世界貿易の現在(読み)せかいぼうえきのげんざい

知恵蔵 「世界貿易の現在」の解説

世界貿易の現在

WTO(世界貿易機関)によれば2005年の世界貿易額(輸出)は初めて10兆ドルを超えた。数量ベースの前年比伸び率は04年の9%増より低い6%増だったが、原油を始め一次産品価格の高騰で輸出価格は7%上昇した。国別輸出国のトップは3年連続でドイツで、輸入及び輸出の総額では米国が引き続き世界最大である。 また、産油国である中東ロシアアフリカの輸出額増加が顕著で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の世界貿易に占めるシェアも12%に拡大するなど、発展途上国の躍進が目立っている。特に、中国の貿易拡大は目覚ましく05年には輸出・輸入額共に世界第3位となり、貿易総額でも日本を抜いた。貿易黒字は1000億ドルを上回り、対米黒字もさらに増加して2000億ドル超となった。 05年度の日本の所得収支黒字は初めて貿易黒字を上回った。貿易黒字が縮小したこともあるが、近年の海外投資収益(ネット)の増加傾向が一層高まったことで、製造業を中心とした貿易立国を補完する「投資立国」要素の成長が見える。また、日本経済の回復が進むなかで「新・日本輸出商品」が台頭している。デジタル家電では薄型テレビ液晶パネルの大増産、デジタルカメラでは薄型複合化や一眼レフ化、乗用車ではハイブリッド車需要の活況、ステンレス鋼板や油井管など高級鋼材へのシフト、炭素繊維複合材料の航空機や電子機器向け供給など、量と質両面で企業の海外展開が活発である。

(松尾寛 (株)三井物産戦略研究所副所長 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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