井上氏(読み)いのうえうじ

改訂新版 世界大百科事典 「井上氏」の意味・わかりやすい解説

井上氏 (いのうえうじ)

近世大名。三河国の出身。正就は徳川秀忠につかえ,1615年(元和1)1万石を領し,22年遠江横須賀5万2500石となり,老中昇進。その後幕末までの間に十数度の転封を繰り返すが,常陸笠間(1645-92,1702-47)と遠江浜松(1758-1817,45-68)の領有期間が比較的長かった。1868年(明治1)以降は上総鶴舞に移封。分知・加増により石高の増減があったが,1718年(享保3)正岑(まさみね)のとき,6万石に加増,以後幕末に至る。当主はおおむね河内守を称し,奏者番・寺社奉行をつとめた。また正就,正岑,正経,正直は老中となる。維新後は子爵。なお分家には大名旗本が多く,下総高岡の井上氏の祖は正就の弟政重。1640年(寛永17)に1万石に取り立てられ,孫正蔽(まさあきら)のときに高岡を陣屋とし,以後幕末に至る。当主はおおむね従五位下筑後守に叙任。また正岑の弟正長も1712年(正徳2)に常陸下妻1万石の大名となる。正長は奏者番・寺社奉行を兼任した。当主はおおむね従五位下遠江守に叙任。維新後は両分家とも子爵。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「井上氏」の意味・わかりやすい解説

井上氏
いのうえうじ

江戸時代の譜代大名。清和源氏掃部助(かもんのすけ)頼季(よりすえ)の後裔(こうえい)とするも不明。確実に名が知れるのは遠江国(とおとうみのくに)横須賀城の大須賀康高(やすたか)に属した清宗(きよむね)から。その孫井上正就(まさなり)は徳川秀忠に仕え、老中を勤め1622年(元和8)横須賀城主となり、5万2500石を領した。その後、正利(まさとし)のとき常陸国(ひたちのくに)笠間(5万石)、正岑(まさみね)のとき丹波国亀山(4万7000石)など城地を移し、1758年(宝暦8)正経(まさつね)のとき遠江浜松城主(5万石)となったが、水野忠邦(ただくに)の浜松襲封(しゅうほう)により陸奥国(むつのくに)棚倉(たなくら)、上野国(こうずけのくに)館林(たてばやし)と移り、1845年(弘化2)水野が失脚すると浜松に戻った。支藩は、正就の弟井上政重を祖とする下総国(しもうさのくに)高岡藩(1万0500石)、正岑の弟正長(まさなが)を祖とする常陸国下妻藩(しもつまはん)(1万石)がある。

小池 進]

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