中心差(読み)ちゅうしんさ(英語表記)equation of centre

改訂新版 世界大百科事典 「中心差」の意味・わかりやすい解説

中心差 (ちゅうしんさ)
equation of centre

ケプラー運動する質点の真近点離角と平均近点離角の差。中心差の大きさは,楕円の離心率に依存していて,円運動のとき0となり,離心率が大きいほど中心差は大きくなる。すなわち,天体面積速度法則に従って,近地点では速い角速度を持ち遠地点では遅い。いま時間とともに一様な角速度で進む仮想の天体を考えると,その天体は真の天体と軌道上の位置がそれ,離心率が大きいほど,この差は大きくなる。太陽の場合,中心差の主要項の振幅は1.9度であって,均時差の原因の一つである。月の場合は,6.3度であり,月の視直径の12倍にも達する。なお,ギリシア天文学では,中心差を二つの円運動の重ね合せで説明していた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の中心差の言及

【月】より

…平均の角速度で動いているとした仮想の月と実際の月とでは,平均6゜17′まで差がでてくる。これは中心差と呼ばれる。 月の運動理論を正確に求めることは非常にむずかしい。…

【月運動論】より

…こうして,複雑な運動を高い精度で解明する月運動論の内容はきわめて膨大なもので,代表的なE.W.ブラウンの月運動論では,月の黄経,黄緯,視差を表す三角級数は全体で1600余の周期項からなっている。その半数以上が黄経に使われているが,その中でもっとも主要な5個の周期項は中心差,出差,二均差,年差,月角差と呼ばれている。中心差は古代より知られ,出差は前150年ころにヒッパルコスが発見したと伝えられる。…

※「中心差」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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