不浄門(読み)ふじょうもん

精選版 日本国語大辞典 「不浄門」の意味・読み・例文・類語

ふじょう‐もん フジャウ‥【不浄門】

〘名〙 城や屋敷などで、人糞死者罪人などを運びだすため裏手の方に設けた門。いみもん。
※歌舞伎・扇音々大岡政談天一坊)(1875)四幕「菩提所へ埋葬いたす体になし、番人共を欺いて不浄門より主従とも、脱け出でましてござりまする」

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デジタル大辞泉 「不浄門」の意味・読み・例文・類語

ふじょう‐もん〔フジヤウ‐〕【不浄門】

江戸時代武家屋敷などで、死者・罪人や下肥しもごえなどを運び出すために裏手に設けたくぐり門。いみもん。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不浄門」の意味・わかりやすい解説

不浄門
ふじょうもん

城門を分類する場合、その位置や建築の形態によるもののほかに、特殊な使用面からもみることができる。不浄門はこの例で、罪人や死人を城外に送り出す際に使う箇所である。忌門(いみもん)ともいい、糞尿(ふんにょう)の搬出口でもあった。城郭だけでなく藩主の館(やかた)などでも、罪人、死人は城門から出さず、多くは裏門の脇(わき)の目だたぬ場所に簡単な木戸を設けた。

 江戸城では、平川(ひらかわ)(河)門を入ると桝形(ますがた)内の北西に、普段は閉じたままの脇門(形態は高麗(こうらい)門)があった。現存するこの門が一名不浄門である。城中松の廊下で刃傷を起こした浅野内匠頭(たくみのかみ)や、山村座の役者生島(いくしま)新五郎との情事が発覚した大奥女中絵島(えじま)が、この門をくぐったという。なお糞尿はこの門外から舟で葛西(かさい)村へ運んだ。

稲垣史生

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