中央指揮所(読み)ちゅうおうしきしょ(英語表記)Central Command Post

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中央指揮所」の意味・わかりやすい解説

中央指揮所
ちゅうおうしきしょ
Central Command Post

陸海空三自衛隊の最高指揮施設で、東京都新宿区の市谷(いちがや)地区(陸上自衛隊駐屯地、航空自衛隊市ヶ谷基地)内にある。略称CCP。日米共同作戦を遂行するうえで、日米双方の作戦の調整、司令・指揮の統一化が必要とされ、1978年(昭和53)の『日米防衛協力のための指針』に基づき、防衛省(当時は防衛庁)の敷地内に1984年設立された。この中央指揮所は、地上2階、地下3階で、面積は約3000平方メートルであり、中に防衛会議室、調整会議室、総合情報室がある。総合情報室には、有事のときに備え、総力戦に必要なすべてのデータがコンピュータにインプットされている。また、戦時の際、陸海空自衛隊を有効的に動かすため、航空機、ペトリオット地対空ミサイル、陸上自衛隊のホーク地対空ミサイルなどをコントロールする航空自衛隊のジャッジ・システム(自動防空警戒管制組織)や海上自衛隊の自衛艦隊指揮・支援システムと自動連接され、航跡情報などが自動表示される仕組みとなっている。中央指揮所と各部隊との間は中央指揮システム(CCS)で結ばれていて、通信は三自衛隊合同の部隊である自衛隊指揮通信システム隊が担当している。CCSは首相官邸や関係省庁、在日アメリカ軍の通信システムとも連接している。中央指揮所設置当時には統合幕僚会議議長(統幕議長)は防衛庁長官の補佐役にとどまり、三自衛隊の統一指揮には不安があったが、2006年(平成18)の自衛隊法改正で統合幕僚監部(JSO)が設置され、統幕議長にかわった統合幕僚長が自衛隊の指揮に実質的にかかわれる体制となった(ただし法制上の自衛隊の指揮権は依然として総理大臣防衛大臣にある)。

[池田吉人・野木恵一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中央指揮所」の意味・わかりやすい解説

中央指揮所
ちゅうおうしきしょ

有事あるいは大規模災害発生の際,最高司令部として自衛隊の指揮をとる施設。防衛省の敷地内の建物地下に設けられ,統合幕僚監部の指揮通信システム部が管理する。 1984年から運用開始。海上自衛隊の自衛艦隊指揮支援システム,航空自衛隊のバッジ・システムなどと連接し,在日アメリカ軍との間にも電話などが設置されている。

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世界大百科事典(旧版)内の中央指揮所の言及

【指揮・統制システム】より

…日本のものとしては,航空自衛隊の防空作戦用指揮統制システム(BADGE(バツジ)),海上自衛隊の自衛艦隊指揮支援システムなどがある。また,陸,海,空の各自衛隊を総合的に指揮するための中央指揮所が防衛庁に設置され,各自衛隊の指揮統制システムと連接されて,国家的規模の指揮・統制システムが構成されている。 情報処理関連技術の進歩や人工衛星の利用等により,広域にわたる多種多量な情報の迅速かつ総合的な処理が今後いっそう容易になり,分散配置された部隊の総合的な指揮・統制を容易にする一方,戦闘によるシステム機能の破壊等に備えて,重要機能の多重化や,下級システムの独立戦闘機能等もいっそう重要視されている。…

※「中央指揮所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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