乞胸(読み)ごうむね

精選版 日本国語大辞典 「乞胸」の意味・読み・例文・類語

ごう‐むね ごふ‥【乞胸】

〘名〙 (お志を乞(こ)う意とも、合棟の長屋に住んでいたからともいう) 江戸時代綾取(あやとり)猿若(さるわか)、江戸万歳(まんざい)辻放下(つじほうか)講釈などを演じて物貰いをした乞食芸人の集団
随筆譚海(1795)一四「世間に非人にもあらずして、絹布類を著し、袖乞をなして、渡世する一種有、此ものこうむねと号す。文字には乞胸と書事也」

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デジタル大辞泉 「乞胸」の意味・読み・例文・類語

ごう‐むね〔ごふ‐〕【乞胸】

江戸時代、江戸市中で辻講釈綾取り万歳などの雑芸をして金銭を乞うた者。

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改訂新版 世界大百科事典 「乞胸」の意味・わかりやすい解説

乞胸 (ごうむね)

江戸時代から明治にかけて,都市を中心に活動した雑芸人(ぞうげいにん)で,いわゆる乞食の一種とみなされた人々の呼称。身分制度では町人の扱いを受けたが,万歳(まんざい),大黒舞(だいこくまい),節季候(せきぞろ),厄払,猿若(さるわか),辻放下(つじほうか),説経,講釈など,さまざまな雑芸を演じて門付(かどづけ)してまわり,わずかな報酬をえて生計をたてており,〈物もらい〉とも呼ばれた。その先駆形態は室町末期の《三十二番職人歌合》にすでに描かれ,編笠をかぶり,裸身で,手で胸をたたく風情である。その名称は〈胸たたき〉とされているが,これは関西方面でのちのちまでも用いられた呼び名。江戸時代には,江戸でひろまった〈乞胸〉の呼称が一般化したらしい。裸身での行動は江戸時代にはみられなくなり,絹布衣を着て袖乞(そでごい)した者もいた。〈乞胸〉の語義は一定しないが,〈胸(お志)を乞う〉〈合棟(ごうむね)長屋の住人〉の意とする説がある。〈乞胸仁太夫(じんだゆう)〉という乞胸頭(がしら)の支配下で,200文の銭を上納して,鑑札をもらい受けた。
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