中音(読み)ちゅうおん

精選版 日本国語大辞典 「中音」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐おん【中音】

〘名〙
① あまり高くも低くもない、中くらいの高さの音。中くらいの声。
※わらんべ草(1660)二「右是は、字の上音、中音、下音の正也」
平家琵琶曲節の一つ。中程度音域で詠嘆的に節あしらいを細かく幽玄に歌うところ。
※西海余滴集(17C前か)「中音は是五尺菖蒲 たけたかうして涼しく清すべし」
音楽で、中程度の高さを示す音域の音。女声または楽器アルトに属するものの音。中高音。アルト。〔楽典初歩(1888)〕

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デジタル大辞泉 「中音」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐おん【中音】

中くらいの高さや強さの音または声。
「上ずったような―で言った」〈堀辰雄風立ちぬ
音楽で、中程度の音域の音。女声のアルトまたは楽器のアルトに属する音。中高音。

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改訂新版 世界大百科事典 「中音」の意味・わかりやすい解説

中音 (ちゅうおん)

日本の音楽理論用語。分野ごとにいろいろの意味で用いられている。まず声明(しようみよう)の講式では,二重から初重(しよじゆう)に戻るところに挿入されるシラビックな旋律様式の部分をいう。また天台声明では,拍節的リズムのうち3拍子を中音といい,真言声明では,ア列とオ列の中間的な発音を〈ダドの中音〉などと称している。平曲では,引き句の一つで,初重や三重(さんじゆう)とともに一つ一つの音をメリスマ的(装飾的声楽様式の一つ)に長く引きながら,きわめて音楽的に演唱するもので,音域が初重と三重の中間にある。節物(ふしもの)の曲のクライマックスには,三重とともにしばしば用いられる。能の謡や狂言謡では,音階音の一つである中(ちゆう)の現代的呼称として用いられる。すなわち,ヨワ吟においては,完全4度・完全4度の関係にある三つの主要な音階音のうち,中間のものをいう。ツヨ吟においては,特異な音程関係にある四つの主要な音階音のうち,上から2番目のものをいう。
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世界大百科事典(旧版)内の中音の言及

【平曲】より

…拾イ類の曲節を多く含む句が〈拾イ物〉とよばれる。(5)フシ類(三重(さんじゆう)・中音(ちゆうおん)・初重(しよじゆう)など) ユリをたっぷりきかせ,最も旋律的な曲節。美文調の部分に多く用いられる。…

※「中音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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