不退寺(読み)ふたいじ

精選版 日本国語大辞典 「不退寺」の意味・読み・例文・類語

ふたい‐じ【不退寺】

奈良市法蓮町にある真言律宗の寺。山号は金龍山不退転法輪寺と号する。承和一四年(八四七)開創。開基は在原業平。もと平城天皇離宮、萱(かや)の御所で皇子阿保親王、その子業平に受け継がれたが、詔により寺とされた。本尊の聖観世音菩薩像は業平自作と伝えられる。南都十五大寺の一つ。在原寺。業平寺。

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デジタル大辞泉 「不退寺」の意味・読み・例文・類語

ふたい‐じ【不退寺】

奈良市法蓮町にある真言律宗の寺。山号は、金竜山。正しくは不退転法輪寺。平城天皇かやの御所を、承和14年(847)孫の在原業平が寺にしたという。在原寺。業平寺。

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日本歴史地名大系 「不退寺」の解説

不退寺
ふたいじ

[現在地名]奈良市法蓮町

法蓮ほうれん町西部に位置。金竜山不退転法輪ふたいてんぽうりん寺と号し、真言律宗、本尊は聖観音。「拾芥抄」によれば十五大寺の一。寺伝によると、大同四年(八〇九)平城天皇が平安京から平城旧京に帰り、この地に仮に住んだので、「萱の御所」とよばれた。その後、皇子阿保親王、その王子在原業平に伝えられ、承和一四年(八四七)業平が仁明天皇の命で自作の観音像を安置して寺としたという。この伝の真否は明らかではないが、「三代実録」貞観二年(八六〇)一〇月一五日条に平城旧京の水田を不退寺・超昇ちようしよう(現奈良市)に施入したとあり、付近から平安初期の瓦などを出土しているので、この頃創建されたことは認められる。その後の沿革は不詳。

不退寺
ふたいじ

[現在地名]大田原市新富町三丁目

旧奥州街道(県道大田原―矢板線)南側、旧大田原宿しも町から福原ふくわら道の新道沿いにある。西には鹿島かしま川が流れる。蓮台山九品院と号し、時宗。本尊は阿弥陀如来。建長二年(一二五〇)那須太郎光資家臣奥野又三郎近重(号全海)が建立した庵に始まると伝えられる。弘安三年(一二八〇)一遍が奥州廻国の途中この庵に一宿、号を授けて前室まえむろ庵としたと伝え、正応五年(一二九二)遊行二世他阿真教が現在名称に改めたという。前室道場とも称され、大田原城築城によりその大手門近くに位置することとなった。

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改訂新版 世界大百科事典 「不退寺」の意味・わかりやすい解説

不退寺 (ふたいじ)

奈良市法蓮町にある真言律宗の寺。山号は金竜山。現伽藍地は旧平城右京一条四坊の一・二坪に相当する。寺伝によれば,正式には不退転法輪寺と称し,847年(承和14)在原業平が,平城天皇の〈萱の御所〉跡に創建したという。《三代実録》貞観2年(860)10月の条に,平城旧京の水田55町余を不退・超昇両寺に施入したとあるのが初見である。超昇寺は平城天皇の皇子高丘(岳)親王(真如)が天皇の菩提を追修して建立した寺で,不退寺は高丘親王の弟阿保親王,その子業平に伝領された仮御所を寺としたもので,ともに平城上皇の菩提を祈る寺といえる。隣接地より当寺と同型の平安初期の古瓦が出土しており,また水田施入は両寺の維持経営のためと推定されるから,その創建はこれ以前とみられる。12世紀後半には十五大寺の一つに数えられたが,その後の沿革はつまびらかでない。西大寺叡尊による戒律復興とともに,1298年(永仁6)には西大寺末となり,1317年(文保1)に南門,同じころに多宝塔(いずれも重要文化財)が建立された。1464年(寛正5)に炎上し,現本堂(重要文化財)はその後の再建。本尊聖観音立像,五大明王像(いずれも藤原時代)は重要文化財に指定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「不退寺」の意味・わかりやすい解説

不退寺
ふたいじ

奈良市法蓮(ほうれん)町にある真言(しんごん)律宗の寺。正しくは不退転法輪寺(ふたいてんぽうりんじ)、通称業平寺(なりひらでら)という。山号は金竜(きんりゅう)山。本尊は聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)。寺伝によれば、この地はもと平城(へいぜい)天皇の萱(かや)の御所(ごしょ)で、その孫にあたる在原業平(ありわらのなりひら)が仁明(にんみょう)天皇の命により自作の聖観音像を安置して、847年(承和14)に寺を開創したといわれている。860年(貞観2)に清和(せいわ)天皇が水田を施入して保護している。その後の沿革は不明だが、境内には室町初期建立の本堂、正和(しょうわ)6年(1317)建立墨書銘をもつ南門(切妻造の四脚門)、同じころ建立と推定される多宝塔など国重要文化財がある。木造聖観音立像、同五大明王像(ともに国重文)などの寺宝がある。

[水谷 類]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不退寺」の意味・わかりやすい解説

不退寺
ふたいじ

奈良市法蓮寺町にある真言律宗の寺。正式名は不退転法輪寺,通称は在原寺,業平寺。以前は萱御所と称された平城天皇の離宮であったが,承和 14 (847) 年に在原業平が天皇の命により寺とした。本尊は在原業平の刻と伝えられる観音像。

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デジタル大辞泉プラス 「不退寺」の解説

不退寺

奈良県奈良市にある真言律宗の寺院、金龍山不退転法輪寺の通称。寺伝では847年、在原業平自身が刻んだ聖観音像を本尊として開基したとされ、業平寺とも呼ばれる。

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