乗越(読み)のりこす

精選版 日本国語大辞典 「乗越」の意味・読み・例文・類語

のり‐こ・す【乗越】

〘自サ五(四)〙
① 物の上に乗って、その物を越える。のりこえる。
※金刀比羅本平治(1220頃か)中「弓手(ゆんで)のかたへのり越(コシ)て、庭にうつぶさまにどうど落給(おちたまふ)
乗物に乗って越す。また、乗物に乗って追いぬく。
日葡辞書(1603‐04)「カワヲ イカニモ シヅカニ noricoxi(ノリコシ)〔高館の舞〕」
③ 他を抜いて進む。他人の地位身分などを追い越す。
※滑稽本・風来六部集(1780)放屁論後編「穴(けつ)のせまい仕送り用人に乗越(ノリコサ)れ」
④ 他人の夫と情を通じる。寝取る。
浄瑠璃極彩色娘扇(1760)一「人の男をのりこした報いは早い針とがめ」
列車などで、下車する予定の駅を過ぎて乗っていく。のりすごす。
煤煙(1909)〈森田草平一六二人は乗越した分の賃銭を払って停車場を出た」

のり‐こ・える【乗越】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 のりこ・ゆ 〘自ヤ下二〙
① 乗って向こう側に越える。上を越える。のりこす。
万代(1248‐49)雑「風わたる浦のみなとの汐さきに波のり越てかもめ鳴くなり〈藤原基氏〉」
力量、地位などで、上の人を追い越す。
③ 困難な状態を苦心してきりぬける。のりきる。
※中野重治論‐なかの・しげはる論(1946)〈荒正人〉「第一危機は文学的にみてかならずしも十分に乗り越えられたわけではない」

のり‐こし【乗越】

〘名〙 乗り物に乗って乗り越すこと。特に列車などで、下車する予定の駅を通り過ぎて乗っていくこと。
和解(1917)〈志賀直哉〉二「(四五度前の上京のかへり乗越をしたので)眠らぬやうにしてゐた」

のっ‐こし【乗越】

〘名〙 山の背の低くなっている所。また、峠。
※登山技術(1939)〈高須茂〉登山用語「もし両側の谷を結ぶやうに通行出来る場合はノッコシ(乗越)と云ってゐる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の乗越の言及

【峠】より

…また近代に入ってからは峠付近にトンネルを伴う鉄道や車道が建設されるようになった。 飛驒乗越(のつこし)(3000m),別山乗越(2740m),一ノ越(こし)(2680m),野呂川越(ごえ)(2220m)など〈乗越(のつこし)〉〈越(こし∥こえ)〉と呼んでいるものも峠の一種で,特に高度の大きいことが多い。分水線をはさむ両側の斜面の沢沿いの登山路の出会う分水嶺上の鞍部にあたる。…

※「乗越」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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