下宿(読み)したやど

精選版 日本国語大辞典 「下宿」の意味・読み・例文・類語

した‐やど【下宿】

〘名〙
① 下等な旅宿。安宿。木賃宿。また、そこに泊まっていること。
江戸時代大名などが宿駅の本陣に泊まる際、家臣たちの宿泊する所。階級によって、札宿、幕宿、駕籠宿、切棒、垂籠、並宿、日雇宿などの区別があった。
浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中「したやどさへとまりがない晩にはみんな覚悟しや」
③ 江戸時代、訴訟人などが奉行所および代官所出頭する時の休息所。ここで時間待ちをする間に飲食し、出頭の際は持物を預け、服装を改めた。
浮世草子御前義経記(1700)六「両方共に罷立と、仰出されければ、皆々かうべをさげ下宿(シタヤド)に帰りぬ」
④ 生まれた家。生家。
※浮世草子・男色大鑑(1687)六「是はおやまの元祖大吉彌が下屋(シタヤド)成が、相応なる商売せしといへり」

げ‐しゅく【下宿】

〘名〙
① やどさがり。やどおり。やぶいり。
部屋代、食費などを払って契約期間中他家で暮らすこと。また、その家や部屋。
※歌舞伎・富士額男女繁山(女書生)(1877)三幕「『お酒と聞いては立所に』『下宿へ帰る方向を忘れる書生の劇酒党』」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「慈母(おっか)さん、今日から私を下宿さしてお呉んなさいな」

おろせ‐やど【下宿】

〘名〙 江戸時代、駕籠かきらが寝泊まりし、詰めていた宿。おろせ。
※浮世草子・好色二代男(1684)六「(くるは)の外に、京屋の七左衛門大和屋の七兵衛とて卸宿(オロセヤド)有」

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デジタル大辞泉 「下宿」の意味・読み・例文・類語

げ‐しゅく【下宿】

[名](スル)
ある期間、あらかじめ契約を結んで部屋を借り、部屋代・食費などを払って居住すること。また、その家。「大学の近くに下宿する」
宿泊費の安い下等な旅館。安宿。したやど。
[類語]寄宿寄留宿舎寄宿舎社宅飯場学寮官邸官舎公邸公舎

した‐やど【下宿】

大名行列などの供の者が宿泊する所。また、下級の宿屋。
江戸時代、奉行所代官所などの近くにあった、訴訟人の休息所。

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日本歴史地名大系 「下宿」の解説

下宿
ならげしゆく

[現在地名]上山市楢下

金山かねやま峠の登り口にある出羽国における羽州街道最南端の重要な宿駅。宿駅の設置は慶長七年(一六〇二)であるが、参勤道路として定着し、宿として栄えたのは明暦二年(一六五六)の土岐氏によるからめき道の改修後である。当宿が街村型でなくコ字型になっているのは、洪水による村の移動と街道の変遷による。中世以来の牧野まぎの街道に接し宿の中心であった元屋敷もとやしきながれ町は寛文元年(一六六一)洪水にあい、本庄ほんじよう街道に沿う高台に移転してかみ町をつくり、よこ町・しも(本町)とともに宿場町を構成した。宝暦七年(一七五七)の洪水で被害を受けた下町の一部は台場に移り、しん町ができた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「下宿」の意味・わかりやすい解説

下宿
げしゅく

1か月以上の期間を単位とする宿泊料を定め、人を宿泊させる有料の宿泊施設。旅館業法(昭和23年法律第138号)では、旅館業を(1)ホテル営業、(2)旅館営業、(3)簡易宿所営業、(4)下宿営業の4種に規定している。下宿とはあくまで人を宿泊させる営業であり、施設の管理は営業者によって行われることが必要で、室内の管理を間借り人が行うアパートや間貸しなどの賃室業とは異なる。また、学生下宿にみられるように、部屋が生活の本拠であると同時に、部屋の管理を学生自身で行う場合も下宿とよばれることがあるが、これは旅館業法における下宿営業の許可対象にはなっていない。

 2013年度(平成25)末において、旅館業の営業許可を受けた施設7万9519のうち、下宿営業の施設数は787である。全国でもっとも多いのは北海道で159施設、次いで福島県の130施設、京都府の80施設であり、全国的には年々減少する傾向にある。

[編集部]

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