両性酸化物(読み)リョウセイサンカブツ(英語表記)amphoteric oxide

デジタル大辞泉 「両性酸化物」の意味・読み・例文・類語

りょうせい‐さんかぶつ〔リヤウセイサンクワブツ〕【両性酸化物】

塩基に対しては酸性に対しては塩基性を示す酸化物酸化アルミニウムなど。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「両性酸化物」の意味・読み・例文・類語

りょうせい‐さんかぶつ リャウセイサンクヮブツ【両性酸化物】

〘名〙 酸に対しては塩基性酸化物として、塩基に対しては酸性酸化物として作用する酸化物。酸化アルミニウム、三酸化二砒素など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「両性酸化物」の意味・わかりやすい解説

両性酸化物
りょうせいさんかぶつ
amphoteric oxide

酸化物のうち、酸に対しては塩基として作用し、塩基に対しては酸として作用するものをいう。酸化物のうち、非金属の酸化物、および金属でも高酸化数の酸化物は、多く酸として働き(酸性酸化物)、金属の低酸化数の酸化物は、多く塩基として働く(塩基性酸化物)が、それらの中間的な性質をもつものが両性酸化物である。たとえば、長周期型周期表の右下端より左上端に向かって対角線を引いたとき、その付近にくる元素(亜鉛Zn、カドミウムCd、アルミニウムAl、ガリウムGa、ケイ素Si、ゲルマニウムGe、スズSn、ヒ素As、アンチモンSbなど)の酸化物、および遷移元素の中程度の酸化数の酸化物がそうである。たとえば次のような反応式が示される。

  Al2O3+6HCl→2AlCl3+3H2O
  Al2O3+2NaOH→2NaAlO2+H2O

  As2O3+6HCl→2AsCl3+3H2O
  As2O3+6NaOH→2Na3AsO3+3H2O

  Cr2O3+6HCl→2CrCl3+3H2O
  Cr2O3+2NaOH→2NaCrO2+H2O
[中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「両性酸化物」の意味・わかりやすい解説

両性酸化物
りょうせいさんかぶつ
amphoteric oxide

酸,塩基両方の性質を示す酸化物。酸性酸化物塩基性酸化物に対する語。たとえば酸化アルミニウムは典型的な両性酸化物で,(塩基として) 酸と反応して塩を生じ,

Al2O3+3H2SO4→Al2(SO4)3+3H2O

また (酸として) アルカリを中和する。

Al2O3+2NaOH+3H2O→2Na[Al(OH)4]

酸性酸化物,塩基性酸化物がそれぞれ主として非金属,および金属元素の酸化物であるのに対して両性酸化物は主としてメタロイド (→半金属 ) を中心とする元素の酸化物である。すなわちベリリウム,アルミニウム,ガリウム,ゲルマニウム,スズ,鉛,アンチモン,ビスマス,亜鉛,カドミウムなどの酸化物である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「両性酸化物」の意味・わかりやすい解説

両性酸化物【りょうせいさんかぶつ】

酸に対しては塩基として働き,塩基に対しては酸として働く酸化物。塩基性酸化物酸性酸化物に対する語。アルミニウム,スズ,鉛,ヒ素,アンチモンなどの元素の酸化物は両性酸化物。たとえば酸化アルミニウムAl2O3は,塩酸に対しては塩基として働き塩化アルミニウムAlCl3を生じ,水酸化ナトリウムに対しては酸として働きアルミン酸ナトリウムNaAlO2を生じる。
→関連項目酸化物両性化合物

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「両性酸化物」の解説

両性酸化物
リョウセイサンカブツ
amphoteric oxide

酸化物のうち,酸に対しては塩基として作用し,塩基に対しては酸として作用するものをいう.塩基性酸化物酸性酸化物に対する用語で,この2種類の酸化物のどちらか一方を与える陽性,陰性元素との,中間的な性質を示す元素の酸化物に多くみられる.酸化アルミニウムAl2O3,酸化ヒ素As2O3,酸化亜鉛ZnO,酸化鉛PbO,酸化クロムCr2O3などは代表的な例である.たとえば,Al2O3硫酸と反応して硫酸アルミニウムAl2(SO4)3,水酸化ナトリウムと反応してアルミン酸ナトリウムNaAlO2をつくる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「両性酸化物」の意味・わかりやすい解説

両性酸化物 (りょうせいさんかぶつ)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の両性酸化物の言及

【酸化物】より

…これらに対し上記のような非金属元素と金属元素との中間にある元素では,非金属元素でも電気陰性度が低くなり,金属性が増すと,その酸化物は単分子からなるよりも巨大分子をつくりやすくなり(水に難溶性となる),酸性は弱まってくるし(Sb2O5,TeO3など),金属元素でも電気陰性度が増してくると酸素との結合はイオン性を減じ,共有性が増してきて塩基性が減り,水に溶けにくくなり,酸性が増す。それが極端になったとき,たとえばAl2O3,ZnO,PbO,SnOなどでは,酸と塩基の中間的性質,すなわち強酸に対しては塩基,強塩基に対しては酸として働くので,両性酸化物amphoteric oxideといっている。一つの元素でいくつかの酸化数の酸化物をつくるときは,高酸化数酸化物のほうが酸性が強く,低酸化数のほうが塩基性が強い。…

※「両性酸化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android