不対電子(読み)フツイデンシ

デジタル大辞泉 「不対電子」の意味・読み・例文・類語

ふつい‐でんし【不対電子】

電子対にならない電子物質強磁性常磁性原因となり、遊離基遷移元素多くに存在する。奇電子

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化学辞典 第2版 「不対電子」の解説

不対電子
フツイデンシ
unpaired electron

一つの原子あるいは分子のなかで対をなしていない電子をいう.閉殻構造をもった希ガスや多くの安定な分子では,パウリの原理に従って逆向きスピンをもった電子が対をなして軌道を占有している.しかし,希ガス以外の原子では,フントの規則により電子のスピンが平行になる電子配列をとりやすく,不対電子をもつ.また,奇数個の電子をもつ分子(例:NO,遊離基)はもちろん,偶数個の電子をもつ分子でも不対電子をもつことがある(例:O2ビラジカル).一般に不対電子は,ほかの不対電子と対をつくって安定な共有結合をつくるので,遊離基は化学反応性が大きい.不対電子をもった分子は常磁性示し電子スピン共鳴吸収を与える.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「不対電子」の意味・わかりやすい解説

不対電子 (ふついでんし)
unpaired electron

原子・分子の各電子軌道は,スピンが互いに逆向きな2個の電子を収容できる。原子・分子の電子軌道の中で,電子を1個しか収容していない軌道があるとき,その軌道が不対電子をもつという。不対電子をもつ原子・分子は,不対電子に由来する磁気モーメントをもつ。価電子軌道に不対電子をもつ分子(ラジカル)は一般に,きわめて不安定である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不対電子」の意味・わかりやすい解説

不対電子
ふついでんし
unpaired electron

原子,原子団または分子において,2つの電子のスピンが反平行で磁気双極子モーメント (磁気モーメント ) も打消し合っているものを対電子といい,スピンを打消す相手をもたない電子を不対電子という。不対電子をもつ原子,原子団または分子の多くは化学的に活性に富み,またこれらを含む物質は常磁性または強磁性を示す。

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