九重山(読み)くじゅうさん

精選版 日本国語大辞典 「九重山」の意味・読み・例文・類語

くじゅう‐さん クヂュウ‥【九重山】

大分県西部、久住山を主峰とする火山群の総称。久住火山群、大船(たいせん)火山群、黒岩火山群に分かれ、阿蘇くじゅう国立公園の一部に含まれる。

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デジタル大辞泉 「九重山」の意味・読み・例文・類語

くじゅう‐さん〔クヂユウ‐〕【九重山】

大分県中西部にある火山群。主峰は久住くじゅう阿蘇あそくじゅう国立公園の一部で、山麓さんろく飯田はんだ高原・久住高原があり、コケモモミヤマキリシマの群落は天然記念物。黒岳の原生林には男池おいけ湧水群がある。九重連山

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日本歴史地名大系 「九重山」の解説

九重山
くじゆうさん

阿蘇くじゅう国立公園に属し、山域は九重ここのえ町・久住くじゆう町・直入なおいり町、熊本県小国おぐに町・南小国町産山うぶやま村の一帯に展開する。九州本島最高峰なか(一七九一メートル)を中心に、西方は小国町九重町との境付近に位置する涌蓋わいた(一四九九・五メートル)から、東方は久住町くろ(一五八七メートル)までの間に連なる一七〇〇メートル級の数座を含む山群の総称で、九重連山ともいう。山群の基盤は鮮新世―更新世の豊肥火山活動による溶岩からなり、その上に五期にわたる山陰系火山活動による溶岩類・軽石流の噴出があり、それによって主として溶岩円頂丘、また一部に成層火山や火山裾野が形成されている。山群のうち中岳に次いで高い山は大船たいせん(一七八七・一メートル)、次いで久住山(一七八六・八メートル)となり、ほかに三俣みまた(一七四四・七メートル)稲星いなほし(一七七四メートル)星生ほつしよう(一七六二メートル)平治ひいじ(一六四二・八メートル)黒岩くろいわ(一五〇三メートル)・黒岳・涌蓋山などの火山がある。

〔山名〕

豊後国風土記」にみえる「球覃峯」、「万葉集」に詠じられた「朽網山」は当山のこととされる。「豊後国風土記」は球覃くたみ峯を直入郡球覃(朽網)郷にあった山とし、「此の峯の頂きには火、恒に燎えたり。基に数の川あり、名を神河という。亦、二つの湯の河あり。流れて神河に会う」と記している。火山と河川の修辞や、「出雲国風土記」の記載などから考えれば、球覃峯という山名は多くの流れ下る河川の存在に起因する地名かと考えられる。「箋釈豊後風土記」は「蓋し九重大船黒嶽の三峯、鼎峙して其の根を合わす。総じて之を朽網山と謂う」とし、直入郡の南にあるとする「豊後国風土記」の割書は誤りで、郡の北にあるとしなければならないとする。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「九重山」の意味・わかりやすい解説

九重山
くじゅうさん

大分県西部、阿蘇(あそ)カルデラの北東方にあり、白山火山帯に属する安山岩質の第四紀火山群。九重連山ともよぶ。中岳(1791メートル)、久住山(くじゅうさん)(1787メートル)、星生(ほっしょう)山(1762メートル)、三俣(みまた)山(1744メートル)などからなるくじゅう火山群、大船山(たいせんざん)(1786メートル)、黒岳(1587メートル)などの大船火山群、黒岩山(くろいわやま)(1503メートル)、猟師(りょうし)山(1423メートル)、泉水(せんすい)山(1296メートル)などの黒岩火山群に分かれる。これらは溶岩円頂丘であるが、大船山上部には成層火山がのる。星生山の北東側山腹、大船山の南東側山麓(さんろく)には硫気孔があり、とくに前者では活発な硫気活動や水蒸気爆発が記録されている。温泉も多く、大岳(おおたけ)(出力1.1万キロワット)、八丁原(はっちょうばる)(5万キロワット)の両地熱発電所もある。久住山を中心に三俣山など1500メートル以上の地域に分布するコケモモの群落、大船山を中心に900メートル以上の地域に分布し6月の開花期に美観を呈するミヤマキリシマの群落は、ともに国指定天然記念物。北麓の飯田(はんだ)高原や南麓の久住高原とともに阿蘇くじゅう国立公園域の一部。法華院(ほっけいん)、長者原(ちょうじゃばる)、筋湯(すじゆ)などの温泉群が登山基地である。くじゅう、大船両火山群と黒岩火山群との間をやまなみハイウェイが走る。

 九重山はこれら火山群の総称であるが、九重(ここのえ)町と竹田(たけた)市都野(みやこの)地区では、「久住山」の表記をめぐって、議論がかわされている(前者は「九重山」を、後者は「久住山」を主張)。一般的には、火山群全体をさす場合に「九重山」「九重連山」「くじゅう連山」を用い、その主峰である単独の山をさす場合に「久住山」が用いられている。混乱を避けるため、観光宣伝では平仮名の「くじゅう」が用いられることが多く、国立公園名は「阿蘇くじゅう国立公園」とされている。

[兼子俊一・諏訪 彰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「九重山」の意味・わかりやすい解説

九重山
くじゅうさん

大分県熊本県境付近に噴出した火山群の総称。活火山で,常時観測火山。主峰の久住山(1787m)を中心に,東の黒岳(1587m),大船山(1786m),三俣山(1744m)から北西部の湧蓋山(1500m)に連なる山群。このうち中岳(1791m)が九州島最高峰。九重連山などとも呼び,阿蘇くじゅう国立公園に属する。火山の形態は輝石安山岩成層火山の大船山を除いて,すべて角閃石安山岩からなる火山であり,北東方の由布岳(1583m),鶴見岳(1375m)とともに,日本最大の溶岩円頂丘群を形成している。1995年に星生山(1762m)の東山腹で噴火があり,降灰が観測された。北麓に飯田高原,南麓に久住高原が広がる。高山植物も多く,コケモモ群落および大船山のミヤマキリシマ群落は国の天然記念物となっている。筋湯温泉,牧ノ戸温泉,星生温泉,七里田温泉,長湯温泉などの温泉地もあり,登山客は年間数十万人にも達する。

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改訂新版 世界大百科事典 「九重山」の意味・わかりやすい解説

九重山 (くじゅうさん)

大分県西部にある火山群。峰を境に北側が九重(ここのえ)町,南側が竹田市北西部に含まれ,南西山麓は熊本県に属する。西部は久住(くじゆう)山(1787m)を中心として,最高峰である中岳(1791m),稲星山(1774m),三俣山(1745m),また東部は大船(たいせん)山(1786m)を中心として平治岳(1643m),黒岳(1587m)などの火山が群立し,これらの山間盆地としてミヤマキリシマで有名な坊ガツルがある。一方,これら火山群の西方には阿蘇と別府を結ぶ九州横断道路をはさんで黒岩山(1503m),猟師山(1423m),さらには湧蓋(わいた)山(1500m)がそびえている。火山活動の開始は約26万年前と古く,かつては激しい火砕流噴火をしたが,すでに最盛期をすぎた火山である。噴火記録は17~18世紀に3度あるのみであるが,現在でも硫黄岳を中心に激しい噴気活動を続けている。火山群の大半は角セン石安山岩からなる溶岩円頂丘であるが,大船山の米窪火口と平治岳のみは輝石安山岩ないし玄武岩質マグマを噴出し,火山形態も他とは異なって前者がスコリア丘,後者が成層火山である。北麓の飯田(はんだ)高原,南麓の久住高原は火砕流堆積物がつくる緩斜面であり,牧場として利用されている。阿蘇国立公園の一角をなし,美しい自然とともに,筋湯寒ノ地獄,牧ノ戸,法華院,七里田などの温泉にも恵まれている。また八丁原(はつちようばる)と大岳(ともに九重町)には豊富な地熱を利用した発電所がある。
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事典・日本の観光資源 「九重山」の解説

九重山

(大分県)
日本百名山」指定の観光名所。

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