五味川純平(読み)ゴミカワジュンペイ

デジタル大辞泉 「五味川純平」の意味・読み・例文・類語

ごみかわ‐じゅんぺい〔ゴミかは‐〕【五味川純平】

[1916~1995]小説家。中国大連の生まれ。本名、栗田茂。自らの戦争体験にもとづいた長編小説人間の条件」がベストセラーとなる。その後も戦争をテーマにした小説評論を数多く残した。作「戦争と人間」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五味川純平」の意味・わかりやすい解説

五味川純平
ごみかわじゅんぺい
(1916―1995)

小説家。中国の大連(だいれん)生まれ。本名栗田茂。旧制大連一中を経て東京商大(現一橋大学)中退。東京外語(現東京外国語大学)卒業後、満州(中国東北)の軍需会社に勤務、1943年(昭和18)召集されてソ満国境の各地を転々した。45年8月ソ連軍との交戦で所属部隊全滅したが、九死に一生を得た。この戦争体験、敗戦体験に基づいて56年(昭和31)7月から全6冊の大河小説『人間条件』(~1957)を書き下ろし刊行してベストセラー作家となった。その後『自由との契約』(1958~60)、『歴史の実験』(1959)、『孤独の賭(か)け』(1962~63)、『戦争と人間』(1965~82)などの長編小説を執筆し、戦争と人間との関係を執拗(しつよう)に追求した。その後も、戦争をテーマに追求し続け、フィクションの形で表現した『人間の条件』に対してドキュメントで書いた『虚構大義』(1973)を刊行、さらに『ノモンハン』(1975)、『御前会議』(1978)、『ガダルカナル』(1980)、『「神話」の崩壊――関東軍野望破綻(はたん)』(1988)、『戦記小説集』(1990)と書き継いだ。また、『極限状況における人間』(1973)など、評論集もある。

磯貝勝太郎

『『極限状況における人間』(1973・三一書房)』『『五味川純平著作集』全20巻(1983~85・三一書房)』『『歴史の実験』『孤独の賭け』第1~3部(角川文庫)』『『ガダルカナル』『ノモンハン』上下『人間の条件』1~6『虚構の大義』『「神話」の崩壊――関東軍の野望と破綻』『戦記小説集』(文春文庫)』『『戦争と人間』1~9(光文社文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五味川純平」の意味・わかりやすい解説

五味川純平
ごみかわじゅんぺい

[生]1916.3.15. 中国,大連
[没]1995.3.8. 東京
小説家。本名栗田茂。1933年東京商科大学の予科に入学するが,中退。1936年東京外国語学校に入学。在学中に思想問題により治安維持法違反の容疑で検挙されるが 1940年に卒業。同年満州で昭和製鋼所に入社したが 1943年に召集され,ソビエト連邦国境に配属された。第2次世界大戦終結直前の 1945年8月,ソ連軍との戦闘で部隊が全滅するなかで九死に一生を得て捕虜となる。1948年に帰国し,苛酷な戦争体験を素材に軍隊や戦争の非人間性を告発し,その桎梏からの自己の解放を求める主人公を描いた長編小説『人間の条件』(6巻,1956~58)を発表,映画化(→人間の条件)されて話題を呼び記録的ベストセラーとなった。『自由との契約』(6巻,1958~60),『孤独の賭け』(3巻,1962~63),『戦争と人間』(18巻,1965~82)など,戦争と人間との関係を追求し続けた。1978年に一連の反戦文学で菊池寛賞を受賞。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「五味川純平」の解説

五味川純平 ごみかわ-じゅんぺい

1916-1995 昭和後期-平成時代の小説家。
大正5年3月15日中国大連生まれ。昭和18年応召,ソ連軍との激戦,捕虜生活をへて23年復員。非人間的な軍隊機構と個人との闘いを31年から「人間の条件」6巻にかきおろし,ベストセラーとなる。「戦争と人間」「ノモンハン」など,戦争文学をかきつづけ,53年菊池寛賞。平成7年3月8日死去。78歳。東京外国語学校(現東京外大)卒。本名は栗田茂。
【格言など】危険は直面するまでは怖れろ。直面したら怖れるな(ソ連軍との戦闘の前夜,初年兵にいったことば)

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百科事典マイペディア 「五味川純平」の意味・わかりやすい解説

五味川純平【ごみかわじゅんぺい】

小説家。満州(中国東北部)生れ。本名栗田茂。東京商大(現,一橋大)中退後,東京外語大卒業。1943年応召,敗戦直前に所属部隊はソ連軍との戦闘でほぼ全滅。この体験をいかして,1956年から《人間の条件》全6巻を次々と刊行。大ベストセラーとなる。他に《戦争と人間》《ガダルカナル》,評論《極限状況における人間》など。
→関連項目山本薩夫

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