二つの中国(読み)ふたつのちゅうごく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二つの中国」の意味・わかりやすい解説

二つの中国
ふたつのちゅうごく

1950年6月の朝鮮戦争勃発からおもに 1960年代までに,台湾の問題に関してアメリカをはじめ西側諸国の一部に出された主張。 49年 10月中華人民共和国が成立し,翌年6月朝鮮戦争が勃発。共産主義蔓延を封じ込めようとしたアメリカ政府は台湾海峡艦隊を派遣したと同時に,台湾を中国の一部とする立場を修正しさまざまな形で「二つの中国」論を展開した。 (1) 台湾独立論 台湾と中国は同時に国連に加盟し,中国は台湾の安全を保障する。 (2) 台湾地位未定論  50年6月アメリカ大統領は「台湾の地位は法的に未定」の声明を発表し,台湾を一定の期間国連信託統治にゆだねたのち,現地の住民投票によって台湾の地位を決めると主張。 (3) 1.5中国論 台湾に対する中国の宗主権を認めると同時に台湾は独立の外交権を有する。中国と台湾が同時に国連に加入する。 (4) 二つの継承国  53年 11月アメリカ国務長官ダレスは国連における中国の代表権について「共産中国が国連,国民党中国が国連安保理事会に参加することが可能」と述べた。日本を含む西側諸国の一部は「二つの中国」論を支持したが,中国は二重外交の不承認および「二つの中国」をもつ国際会議国際組織に参加しない立場で台湾に対する主権を主張。 72年ニクソン訪中や日中国交回復などによって,西側諸国は公的立場として台湾を中国の一部と認めた。

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