丸山千里(読み)まるやまちさと

百科事典マイペディア 「丸山千里」の意味・わかりやすい解説

丸山千里【まるやまちさと】

医学者。長野県生れ。1928年に日本医科大学を卒業し,同大学皮膚科学教室に入局。皮膚結核ハンセン病治療に打ち込む過程で,1944年に皮膚結核の治療薬としてワクチン精製,のちに〈丸山ワクチン〉と呼ばれた。1947年に日本医科大学皮膚科学教室の教授となる。1964年に治療にワクチンを使用することを決意し,好結果を得たことでワクチン療法による癌治療が開始された。丸山ワクチンの癌患者への有効性については,1974年の国際癌学会で報告があり,これを受けて患者が殺到。癌の治療薬としての認可をめぐり,国会でも審議されるほどの社会問題となった。その結果,正式な薬としての認可がないまま,1981年に有償治験薬(患者が実費を負担して使用する治験薬)として使用が認められ,多くの患者が丸山ワクチンを使っている。日本医科大学名誉教授で,1974年には一時的に同大学学長を務めた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「丸山千里」の意味・わかりやすい解説

丸山千里
まるやまちさと
(1901―1992)

医学者。長野県生まれ。1928年(昭和3)日本医科大学皮膚科を卒業、同皮膚科教室に入局、1947年同教授。丸山ワクチンを開発し、1944年以来、皮膚結核、ハンセン病の治療に使用してきたが、1966年以来、癌(がん)治療に用いる。しかし、厚生省から抗悪性腫瘍剤(こうあくせいしゅようざい)としての製造承認が得られず、有償治験薬の特別措置がとられて使用されている。1968年日本医科大学附属病院長、1972年同ワクチン療法研究所長、1974年同学長を歴任し、同名誉教授。著書に『丸山ワクチン―ガンを追いつめる』『皮膚科全書結核疹』などがある。平成4年3月6日没。

[編集部]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「丸山千里」の解説

丸山千里 まるやま-ちさと

1901-1992 昭和-平成時代の皮膚科学者。
明治34年11月27日生まれ。昭和22年母校日本医専の後身の日本医大教授,49年学長となる。19年皮膚結核の治療のため,ヒト型結核菌抽出物から「丸山ワクチン」を開発。これががん治療に有効であるとして抗がん剤申請をしたが,厚生省の認可はえられず,治験薬としての生産がつづくなか,平成4年3月6日死去。90歳。長野県出身。
格言など】私は患者さんの病気さえよくなれば十分です

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