不請(読み)フショウ

デジタル大辞泉 「不請」の意味・読み・例文・類語

ふ‐しょう〔‐シヤウ〕【不請】

仏語。請い望まれなくても救いの手をさしのべること。菩薩ぼさつ慈悲救済をいう語。
自分では希望しないこと。いやいやながらすること。
町衆は―の袴、肩衣を着て」〈浮・一代女・三〉
満足しないが、それで我慢すること。
「とかく乗合はおたがひに、何ぢゃろと―してくれなされ」〈滑・膝栗毛・六〉
不承2

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「不請」の意味・読み・例文・類語

ふ‐しょう ‥シャウ【不請】

〘名〙
① 仏語。請い望まれなくても救いの手をさしのべること。菩薩の慈悲救済の性格を語ることば。「不請の友」の形で、慈悲の人、仏菩薩の意に用いる。
方丈記(1212)「かたはらに舌根をやとひて、不請の阿彌陀仏、両三遍申してやみぬ」 〔無量寿経‐上〕
② (形動) 真に望まないで、いやいやながらすること。また、そのさま。
※玉葉‐元暦元年(1184)八月二一日「或説云、文覚頗有不請之気云々」
③ (形動) (━する) (「不承」「不肖」「不勝」などとも書く) 不満足だが、それで我慢すること。また、不十分だがやむを得ないと考えるさま。
※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)一〇「ふしゃうなるはっしきたりといへどもそのくにのためには大きなるとくのもとひ也」
浮世草子世間娘容気(1717)一「そこを御ふせうなされますかはりには、此御器量に千両といふみやげがござります」
④ (形動) (「不承」「不肖」「不祥」などとも書く) 迷惑であること。不本意であること。不承知なこと。また、そのさま。
※虎明本狂言・犬山伏(室町末‐近世初)「いかにも、ふしゃうさうなるていなり」
[語誌](1)③④は現在では、多く「不承」と書く。しかし、歴史的に見れば、「承」は合音ショウであるのに対し、「請」は開音シャウであって、開合が一致しない。「不承」の字が当てられるようになったのは、この開合の区別が失われた近世になってからのことと考えられる。
(2)橋本進吉は、「日葡辞書」の「Fuxǒ」の項の例文として、「不祥」とみるべき「Fuxǒna(フシャウナ) メニ ワウ」と「不請」とみるべき「Fuxǒbuxǒni(フシャウブシャウニ) スル」とが挙げられていること、宝永三年(一七〇六)の「浮世草子・風流曲三味線‐一」で「不請」の意味で「不祥」を用いていることなどから、室町末期には両者共に「不祥」と書いたのかもしれないと推定している。しかし、「文明本節用集」などでは両者を区別しているので、なお検討を要する。

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