中台サービス貿易協定(読み)ちゅうたいさーびすぼうえききょうてい

知恵蔵 「中台サービス貿易協定」の解説

中台サービス貿易協定

2013年6月、中国と台湾の間で調印された貿易協定。金融・通信・出版・医療・旅行など、サービス関連の市場を相互に開放し、新規参入を促すことで、経済・貿易の活性化を図ることが目的。中国は80項目、台湾は64項目を開放する予定。
08年に台湾で馬英九(マー・インチウ)政権(国民党)が誕生して以来、中台は人的交流・通商の分野で急接近している。09年には、それまでチャーター便のみだった航空便の定期運航が始まり、中台間の「三通」(通信・通商・通航)が現実のものとなった。10年には、FTA(自由貿易協定)に相当するECFA(海峡両岸経済協力枠組み協定)が結ばれ、合計806品目(中国539品目、台湾267品目)の関税引き下げ・撤廃が段階的に進められた。「中台サービス貿易協定」も、関税撤廃を原則とするECFAの協議事項の一つであり、中台の当局は共に早期の実現を目指している。
中国の経済界もこれを支持。台湾の経済界もおおむね歓迎しているが、台湾の中小事業者の間からは、資本力がある中国企業の進出に強い不安の声が上がっている。また、通信・出版分野の開放によって、台湾の言論の自由が損なわれる、と懸念する声も多い。台湾・野党第一党の民進党も「馬英九の密室協議」「協定は台湾に不利」などと批判。13年6月の調印以降、委員会等で審議が重ねられたが、民進党は協定の承認に応じなかった。
14年3月17日、審議が3カ月を超え、業を煮やした国民党が強行採決に出ようとしたため、翌18日、これに反対する学生100人以上が立法院(国会)に乱入。協定の撤回や審議のやり直しを求め、議場を占拠した。30日には、台北市の総統府周辺で学生を支持する市民集会が開かれ、約50万人(主催者発表)が集まった。これを受けて馬政権は、学生の要求項目の一つ「協定を監視するシステム」をつくる提案を受け入れ、学生も24日間に及んだ議場占拠を解除、撤退した。「中台サービス貿易協定」の発効には、台湾の立法院に提出された「中台協定監督条例」案の成立が条件になっている(14年4月末時点)。なお、こうした学生を中心とした一連の運動は、太陽花学運、ヒマワリ学運、318公民運動などと呼ばれる。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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