九品(読み)くほん

精選版 日本国語大辞典 「九品」の意味・読み・例文・類語

く‐ほん【九品】

〘名〙 (「くぼん」とも) 仏語
① 九種に分けた等級で、上中下の三を、さらに上中下に三分したもの。煩悩の九品、大衣である僧伽梨の九品などと用いる。
※和歌九品(1009頃か)「和歌九品」 〔薩婆多毘尼毘婆沙‐一〕
極楽往生する者の、能力や性質の差によって受ける九つの階位。これを九品往生といい、上品上生(じょうぼんじょうしょう)から下品下生(げぼんげしょう)までの九つ。三輩(さんぱい)
往生要集(984‐985)大文四「九品生人、皆発菩提心」 〔観無量寿経
源氏(1001‐14頃)若菜上「はるかに西のかた十万億の国へだてたる九品のうへののぞみうたがひなくなり侍りぬれば」

ここの‐しな【九品】

〘名〙 (「九品(くほん)」の訓読み)
① 上・中・下の三段階のそれぞれをさらに上・中・下の三つに分けたもの。九つの品数
極楽浄土に生まれる人を、その資質の上から上品(じょうぼん)上生から下品(げぼん)下生までの九階級に分けたもの。また、それらの人の生まれ方やその生まれた極楽の差。ここのつのしな。→くほん
※源氏(1001‐14頃)夕顔「さてこそここのしなのかみにもさはりなくむまれ給はめ」
③ ②の意を用いて和歌の優劣を九つに分けたもの。藤原公任が「私記九品」において行なった。
※後拾遺(1086)序「大納言公任卿〈略〉ここのしなのやまとうたをえらびて、人にさとし」

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デジタル大辞泉 「九品」の意味・読み・例文・類語

く‐ほん【九品】

仏語。
浄土教で、極楽往生の際の九つの階位。上中下の三品さんぼんを、さらにそれぞれ上中下に分けたもの。上品上生じょうぼんじょうしょう・上品中生・上品下生げしょう・中品上生・中品中生・中品下生・下品げぼん上生・下品中生・下品下生の九つ。ここのしな。
㋑「九品浄土」「九品往生」「九品蓮台」などの略。
物事について設けた九つの等級。
「公任卿、和歌の―をえらび給ひしにも」〈戴恩記

ここの‐しな【九品】

《「九品くほん」を訓読みにした語》「くほん(九品)」に同じ。
「―の上に昇り給ひぬる嬉しさも覚えず」〈浜松・四〉

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普及版 字通 「九品」の読み・字形・画数・意味

【九品】きゆう(きう)ひん

。また、九等の制。官吏の等級の制は魏にはじまる。〔晋書、劉毅伝〕毅以(おも)へらく、魏、九品を立つるは、時(一時的、臨機)の制なり。未だ人を得ることを見ずして、の損りと。

字通「九」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「九品」の意味・わかりやすい解説

九品
くほん

仏教用語。極楽浄土(ごくらくじょうど)に生まれるのに、この世で生活した仕方によって9種類の生まれ方があることをいう。『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』に説かれ、非の打ちどころがない善人は臨終のとき、仏が迎えにきて即座に極楽に往生(おうじょう)できるのを上品上生(じょうぼんじょうしょう)という。以下、上品中(ちゅう)生、上品下(げ)生、中品上生、中品中生、中品下生、下品上生、下品中生と続き、最後の下品下生は、極悪非道の行為を繰り返した者が、臨終のとき、念仏を唱えたことによって往生できることをいう。この思想に従って、阿弥陀仏(あみだぶつ)にも九つの印相(いんぞう)(手に結ぶ印の形)があるという考えが一般化し、鎌倉中期以降、とくに九品の阿弥陀仏の造像が行われた。また、仏が迎えにくるとき、それに座る蓮台(れんだい)も違うと考え、九品の蓮台があるとさえいうようになった。

[石上善應]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「九品」の意味・わかりやすい解説

九品
くほん

仏教用語。9種の等級の意味。仏教で用い,上中下のそれぞれをさらに上中下に分けて9種類としたもの。すなわち,上上,上中,上下,中上,中中,中下,下上,下中,下下の9種類である。この分類法で特に有名なものは,浄土教にいう九品往生 (『観無量寿経』に説かれる) があるが,阿弥陀仏の極楽浄土に往生する者の行為や性質によって,浄土で受ける果報も9種に分けられるとする説で,その9種の違いにより,阿弥陀仏の姿,往生する者を浄土に運ぶ蓮台などに9種の差異があるという。

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百科事典マイペディア 「九品」の意味・わかりやすい解説

九品【くほん】

仏教における九等級の品位。上上品・上中品・上下品・中上品以下,下下品までの9段階をいう。《観無量寿経》などに基づき,浄土へ往生する人のあり方を九品に分けたりする。九品念仏,九品仏などといい,阿弥陀仏像,蓮台(れんだい)などに九品の区別がある。
→関連項目阿弥陀堂

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