」の意味・読み・例文・類語

か【下】[漢字項目]

[音](漢) (呉) [訓]した しも もと さげる さがる くだる くだす くださる おろす おりる
学習漢字]1年
〈カ〉
空間的位置関係の低い方。「下部下方階下眼下地下直下天下皮下
時間・順序が後の方。「下記下元下弦以下
階級・身分・程度が低い方。「下院下情下層下等下僚
空間的・時間的範囲を限定する語。「県下言下時下城下目下占領下
支配・影響を受ける側。「管下麾下きか傘下配下部下門下
貴人の尊称に添える語。「閣下貴下殿下陛下
脇付わきづけに用いる語。「机下虎皮下
上から下へ、高い方から低い方へ移動する。「下降却下降下沈下低下投下落下
中央から地方へ、中心から周辺へ移る。「西下南下
10 上位者から下位者へ渡し与える。「下賜下付下命
〈ゲ〉
1に同じ。「下界下段上下
2に同じ。「下巻下刻下旬
3に同じ。「下品下郎下剋上げこくじょう下世話凡下
8に同じ。「下山下車下馬下落下痢
9に同じ。「下向下野
10に同じ。「下知宣下
へりくだる。「卑下
〈した〉「下着下手下見下役靴下手下年下軒下幕下目下床下
〈しも〉「下座下手風下上下かみしも川下
〈もと〉「足下膝下ひざもと
[難読]下火あこ下炬あこ下司げす下種げす下衆げす白帯下こしけ下枝しずえ下総しもうさ下野しもつけ下手へた

しも【下】

ひと続きのものの末。また、いくつかに区別したものの終わりの部分。
㋐川の下流。また、その流域。川下。「へ漕ぎ下る」「で釣る」⇔かみ
㋑時間的にあとと考えられるほう。現在に近いほう。後世。「上は太古の昔からは現在ただ今まで」⇔かみ
㋒ある期間を二つに分けた場合のあとのほう。「の半期」⇔かみ
㋓月の下旬。「寄席のに出演する」
㋔物事の終わりの部分。末の部分。「詳しくはに記す」「けたは切り捨て」「の巻」⇔かみ
㋕和歌の後半の2句。「の句」⇔かみ
位置の低い所。また、低いと考えられる所。
㋐下方に位置する所。下部。「の田に水を落とす」⇔かみ
のかたを見いだしたれば、堂は高くて―は谷と見えたり」〈かげろふ・中〉
㋑からだの腰から下の部分。また、特に陰部や尻をさすことが多く、それを話題にする下品さや、大小便に関する事柄をもいう。「の病気」「話がへ下る」「の世話をする」「半身」⇔かみ
㋒下位の座席。下座。末座。末席。「幹事役がに控える」⇔かみ
㋓客間・座敷などに対して、台所・勝手などをさす語。⇔かみ
㋔舞台の、客席から見て左のほう。下手しもて。「斬られた役者がに引っ込む」⇔かみ
地位・身分の低い人。君主に対して、臣下・人民。雇い主に対して、使用人・召し使い。「の者をいたわる」
「夫をあつか塩梅あんばいひとに対するから―に臨む調子」〈紅葉多情多恨
かみは―に助けられ、―は上になびきて」〈・帚木〉
中心から離れた地。
㋐都から離れた地。特に、京都から離れた地方。⇔かみ
㋑京都で、御所から離れた南の方角・地域。転じて一般に、南の方の意で地名などに用いる。「寺町通りのにある家」「しもぎょう」⇔かみ
㋒他の地域で、より京都に遠いほう。昔の国名などで、ある国を二分したとき、都から見て遠いほう。「しものせき」「つふさ(=下総しもうさ)」⇔かみ
㋓京都から見て、中国・四国・九州などの西国地方。特に、キリシタン関係書では九州をさす。
格や価値が劣っているほう。
かみなか―の人」〈土佐

㋐宮中や貴人の家で、女房が詰めているつぼね
「腹を病みて、いとわりなければ、―に侍りつるを」〈・空蝉〉
㋑《下半身につけるところから》はかま
「―ばかり着せてやらう」〈虎明狂・二人袴
[類語](2㋐)下方した下手/(2㋑)下半身/(2㋒)下座げざ下座しもざ末席末座

した【下】

位置関係で、あるものに比べて低いほう。
㋐場所・位置が低いこと。低いところ。「新聞は雑誌のにある」「木ので休む」「二階は貸してに住んでいる」⇔うえ
㋑音の低い部分。「の音が聞きづらい」⇔うえ
表側に現れていないところ。
㋐覆われている部分。「にセーターを着込む」⇔うえ
㋑指導や庇護を受けていること。「先生ので研究している」「師ので修業する」
程度・地位・年齢・能力・数量などが劣っていること。また、その人。「技術は彼のほうがだ」「彼より三つだ」「五〇点よりは不合格だ」⇔うえ
「天は人の上に人を造らず人の―に人を造らず」〈福沢学問のすゝめ
何かをしたすぐそのあと。直後。「言ったからぼろを出す」

㋐買い物の代金の一部に充てること。下取り。「古いミシンをに出す」
㋑金の引き当てにするもの。「時計をにして金を借りる」
こころ。心底。
「―悩ますに」〈・四〇九四〉
名詞の上に付いて、前もってするという意を表す。「準備」「調べ」
[下接語]息の下上下襟下縁の下白粉おしろい帯下靴下くら化粧下声の下坂下三下白下ズボン下そで袖の下手下年下名題なだい塗り下軒下鼻の下版下へその下幕下真下また目下紋下やぐら床下雪の下わきの下割り下
[類語]下方しも下手

もと【下/許】

《「もと」と同語源》
物の下の部分。また、そのあたり。した。「旗の―に集まる」「桜の―に花見の宴を設ける」
その人のところ。そば。「親の―を離れる」
その規則や支配力の及ぶところ。「厳しい規律の―で生活する」「監視の―におかれる」
(「…のもとに」の形で)…した状態で。…で。「敵を一撃の―に倒す」
[類語]手近い程近い近い間近い間近じきすぐ至近目前鼻先手が届く指呼しこ咫尺しせき目睫もくしょうかん目と鼻の先傍ら近く近辺付近はた足元手元身近手近卑近身辺わき片方かたえ近傍近所最寄り座右左右手回り身の回りまのあたり目睫もくしょう面前目の前眼前現前目先鼻面はなづら鼻っつら前面正面真ん前手前先方直前

げ【下】

程度・価値・等級・序列などが低いこと。標準より劣っていること。下等。した。「中のの成績」⇔じょう
書物や文の章段などで、二つまたは三つに分けたものの最後のもの。「の巻」⇔じょう

げ【下/夏/華】[漢字項目]

〈下〉⇒
〈夏〉⇒
〈華〉⇒

か【下】

[接尾]名詞に付いて、そういう状態のもとにある、その中でのことである意を表す。「戦時」「意識

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日本歴史地名大系 「下」の解説


しもこしき

甑島こしきじま郡甑島郷のうち。郷帳類には下甑島ともみえ、下甑島すなわち現在の鹿島かしま村・下甑村にあたる。藺牟田いむた(現鹿島村)長浜ながはま村・青瀬あおせ村・瀬々野浦せせのうら村・手打てうち村・片野浦かたのうら(現下甑村)の六ヵ村で構成されていた(「三州御治世要覧」など)。中世は甑島のうちしも村として推移した。寛文四年(一六六四)の郡村高辻帳では下甑島として高一千五七一石余。元禄国絵図では下甑村として同高。「薩藩政要録」によると用夫二千一七四、湊三ヵ所。「要用集」では用夫一千六八六・浦用夫六一七。牧として下甑野があった(列朝制度)。「列朝制度」に下甑島のうち浜方について「御船手支配ニて手札等申受候へ共、浦方一篇之勤方不仕候」とある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「下」の意味・わかりやすい解説


しも

富山県中北部、射水郡(いみずぐん)にあった旧村名(下村(むら))。現在は射水市の東北部を占める地域。2005年(平成17)新湊(しんみなと)市、射水郡小杉(こすぎ)町、大門(だいもん)町、大島(おおしま)町と合併して射水市となる。東は富山市に接する。旧町域の南部を国道8号が横切る。射水平野の小純農村で、典型的な水稲単作地帯であるが、農業以外の収入が主である第2種兼業農家が90%以上を占める。奈良時代の倉垣荘(くらがきのしょう)の地で、平安末期からは京都下鴨神社の荘園で、神社と領民との関係は約400年も続いた。9月4日の加茂神社の秋の例祭に行われる稚児舞(ちごまい)は越中の稚児舞の一つで国の重要無形民俗文化財。なお、春の例祭には「やんさんま」(流鏑馬(やぶさめ))の神事も行われる。

[深井三郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「下」の意味・わかりやすい解説


しも

富山県北西部,射水市北東部の旧村域。射水平野の東部に位置する。 1889年村制。 2005年新湊市,小杉町,大門町,大島町の1市3町と合体して射水市となった。中心地区の加茂には,平安中期に京都の下鴨神社の社領であった倉垣荘の総社として創建された加茂神社があり,走馬 (そうめ) ,流鏑馬,牛潰しの神事が伝承されているほか,国の重要無形民俗文化財に指定されている越中の稚児舞がある。江戸時代には加賀藩主の参勤交代の宿場として栄えた。水稲単作の低湿地であったが乾田化し,畑作地として整備事業が行なわれた。富山市の近郊住宅地としての性格も強い。

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改訂新版 世界大百科事典 「下」の意味・わかりやすい解説

下 (さげ)

日本音楽の用語。平曲では,クドキ(口説)のあとに接続して段落をもたらす構成部分をいう。能の謡や狂言謡では,主として上音の音域から中音の音域に下降する旋律進行をいう。ヨワ吟の場合には,完全五度の下降を本下ゲ,完全四度の下降を中下ゲということがあり,本下ゲ,中下ゲの区別は,ほかの声楽でも行われる場合がある。ツヨ吟では,上音から中音に移行しても,実際の音高は変わらない。
執筆者:

下 (しも)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【平曲】より

…以後,八坂流はあまりふるわず,平曲は一方流を中心に伝承されていく。如一は《平家物語》の詞章の改訂に着手したが,その弟子で〈天下無雙(むそう)の上手〉といわれた明石覚一(あかしかくいち)(?‐1371)はさらに改訂・増補を重ね,〈覚一本〉とよばれる一本を完成し,一方流平曲の大成者として以後の平曲隆盛の基盤をつくった。このころ,平曲を語る盲人たちは,〈当道(とうどう)〉という座を結成し,お互いの縄張りを確保するようになるが,覚一は文献上最初の検校(当道座の最高位)であり,当道の祖といわれる。…

※「下」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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