中通島(読み)なかどおりじま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中通島」の意味・わかりやすい解説

中通島
なかどおりじま

長崎県五島列島(ごとうれっとう)の北部にある島。南松浦(みなみまつうら)郡新上五島町(しんかみごとうちょう)に属する。古名は大近(おおちか)、中世には浦部島(うらべじま)ともよばれた。面積168.34平方キロメートル(2005)。四つの半島からなる十字形の島で、1981年(昭和56)島の北東端、架橋された頭(かしら)ヶ島に上五島空港が新設されたが、2006年(平成18)に閉鎖された。島内の奈良尾(ならお)港から長崎港にジェットフォイルフェリーが、鯛ノ浦港と長崎港、有川港と佐世保(させぼ)港、青方(あおかた)港と博多港との間にフェリーが就航している。北東部の有川湾ではブリの定置網漁業が盛んで有川、榎津(えのきづ)両港があり、北西部の青方港は古来良港をなし、避難港で、海上石油国家備蓄基地がある。南東部の奈良尾港は揚繰(あぐり)網漁業の基地で、東シナ海、山陰沖、三陸沖に出漁する。西部は若松瀬戸に臨む景勝地で、山王(さんのう)山(439メートル)からの展望はすばらしく、西海国立公園(さいかいこくりつこうえん)の中心地。島内各地には教会をもつカトリック集落が多く青砂ヶ浦天主堂(あおさがうらてんしゅどう)や頭ヶ島天主堂(ともに国の重要文化財に指定される)などもある。奈良尾神社の樹齢600年のアコウは国の天然記念物。人口2万1568(2009)。

[石井泰義]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中通島」の意味・わかりやすい解説

中通島
なかどおりじま

長崎県西部,五島列島北部にある,福江島に次いで大きい島。四つの半島が延びて十字形をなす。新上五島町に属し,有川新魚目上五島奈良尾の 4地区と若松地区の一部が含まれる。有川地区を除いて水田はほとんどなく,主漁従農の島。有川および新魚目地区の榎津は一本釣り,有川湾および上五島地区の奈摩湾は以西底引網漁業,奈良尾は揚繰網漁業の基地。有川地区の鯛之浦と有川湾はブリ,真珠の養殖場。農業はサツマイモが中心であるが,1965年以降,北部にミカン造園が始まった。教会をもつキリシタンの集落が点在し,特に有川の北東に浮かぶ頭ヶ島(かしらがしま)の西部には江戸時代の潜伏キリシタンの歴史を物語る史跡があり,2018年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として,世界遺産の文化遺産に登録された。有川―佐世保,青方―博多,奈良尾―長崎間をそれぞれ定期船が運航する。頭ヶ島東部には上五島空港がある。有川と奈良尾の間を国道384号線が走る。面積 168.20km2。人口 2万4992(2000)。

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百科事典マイペディア 「中通島」の意味・わかりやすい解説

中通島【なかどおりじま】

長崎県五島列島北部の島。面積168.31km2。山がちで,最高点443m。海岸は湾入の多い沈降海岸で,南西部の若松瀬戸は特に湾入が激しく,西海国立公園中の景勝地。島全体が新上五島町の一部で,良港が多く,漁業が盛ん。近年,島内縦貫道路が完成。
→関連項目有川[町]上五島[町]新魚目[町]奈良尾[町]若松[町]

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改訂新版 世界大百科事典 「中通島」の意味・わかりやすい解説

中通島 (なかどおりじま)

長崎県西部,五島列島の中ほどに位置する島。面積は168km2。南松浦郡に属し,新魚目(しんうおのめ),有川,上五島,奈良尾の4町と,若松町の一部に分かれていたが,2004年合併により新上五島町となる。有川,浜ノ浦,魚目,奈良尾の四つの半島が十字形に伸びる島で,北は津和崎瀬戸を隔てて野崎島に,南西は若松瀬戸をはさんで若松島に面する。リアス海岸が発達し,山王山(439m)から望む若松瀬戸の溺れ谷の景観は西海国立公園のなかでも特にすばらしい。多くの入江には漁港があり,有川湾ではブリの定置網漁業が行われ,奈良尾港は揚繰(あぐり)網漁の基地となっている。有川,青方(あおかた),奈良尾を国道384号線が結ぶ。長崎港から奈良尾へ,佐世保港から榎津,有川へフェリーが通じ,長崎空港から有川(上五島空港)へ定期航空路がある(2006年より休止)。
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デジタル大辞泉プラス 「中通島」の解説

中通島

長崎県南松浦郡新上五島町、五島列島最北に位置する島。佐世保市の西方約55キロメートルに位置し、島北端は津和崎瀬戸を挟んで平戸諸島の野崎島に向かい合う。面積は約168.41平方キロメートルで、五島列島では福江島に次ぐ大きさ。東の頭ヶ島、南西の和松島とは橋で結ばれる。島の形は十字型に近い。リアス式海岸の湾ではハマチなどの養殖漁業が盛ん。古くは遣唐使船の寄港地。江戸時代には弾圧を逃れたキリシタンが多く移り住んだ。現在も島民の25パーセントほどがカトリック教徒で島内に20以上の教会がある。このほか明治以降も独自の信仰を守り続ける隠れキリシタンも存在する。鉄川与助設計による青砂ヶ浦天主堂は国の重要文化財。中ノ浦教会は水辺に映る姿が美しい。島南部の奈良尾神社境内にあるアコウは国の天然記念物。

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世界大百科事典(旧版)内の中通島の言及

【五島列島】より

…明治になると,宇久,小値賀の両島が北松浦郡に編入されたので,中通,若松,奈留,久賀(ひさか),福江の各島で五島と称するに至った。しかし自然地理的には宇久・小値賀両島を含めて五島列島と考えてよく,また県南部の中心地長崎市の勢力圏が中通島の奈良尾町以南に広がり,県北の佐世保市の勢力圏が中通島の有川町以北,宇久・小値賀両町におよぶことから,前者の地域を下五島,後者の地域を上五島とし,合わせて五島列島とするのが妥当であろう。 平地に乏しい五島列島の産業は漁業が中心である。…

※「中通島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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