五島茂(読み)ごとうしげる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「五島茂」の意味・わかりやすい解説

五島茂
ごとうしげる
(1900―2003)

歌人、経済学者。東京生まれ。別名小杉茂。父は『心の花』の歌人石榑千亦(いしくれちまた)。東京帝国大学経済学部卒業。歌人五島美代子と結婚し、五島姓となる。早くから『心の花』『アララギ』に作品を発表していたが、1928年(昭和3)に『短歌雑誌』に発表した「短歌革命の進展(一)~(八)」で斎藤茂吉前田夕暮らをマルクス主義立場にたって批判した。プロレタリア短歌が興隆しつつあった短歌史の流れのなかでの革新派最前線の論陣であった。批判されたなかで、斎藤茂吉が反駁(はんばく)、論争となって歌壇の注目を集めた。同1928年に新興歌人連盟を結成、分裂後、1929年に前川佐美雄(さみお)らと『尖端(せんたん)』を創刊。その後、1931年から1933年にかけてヨーロッパに留学。帰国後、しだいに革新的立場から後退した。1938年に美代子らと『立春』を創刊し、1998年(平成10)、600号で終刊するまで主宰した。第二次世界大戦後の、1956年(昭和31)に現代歌人協会を創立、ながく理事長を務めた。1981年歌集三部作『展(ひら)く』『遠き日の霧』『無明長夜』により第4回現代短歌大賞を受賞した。歌集に『石榑茂歌集』(1929)、『海図』(1940)、『気象』(1960)など。ほかに第九歌集まで収める『五島茂全歌集』(1990)がある。また、歌論集に『新しき短歌論』(1942)がある。

[佐佐木幸綱]

 マロニエのさかりすぎゆく夕日ざし坂多き街に住みなれむとす

『『協同組合の先駆ロバアト・オウエン:人とその思想』(1946・同文館)』『『気象』(1960・白玉書房)』『「石榑茂歌集」(『現代日本文学大系』94巻所収・1973・筑摩書房)』『『ロバアト・オウエン著作史:協同の一研究』『ロバアト・オウエン著作史:協同の一研究・続篇』『ロバアト・オウエン著作史:協同の一研究・附録』(1974・東洋書店)』『『展く』(1979・白玉書房)』『『遠き日の霧』(1980・白玉書房)』『『無明長夜』(1980・石川書房)』『『夢しげく』(1982・短歌新聞社)』『『持続』(1987・石川書房)』『『定本五島茂全歌集』(1990・石川書房)』『『最後のピエタ』(1996・短歌新聞社)』『五島美代子著、五島茂編『定本五島美代子全歌集』(1983・短歌新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「五島茂」の解説

五島茂 ごとう-しげる

1900-2003 昭和-平成時代の歌人,経済学者。
明治33年12月5日生まれ。石榑千亦(いしくれ-ちまた)の3男。昭和3年マルクス主義の立場から「短歌革命の進展」を雑誌に連載し,斎藤茂吉と論争,注目された。13年妻の五島美代子と「立春」を創刊し,主宰。56年「展く」などで現代短歌大賞。長年今上天皇の作歌を指導した。東京外大,明大などの教授歴任。現代歌人協会初代理事長。平成15年12月23日死去。103歳。東京出身。東京帝大卒。著作に「イギリス産業革命社会史研究」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android