不感症(オーガズム不全)(読み)ふかんしょうおーがずむふぜん(英語表記)Hyphedonia

家庭医学館 の解説

ふかんしょうおーがずむふぜん【不感症(オーガズム不全) Hyphedonia】

[どんな病気か]
 不感症とは、解剖学的にも生理学的にも、最初から女性に何かが欠けていておこるものではなく、性的な感情が、抑制されたり阻止されたりしておこります。
 女性が性的な満足感を得るためには、女性自身の性的に成熟した感情が必要であり、相手男性のイメージも、性的な感情をかき立てるようでなくてはなりません。
 男性と女性が基本的に異なっているところは、男性はセックスの喜びを生理的に表現する女性を必要とするということです。また、女性が男性に「愛」を感じたときには、非常に強い性的な欲望を感じます。その結果、性交にさいしてオーガズム(絶頂感)を感じるようになるのです。
 オーガズムには、クリトリスによるものと腟(ちつ)によるものがあります。この両者の基本的なちがいは、前者はより生理的なもので、後者はより精神的なものということです。
 そして、このような精神的、生理的な因子がうまくかみ合わないことが、不感症の原因になります。
[原因]
 不感症には、最初の性交からオーガズムを感じない場合と、最初はオーガズムを感じていたものが、のちにオーガズムを感じなくなる場合とがあります。
 前者の場合は、幼児期の性的ないたずらの体験、父やほかの男性の寵愛(ちょうあい)、男性願望、イメージに合わない夫、性交の失敗への不安、夫のインポテンス(「インポテンス(ED/勃起障害)」)、夫に対する心の傷、男性の早漏(そうろう)、性交に対する恐怖・罪悪感などが原因になります。
 最初はオーガズムを経験していたのにもかかわらず、のちに不感症になる原因には、夫への不信感、女性の不倫、夫への怒り、妊娠の恐怖、疲労、精神的ストレス、病気、夫のインポテンス、ピルの服用などがあります。
[治療]
 以上に述べてきたように、不感症になる原因はさまざまなので、まず、その原因を正確に診断する必要があります。
 診断に際しては、まず女性だけで婦人科医に相談します。男性にも話せないことがあるからです。のちに必要があれば、男性だけに話を聞きます。
 そして、この両者の話を総合的に判断して、両者に解決の糸口があれば、婦人科医が男性と女性とに、一緒に解決法を説明します。
 不感症の原因が解剖学的、生理的(病的)な場合には、婦人科医が治療します。その際に、医療的な原因のみではなく、心理的、精神的な解決法が必要な場合には、医師精神科医・心理学者を紹介します。
 いずれにせよ、躊躇(ちゅうちょ)しないで婦人科医と相談してください。婦人科医は適切な解決法を用意しています。
●産婦人科手術後の性感
 婦人科の病気により、子宮や卵巣(らんそう)を摘出してしまうことがあります。
 片側の良性の卵巣腫瘍(しゅよう)だけを摘出した場合には、子宮や腟はそのままで、残りの卵巣からは手術前と変わらずに女性ホルモンが出ますので、性感にはまったく変化はありません。
 子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)(「子宮筋腫」)や、子宮がん(「子宮がん」)で子宮をすべて摘出した場合でも、腟は必要十分な長さは残っていますので、手術後の一時的な不安感はあっても、不感症になることはありません。
 もともと子宮には知覚神経はなく、生理的な性感の大部分はクリトリスによるものです。腟への挿入感は、精神的な因子として、相乗的にオーガズムへ導くものの1つにすぎないのです。
 したがって、手術したからといって、腟があれば、子宮がなくとも不感症になることはありません。
●高齢者の性生活
 更年期になると、女性ホルモンの減少にともない、腟はしだいに萎縮(いしゅく)しはじめ、腟の粘液も少なく水っぽくなります。このころから、女性の性欲はしだいに減退しはじめ、性交時に疼痛(とうつう)を感じ、性交が苦痛になることがあります。男性とも十分に話し合うことが必要ですが、潤滑クリームの使用も含め、婦人科医の適切な指導を受けてください。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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