中禅寺湖(読み)ちゅうぜんじこ

精選版 日本国語大辞典 「中禅寺湖」の意味・読み・例文・類語

ちゅうぜんじ‐こ【中禅寺湖】

栃木県日光市男体山の南麓にある湖。表面の排水は大尻川となり、華厳滝を経て大谷川(だいやがわ)となる。地下の排水は十二滝となり大谷川に注ぐ。湖岸に中禅寺、二荒山神社中宮祠がある。面積一一・八平方キロメートル。湖面標高一二六九メートル。最大水深一六三メートル。

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デジタル大辞泉 「中禅寺湖」の意味・読み・例文・類語

ちゅうぜんじ‐こ【中禅寺湖】

日光市にある湖。男体山の溶岩が大谷だいや川をせき止めてできたもの。湖面標高1269メートル。最大水深163メートル。華厳滝の水源で、日光国立公園の一部。

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日本歴史地名大系 「中禅寺湖」の解説

中禅寺湖
ちゆうぜんじこ

男体山(二荒山)南麓にある同山火山活動によって形成された堰止湖で、北岸菖蒲しようぶヶ浜で地獄じごく(湯川下流)、西岸千手せんじゆヶ原で外山沢とやまざわ川・柳沢やなぎさわ川、南岸阿世潟あぜがたで阿世潟沢などが流入。東端で流れ出た湖水は華厳けごん滝・華厳渓谷を経て大谷だいや川となる。東西約六・五キロ、南北約三・五キロ、周囲約二三・六キロ、面積は一一・四九平方キロ。中央部の平均水深一二五メートル、最深部一七二メートル。水面標高一二六九メートルは、自然湖としては日本で最も高い。二荒山神社中宮祠のある湖岸線の北側は平滑であるが、南岸は八丁はつちよう(町)出島でじま大日だいにち崎・まつヶ崎などの突出部を有し、出入りが多い。湖名は古くは男体山の南にあるところから、また南海にある観音浄土補陀落山にちなんでなん湖と称し、中宮祠ちゆうぐうし湖・幸の湖さちのうみ雪浪せつろう湖・八功徳池はつくとくちなどの別称もある。

弘仁五年(八一四)空海が撰文した沙門勝道歴山水瑩玄珠碑并序(性霊集)には「有一大湖、冪計一千余町、東西不闊、南北長遠、四面高岑倒影水中」とあり、続いて延暦三年(七八四)三月下旬勝道が「至彼南湖辺、四月上旬造得一小船(中略)湖遊覧」したと記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「中禅寺湖」の意味・わかりやすい解説

中禅寺湖 (ちゅうぜんじこ)

栃木県日光市の南西部,男体(なんたい)山(二荒(ふたら)山)の南に位置する。湖面標高1269m,面積は11.5km2で,標高1000m以上の湖としては日本最大。東西約6km,南北平均幅は約2km,最大深度163m,周囲の長さ21km。男体山から噴出した溶岩によって大谷(だいや)川がせき止められてできた堰止湖である。かつて戦場ヶ原や西ノ湖を含む大湖と考えられたこともあったが,これらの湖はそれぞれ成因を異にする。湖水は華厳滝となって落下する大谷川の表面排水のほか,華厳滝の滝壁から湧き出す十二滝や白雲滝などの地下排水を通して下流に流れ出る。湖尻に設置されている栃木県営の中禅寺ダムは湖水位を最大2m調節できるため,華厳滝の落水量や下流の発電所への流入水量を調整している。湖水の透明度は夏に大きく,1年を通しておよそ8~10mの間を変化する。日光国立公園の中核となっており,湖畔は華厳滝とともに国の名勝に指定され,国際的観光地として知られる。

 男体山は古代に僧勝道が開いた山岳信仰の霊場であり,山頂に二荒山神社の奥宮,中禅寺湖北東岸の中宮祠(ちゆうぐうし)に中宮(中宮祠),日光市街に本社がある。現在のいろは坂上り口から上は女人の登山を禁止し,〈峰禅頂〉の僧が湖の東岸歌ヶ浜などを拠点として修行した。さらに近世には一般の人が参加する〈行人〉による〈男体禅頂〉〈船禅頂〉も講の形で行われた。船禅頂は,浜禅頂または補陀落(ふだらく)禅頂ともいわれ,湖上に船をこぎ出し,歌ヶ浜,上野島,千手ヶ浜などの諸堂,霊所を順拝する修行である。中禅寺は勝道によって創建された神宮寺であり,中宮祠とともに神仏混淆の伽藍を形成していたが,明治初めの廃仏毀釈によって中宮祠の所管となり,集落名も中禅寺から中宮祠に改められた。湖名も中宮祠湖とされたが広く用いられるには至らなかった。また,深沢を結界とする女人禁制も解かれ,中禅寺湖とその付近は信仰の対象から観光地へと変化した。旧中禅寺は1902年の山津波で崩壊したが,13年に歌ヶ浜の立木観音を中心に再建され,輪王寺の一堂となっている。

 優れた湖畔の景観に加えて,8月の平均気温が18℃と避暑地として絶好の条件を備えていることから外国人が数多く来訪するようになり,明治20年代には湖畔に外国人の別荘が建てられた。観光客の増加につれて食堂,みやげ物店も成立し,かつての茶屋は旅館となり,中宮祠は明治期に定住の集落となった。現在は各種の公共施設が整備され,日光湯元から引湯した中禅寺温泉(硫黄泉,45~73℃)もある。1873年イワナ,コイ,フナ,ウナギなどが湖に放され,82年に琵琶湖のマス,87年にアメリカからニジマスが移殖され,国営の養魚場(現,独立行政法人の水産総合研究センター中央水産研究所日光庁舎)も設置されて,水産業が営まれるようになった。もともと中禅寺湖は神聖な湖とされ,その魚を食べることは禁じられていたが,年間200万尾弱のマスが放流され(2007年度は約140万尾弱),付近の渓流や湯ノ湖とともにマス釣りの名所として知られる。また,かつての船禅頂に代わって,夏季には定期遊覧船が就航し,湖上の名所を巡回している。
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百科事典マイペディア 「中禅寺湖」の意味・わかりやすい解説

中禅寺湖【ちゅうぜんじこ】

栃木県日光市西部の火山せき止め湖。標高1269m,面積11.90km2,最深163m,貧栄養湖。東端の大尻川により排水,大尻川は華厳滝(けごんのたき)に続く。普陀落山(ふだらくせん)にちなんで南湖と称し,中宮祠湖・幸の湖・雪浪湖ともいう。8世紀に勝道が湖水遊覧を行って以来,湖の拝所を順拝する船禅頂が行われ,日光修験の行の一つとなっている。日光国立公園の一中心で,湖岸に中禅寺温泉,中禅寺(立木観音),二荒山神社,北部に男体山,北西部に戦場ヶ原などがある。
→関連項目カワマス日光[市]ビワマスブラウントラウト湯ノ湖

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中禅寺湖」の意味・わかりやすい解説

中禅寺湖
ちゅうぜんじこ

栃木県日光市にある湖。面積11.5平方キロメートルはわが国高山湖の最大。周囲は23.6キロメートル。最大深度は163メートルに達し、華厳滝(けごんのたき)の滝壺(たきつぼ)よりも60メートルほど低い。湖水の透明度は8~10メートルで貧栄養湖に属し、湖水の環境基準は「AA」に指定されている。『日光山志』は「東西凡(およそ)三里余、南北凡一里余」と記しているが、東西約6.7キロメートル、南北は最大3キロメートル、平均1.8キロメートルであるからずいぶんと過大に評価されていた。男体山(なんたいさん)をつくった溶岩が大谷川(だいやがわ)をせき止めて湖が生まれ、華厳滝をかけるに至った。一時は戦場ヶ原や西ノ湖(さいのこ)とともに大湖をなしていたと考えられたが、現在はそれぞれ別々の成因をもつことが明らかにされている。湖尻に県が管理する高さ2メートルの中禅寺ダムがあり、湖からの落水量を調節している。マスが放流され、5~9月が遊漁期となっている。日光国立公園自然美の中核をなし、国の名勝に指定されている。湖中の上野(こうずけ)島には、勝道上人(しょうどうしょうにん)の遺骨を納める碑石があり、湖の周りはホテル、旅館、保養所などのほか、夏季にはキャンプ場が開かれる。また、遊覧船も就航している。JR日光駅、東武鉄道日光駅よりバスで50分。

[平山光衛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中禅寺湖」の意味・わかりやすい解説

中禅寺湖
ちゅうぜんじこ

中宮祠湖,幸ノ湖ともいう。栃木県西部,男体山の南麓にある堰止湖。面積 11.8km2,周囲 22km。湖面標高 1269m,最大水深 163m。日光諸湖のうち最大。湯ノ湖や千手ヶ原 (せんじゅがはら) からの流水を男体山の溶岩がせきとめてできたもの。湖水は大尻川,華厳滝を経て大谷 (だいや) 川となって鬼怒川に注ぐ。湖岸に中禅寺温泉,キャンプ場などがあり,二荒山神社中宮祠,立木観音などの旧跡も多く,外国公館の別荘もある。ニジマス,ヒメマスの養殖が行われる。湖畔は華厳滝とともに名勝で日光国立公園に属する。

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事典 日本の地域遺産 「中禅寺湖」の解説

中禅寺湖

(栃木県日光市)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「中禅寺湖」の解説

中禅寺湖

(栃木県日光市)
日本の重要湿地500」指定の観光名所。

中禅寺湖

(栃木県日光市)
日本百景」指定の観光名所。

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