世宗(朝鮮、李朝)(読み)せいそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「世宗(朝鮮、李朝)」の意味・わかりやすい解説

世宗(朝鮮、李朝)
せいそう
(1397―1450)

朝鮮、李朝(りちょう)第4代の国王(在位1418~50)。第3代太宗の第3子。在位32年間に、朝鮮の儒教文化、民族国家の基盤は強化され、民族文化も画期的な発展を遂げた。そのため、世宗の時代は「李朝の黄金時代」、世宗は「海東(朝鮮)の堯舜(ぎょうしゅん)」といわれた。朱子学を教学の基本とし、儒教的王道政治の確立を目ざし、冠婚葬祭や儀礼全般にわたる朱子家礼の遵守、『三綱行実』『孝行録』の刊行などによる儒教倫理の普及にも力を注いだ。また、抑仏政策を推進し、寺院所属の莫大(ばくだい)な土地と奴婢(ぬひ)を国家に没収した(ただし、晩年の世宗は王宮内に仏閣を建立し、仏教を尊崇した)。税役面では、徭役(ようえき)賦課基準を人丁数から耕地面積規模にかえる大改革を実施し、貢納物についても代価を公定し、米納などによる代納を公認した。また、耕地を肥瘠(ひせき)に応じて6段階に、作柄を豊凶に応じて9段階に分ける田分法・年分法を制定して生産物徴収の合理化を図り、法典類の再整理、改編を行って、『経国大典』(李朝の基本法典、1470公布)の基礎も築いた。

 文化面では、1446年に「訓民正音」(ハングル)を創製・公布し、また、朝鮮独自の農業書である『農事直説』、医薬を集大成した『医方類聚(るいじゅう)』、イスラム暦も加えた総合的な暦書である『七政書(しちせいしょ)』などを刊行したほか、地理書では『八道地理志』を完成させ、歴史書では『高麗(こうらい)史』や『高麗史節要』の大編纂(へんさん)事業をほぼ完成させた。科学技術面でも、天文観測器や天球儀の製作、世界最初といわれる雨量測定器の製作、金属活字や製紙法、各種大砲などの改良を行わせた。対外関係では、国境を初めて豆満江(とまんこう)にまで拡大し、1419年には倭寇(わこう)の根拠地となっていた対馬(つしま)を攻め(応永(おうえい)の外寇(がいこう))、その後、三浦(さんぽ)(三港)を日本に開港し、1443年には対馬島主宗(そう)氏との間に癸亥(きがい)約条(嘉吉(かきつ)条約)を結び、日朝貿易の基礎を築いた。

[矢澤康祐]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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