二日灸(読み)ふつかきゅう

精選版 日本国語大辞典 「二日灸」の意味・読み・例文・類語

ふつか‐きゅう ‥キウ【二日灸】

〘名〙 陰暦二月二日、また八月二日にすえる灸。この日に灸をすえると、一年中健康に暮らせるといわれた。ふつかやいと。《季・春》 〔俳諧・毛吹草(1638)〕

ふつか‐やいと【二日灸】

〘名〙 =ふつかきゅう(二日灸)《季・春》 〔俳諧・誹諧初学抄(1641)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「二日灸」の意味・読み・例文・類語

ふつか‐きゅう〔‐キウ〕【二日×灸】

陰暦2月2日にすえる。この日に灸をすえると年中息災であるという。8月2日にすえる灸にもいう。ふつかやいと。 春》「かくれ家や猫にもすゑる―/一茶

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「二日灸」の意味・わかりやすい解説

二日灸 (ふつかやいと)

2月と8月(または5月)の2日に灸をすえる慣行。二日キュウ,二日ヤキ,ヤイト正月ヤイトゾメなどともいう。かつて全国で行われていたというが,西日本での方が多い。〈二日ヤイトは日を見るな〉などという所もあり,日の吉凶に関係なくこの日の灸は平素の2倍の効能があるとされる。旧暦のこの時期は春の農事と秋の収穫を前にして体調を整えておく必要のあるころではあったが,なぜこれらの日が特定されたかは不明である。島根県隠岐の西ノ島町赤ノ江では,肩の真ん中のチツケという場所に点灸し,かつてはこのときヤイトボコリといって若い衆鏡餅を持ち寄って共同飲食したというが,灸すえ日を若い者の寄合とか奉公人の出替りの日にしたり,村休みにしていた所は多い。この日の点灸は,個人の健康状態や好みを越えた一種の共同慣行であったのである。これとは別に,二十日灸といって1月20日を選んで灸をすえる所も各地にあった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の二日灸の言及

【出替り】より

…2月,8月の江戸でも1668年(寛文8)幕府の命により3月,9月に改められたが,以後も出稼人の農事のつごうを考慮したためか2月,8月も長く並存して行われた。2月,8月を出替りとするのは,2月に農事始めの各種行事が集中していること,また2月と8月の2日は灸をすえる日とした二日灸の習俗との関連が指摘されている。一説にはこの時期沈滞しがちな生命力に灸をすえ労働に耐えうる活力を賦与するためともいわれているが定かでない。…

【二日灸】より

…2月と8月(または5月)の2日に灸をすえる慣行。二日キュウ,二日ヤキ,ヤイト正月,ヤイトゾメなどともいう。かつて全国で行われていたというが,西日本での方が多い。〈二日ヤイトは日を見るな〉などという所もあり,日の吉凶に関係なくこの日の灸は平素の2倍の効能があるとされる。旧暦のこの時期は春の農事と秋の収穫を前にして体調を整えておく必要のあるころではあったが,なぜこれらの日が特定されたかは不明である。島根県隠岐の西ノ島町赤ノ江では,肩の真ん中のチツケという場所に点灸し,かつてはこのときヤイトボコリといって若い衆が鏡餅を持ち寄って共同飲食したというが,灸すえ日を若い者の寄合とか奉公人の出替りの日にしたり,村休みにしていた所は多い。…

※「二日灸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android