不易法(読み)ふえきほう

改訂新版 世界大百科事典 「不易法」の意味・わかりやすい解説

不易法 (ふえきほう)

古今を通じて不変の基本法という意味にも用いられるが,普通は一定時期以前の判決に形式的確定力を付与することを定めた中世法をさす。鎌倉幕府法では,(1)3代将軍と北条政子時代の判決に対する《御成敗式目》前書と第7条の規定,(2)北条泰時執権期の1225年(嘉禄1)から42年(仁治3)までに対する58年(正嘉2)12月法,(3)北条経時・時頼時代の43年(寛元1)から56年(康元1)に対する71年(文永8)8月法,(4)北条長時・政村・時宗時代の56年から84年(弘安7)に対する90年(正応3)9月法があり,(4)に至って,わずか6年を経たにすぎない判決を不易化し,越訴(おつそ)の提起を否認したことは,越訴制に対する北条得宗権力の嫌悪が反映したものと考えられている。また公家法においても,幕府法の影響をうけて85年11月の立法で,後嵯峨院政期の勅裁が不易化された。なお一般的には二十年当知行年紀法年紀法)が社会に広く浸透し,これによって裁判の判決を含む,ある事態が20年以上経過したという事実が法的に確定すれば,それは不易法の効果を持った。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の不易法の言及

【越訴】より

… しかしこの時点は同時に,専制化を進める北条氏得宗(嫡統)権力の前に,それまで築き上げられた訴訟制度が動揺し始めた時でもあった。それは越訴制にも及んでやがて不易法が立法されるに至った。不易法は過去のある時点以前の判決はくつがえされないとするもので,越訴に提訴期限を設けるものであった。…

※「不易法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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