乳び胸

内科学 第10版 「乳び胸」の解説

乳び胸(胸部リンパ系疾患)

(2)乳び胸(chylothorax)
定義・概念
 胸管が破綻し漏出した乳び(腸管からのカイロミクロンやリポプロテインを含む白濁したリンパ液)が胸腔内に貯留した状態
原因
 原因は外傷性,腫瘍性,特発性,その他に分類されるが,通常は原因の特定は困難である.外傷性は心臓血管手術,呼吸器外科手術,食道手術など術後が多いが,交通事故,胸部創傷,出産後,激しい咳の後などの非手術性の原因でも起こりうる.腫瘍性によるものは悪性リンパ腫のほか,原発性肺癌,Castleman病などがある.その他の原因では,リンパ脈管筋腫症,肝硬変,サルコイドーシス,結核などの報告がある.
臨床症状
 胸水貯留による呼吸困難,胸部圧迫感を示す.外傷性の場合は受傷2〜10日後より症状が出現する.乳び漏が長期化すると低栄養,免疫能低下状態が出現する.
診断
 確定診断は胸水検査により行われ,中性脂肪110 mg/dL以上,またはカイロミクロンの存在が示されれば診断される.コレステロール値の胸水/血清比は1.0以下を示し,リンパ球優位である.コレステロール値が250 mg/dL以上で胸水/血清比が1.0以上,好中球優位で中性脂肪値が血清と同等あるいはそれ以下の場合は偽性乳び漏(pseudochylothorax)とよばれるが胸管の破綻は伴わない.漏出部位の確認はリンパ管造影が有用である.
治療
 保存的治療には胸腔ドレナージ,胸膜癒着,低脂肪高カロリー食,絶食,経静脈栄養,ソマトスタチン(酢酸オクトレオチド)投与などがある.保存的治療が無効の場合,外科的に胸管結紮や胸腔腹腔のシャント形成を行う.[本間 栄]
■文献
Light RW: Chylothorax and pseudochylothorax. In:Pleural Diseases, 5th ed. pp346-361, Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2007.
McCormack FX, Inoue Y, et al: Efficacy and safety of sirolimus in lymphangioleiomyomatosis. N Engl J Med, 364: 1595-1606, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「乳び胸」の意味・わかりやすい解説

乳び胸
にゅうびきょう
chylothorax

胸腔内に乳状白濁液が貯留する状態をいう。この液を採取してみると,微細な脂肪球多数含んだ乳びであることがわかる。外傷,縦隔腫瘍気管支癌乳癌転移などで乳びを含むリンパ管が圧迫され,リンパが胸腔内に滲出して起る。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android