並河靖之(読み)ナミカワヤスユキ

デジタル大辞泉 「並河靖之」の意味・読み・例文・類語

なみかわ‐やすゆき〔なみかは‐〕【並河靖之】

[1845~1927]七宝作家京都の人。帝室技芸員。伝統的有線七宝の作家として無線七宝濤川惣助と並び称された。また、黒色透明釉を開発したことでも知られる。

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精選版 日本国語大辞典 「並河靖之」の意味・読み・例文・類語

なみかわ‐やすゆき【並河靖之】

明治大正の七宝(しっぽう)工。本姓高岡。京都生まれ。名古屋桃井英升について尾張七宝技法を習得し、さらに金銀線を用いた有線七宝で従来の七宝を改良、京都七宝の中心となった。帝室技芸員。弘化二~昭和二年(一八四五‐一九二七

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改訂新版 世界大百科事典 「並河靖之」の意味・わかりやすい解説

並河靖之 (なみかわやすゆき)
生没年:1845-1927(弘化2-昭和2)

七宝作家。京都に生まれ,梶常吉系統をひく桃井儀三郎英升に七宝技法を学んだといわれる。1871年ころ工場を起こした並河は,75年京都勧業博覧会に花瓶出品,有功賞をうけた。さらにドイツ人応用化学者G.ワーグナーが伝えた七宝技法に,伝統的な有線七宝技術を加味して改良し,金・銀線を用いた精巧な七宝を制作した。東京の濤川(なみかわ)惣助とともに,明治七宝界の双璧と評せられ,七宝技術の発展に尽くした功により,96年帝国技芸員に挙げられた。
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朝日日本歴史人物事典 「並河靖之」の解説

並河靖之

没年:昭和2.5.28(1927)
生年:弘化2(1845)
明治大正期の七宝作家。武蔵国川越藩(埼玉県)藩士高岡九郎右衛門の3男として京都柳馬場に生まれ,安政2(1855)年,青蓮院宮侍臣並河靖全の養子となる。尾張七宝の祖である梶常吉の系譜に属する塚本貝助(1828~87)は,ドイツ人のワグナーと共に七宝釉薬の改良に尽くしたが,並河靖之は貝助の弟子である桃井儀三郎英升に七宝技術を学び,明治3(1870)年ごろ京都に七宝工場を設立,京都で活躍した。同8年,京都勧業博覧会,10年第1回内国勧業博覧会をはじめ内外の博覧会などで受賞を重ね,11年ごろから七宝に専念した。梶常吉の系譜を引く有線七宝の技術と,黒色透明釉の発明や金・銀線を用いた筆致をも表現する細緻な線置きによる精巧な文様表現による日本画的な作風で,東京で活躍した無線七宝の濤川惣助と共に,明治七宝界を代表する作家であった。明治29(1896)年濤川と共に帝室技芸員に任命されている。

(伊藤嘉章)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「並河靖之」の意味・わかりやすい解説

並河靖之
なみかわやすゆき
(1845―1927)

明治・大正の七宝(しっぽう)工芸家。京都生まれ。本姓は高岡で、のちに並河靖全の養子となる。1872年(明治5)尾張(おわり)(名古屋)の桃井儀三郎英升と図って京都で七宝製作を始めるが、その技術は濤川惣助(なみかわそうすけ)の家職人から学んだとみられる。靖之は濤川と異なり、あくまでも伝統的な有線七宝を基本とし、その特色を生かした技法を考案した。光沢の強い華やかな絵の具を用いて真鍮(しんちゅう)の細線で精緻(せいち)な文様を描き、その上に絵の具をのせていく手法は、無線とは違った美を表出し、濤川と並んで七宝界の双璧(そうへき)とたたえられた。90年の内国勧業博覧会に出品して妙技一等賞を受けたのを皮切りにその地歩を固め、96年には帝室技芸員に推挙された。

[矢部良明]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「並河靖之」の解説

並河靖之 なみかわ-やすゆき

1845-1927 明治-大正時代の七宝作家。
弘化(こうか)2年9月生まれ。尾張(おわり)七宝の桃井英升(えいしょう)にまなぶ。伝統的な有線七宝をもとにあらたな文様表現を考案,無線七宝の濤川惣助(なみかわ-そうすけ)とならび称された。明治23年第3回内国勧業博覧会で妙技1等賞。29年帝室技芸員。昭和2年5月28日死去。83歳。京都出身。本姓は高岡。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「並河靖之」の意味・わかりやすい解説

並河靖之
なみかわやすゆき

[生]弘化2(1845).京都
[没]1927. 京都
七宝作家。七宝作家桃井英升の弟子。初め有線七宝法を工夫し,のち明治初年に来朝のドイツ人 G.ワーグナーの指導を受け,精巧な有線七宝による壺,花器などを制作した。無線七宝の濤川惣助とともに明治七宝界の双璧と評され,1896年帝室技芸員となった。

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百科事典マイペディア 「並河靖之」の意味・わかりやすい解説

並河靖之【なみかわやすゆき】

七宝作家。京都生れ。ドイツ人応用科学者G.ワーグナーによって伝えられた従来の七宝技法を改良し,金銀線を用いた精巧な七宝を作りだした。

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世界大百科事典(旧版)内の並河靖之の言及

【七宝】より

…現在この付近は七宝町と呼ばれて存在している。梶の出現で七宝工芸は大きく飛躍し,彼の弟子の塚本貝助(1828‐97)は,明治初年来日したドイツ人ワーグナーGottfried Wagner(1830‐92)の指導でその技術を大きく改良させ,さらに東京の濤川惣助(なみかわそうすけ)(1847‐1910)は無線七宝を考案,京都では並河靖之(なみかわやすゆき)(1845‐1927)が日本画風の七宝に特色を出し,名古屋では安藤重兵衛(1876‐1953)らが出て盛況を呈した。【由水 常雄】
[西洋]
 古代における七宝については不明な点が多い。…

※「並河靖之」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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