中国工芸(読み)ちゅうごくこうげい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中国工芸」の意味・わかりやすい解説

中国工芸
ちゅうごくこうげい

新石器時代の彩陶や黒陶に始り,殷代には精巧で複雑な文様をもつ青銅器類,またこれと同様の文様を施した白陶も作られた。戦国時代には青銅器の文様が狩猟文など絵画風のものに変化し,七宝やガラス玉を象眼 (ぞうがん) する技法も生れた。漢・六朝時代には金属工芸では塗金,象眼,細金細工などの技法がさらに精巧になり,器形は実用性を重んじ,装飾も素文の器胎の上に付加的に行う傾向が強くなった。また,漆工芸では乾漆,籃胎 (らんたい) による器物が作られ,錦,綴織 (つづれおり) ,などの絹織物が,シルクロードを経て西欧諸国に運ばれた。隋・唐代には鏡など金属工芸に金銀平脱 (→平文 ) ,貼金銀,嵌玉,七宝,打出しなどの技法が動員され,染織工芸では前代からの織技に加え,刺繍や纐纈 (こうけち) ,臈纈 (ろうけち) ,夾纈 (きょうけち) などの染色法が発達した。また,越州窯に代表される白磁,および明器としての唐三彩など陶磁工芸も盛んになり,ほかに特殊な寄せ木細工などの技法による木工芸や皮工芸も発達した。唐代工芸はいずれの分野においても,初期にはイラン系の技法と文様の流入がみられたが,盛唐頃から中国的な絵画文様が主流を占めるようになった。宋・元代は陶磁工芸によって代表され,青磁,白磁,天目および鉄絵,赤絵やかき落しによる壺類が広く輸出された。明・清代も陶磁器生産が盛んで,世界最大の陶都である景徳鎮で染付,赤絵,金襴手 (きんらんで) ,青磁などの優品が焼かれた。また,彫漆,そう金,螺鈿 (らでん) などの漆工,鋳型生産によるガラス工,高級絹織物,硬王を用いた玉細工,竹芸,骨角・鼈甲 (べっこう) 細工などは,安土桃山・江戸時代の日本工芸に大きな影響を与えている。清代以降,工芸は質的に低下したが,現代の中国では文教弁公室の指導により再び隆盛期を迎えようとしている。

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