交尾(読み)コウビ(英語表記)coitus
copulation

デジタル大辞泉 「交尾」の意味・読み・例文・類語

こう‐び〔カウ‐〕【交尾】

[名](スル)体内受精をする動物が、生殖のために交わること。互いの生殖口を密着させ、雄の精子を雌の体内に送り込む。交接。
[類語]性交情交セックス交接交合発情盛る求愛つるむつがうファックエッチ性行為房事同衾共寝夜伽性交渉性生活夫婦生活合歓関係一儀寝る抱く枕をわす夜の営み

つるび【交尾/遊牝】

つるみ(交尾)」に同じ。〈和名抄

つるみ【交尾/遊牝】

つるむこと。雄と雌とが交尾すること。

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精選版 日本国語大辞典 「交尾」の意味・読み・例文・類語

こう‐び カウ‥【交尾】

〘名〙 脊椎動物昆虫類などの動物の雌雄が生殖のために交接すること。つるむこと。つがうこと。〔生物学語彙(1884)〕
※ダダイスト新吉の詩(1923)〈高橋新吉〉一九一一年集「彼女が 愛のない男によって 退屈を紛らしたのも 雀の交尾を 見てからなんだそうな」

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改訂新版 世界大百科事典 「交尾」の意味・わかりやすい解説

交尾 (こうび)
coitus
copulation

体内受精を行う動物の雌と雄(雌雄同体の場合は成熟した2個体)が生殖孔をくっつけあったり(鳥類など),さらに特殊化した雄の器官を用いて,直接精子を雌の体内に送りこむ行為。交接ともいい,ヒトの場合,性交という。交尾をする多くの動物はさまざまな交尾器官をそなえている。多くの動物は一定の時期(多くは春)に交尾を行い,これを交尾期という。交尾に先立っての雌雄の接近については,その種固有のフェロモンディスプレー,鳴き声,婚姻色などが重要な役割を果たしているが,これは,類似の種が同じ場所に生息している場合に,間違いなく同種どうしが交尾することを保証する生殖的隔離機構の一つと考えられる。
執筆者:

有性生殖をする無脊椎動物には交尾によって交配するものがあり,交尾器官を発達させている。渦虫(かつちゆう)類には,生殖腔の中に貯精囊とつながった筋肉性の陰茎があり,クチクラ質の複雑な付属突起を備えていることもある。陰茎は生殖腔から生殖孔を通して突き出され,相手の生殖腔に挿入されて交尾する。吸虫類では,貯精囊と生殖腔の間の前立腺に囲まれた射精管が反転して突出し,陰茎の役割をする。鉤頭(こうとう)虫類にも似たような構造の交尾囊に納まった陰茎がある。線虫類では,貯精囊に続く射精管が直腸に開いて総排出口を形成し,その内壁がへこんでできた針囊の中にクチクラ質の交尾針がつくられ,これを雌の腟(ちつ)に入れて移精する。総排出口の周りの体表には,交尾のときに雌をはさむクチクラ質のひだが発達することもある。線虫類の総排出口内壁には剛毛を生じ,陰茎の役割をするものがある。貧毛類の雄性生殖孔の周りには剛毛があって交尾をたすけ,生殖孔が反転して陰茎の働きをするものもある。腹足類では,右側の退化した腎管の末端部が生殖輸管につながって,右腎管孔が生殖孔となる。雄では,この生殖孔から体表の溝あるいは管が続き,その末端は突出・伸長して溝状あるいは管状の陰茎を形成する。雌では,この部分は表皮中に発達した分泌腺で包まれた管となり,交尾囊や受精囊が作られる。雌雄同体のものではこの両者を備え,さらに受精囊へ直接通じる交尾孔が開口しているものもある。頭足類では,ふつう腕の1本が変形して交接腕となり,貯精囊の中で作られる精子を入れた精包を雌の外套腔(がいとうこう)内に移し入れる。そのとき腕の一部も切れて精包を保持するものもある。甲殻類では,雄性生殖孔の周りが突出・伸長したり付属肢が変形して溝状・管状の構造となったりして陰茎を作るが,精子は雌性生殖孔内へは入れられず,精包に入れて雌の体表に付着させられることが多い。雌雄同体の蔓脚(まんきやく)類には退化した腹部に伸長性の陰茎が発達し,これを伸ばして相手の外套腔内に放精する。蛛形(ちゆけい)類の雄性生殖孔は陰茎として雌の交尾孔に挿入される。昆虫類の外部生殖器は,一般に,第9腹節に開口する輸精管末端の射精管が突出した陰茎とその周囲の体表隆起および付属肢などで形成された挿入器で,陰茎によって雌の受精囊・交尾囊あるいは腟の中に精子あるいは精莢(せいきよう)を射出する。
執筆者:

脊椎動物では,交尾によって体内受精をする動物の多くが外部生殖器官として交尾器官を備えている。雄の交尾器官は,雌の生殖孔へ挿入し精液を注入する突起として特殊化しているので,一般に挿入器官intromittent organともいう。雌では消化管・尿道・卵管の共同の出口である総排出腔,または産道である腟が交尾器官を兼ねており,特殊な構造を示さないことが多い。

 体内受精を行い,卵胎生である軟骨魚類では肛門(総排出腔の外口)の両側に腹びれがあるが,雄ではその腹びれの内側縁の1本の鰭条(きじよう)が巨大化し,軟骨性の中軸を備えた左右1対の棒状体になっている。交尾するときこの棒状体を雌の総排出腔へ差しこむので,これを鰭脚(ひれあし)pterygopodiumまたは交尾器clasperという。この交尾器の表面には深い溝があり,総排出腔から出た精子がそれによって雌の子宮へ導かれる。

 硬骨魚類は一般に卵生で体外受精であるが,卵胎生で体内受精をするものも少なくない。トウゴロウイワシ類のカダヤシなどでは雄のしりびれの鰭条が精子を導く槍状の器官(gonopodium)になっている。同じ仲間にはこれが中空の管になっているものや,のどの下に複雑な交尾器官(priapium)をもっている種類もある。

 両生類はふつう厳密な意味での交尾を行わないので交尾器官をもたないが,北アメリカ産のカエルの1種アスカフスAscaphusの雄は総排出腔から尾のように常時突出した交尾器官をもち,交尾によって体内受精を行う。雌にも相同の器官があるが,これは産卵管になっている。

 爬虫類はすべて交尾によって体内受精を行い,卵生または卵胎生で,その卵はいわゆる有羊膜卵である。ムカシトカゲは特殊な交尾器官をもたず,雌雄が総排出腔どうしを接合させるだけで交尾をする。トカゲ類とヘビ類では,雄は総排出腔内に1対の交尾器官をもっている。これらは交尾のとき裏返しになって胴体外へ突出し,雌の総排出腔内へ挿入されるもので,この器官を半陰茎hemipenisという。カメ類とワニ類の雄は総排出腔内に1個の陰茎を備え,交尾のときこれを体外へ膨出させて雌の総排出腔へ挿入する。

 鳥類は一般に特殊な交尾器官をもたず,ムカシトカゲのように総排出腔の外口どうしを合わせるだけで精子の授受を行う。ただダチョウ,エミュー,ガン,カモなど少数の種類では,雄は総排出腔内に左右非相称の陰茎をもち,交尾するときこれを体外へ突出させる。

 哺乳類では雄の陰茎と雌のが交尾器官である。発生学的には陰茎は雌の腟の前方にある陰核と相同のもので,いずれも内部に海綿体を備えている。交尾の際には陰茎の海綿体が充血するため陰茎が膨張・硬直(勃起)し,腟への挿入が容易になる。クジラ類の陰茎は通常は胴体内へ完全に引っ込められており,交尾の際に体外へ突出する。これとは逆にハイエナの雌では,雄の陰茎に酷似した尿道口突起が腟を覆っている。哺乳類のなかで食虫類・翼手類・齧歯(げつし)類・食肉類およびヒト以外の霊長類は,陰茎の先端付近に陰茎骨を備えている。これは筋肉の付着しない小骨で,形は種々さまざまだが棒状のものが多い。陰茎の皮膚は包皮と呼ばれ,きわめて融通性にとむ皮下組織をもっている。陰茎の主体をなす海綿体が充血によって膨大することができ,また交尾中にいわゆるスラストができるのはこの皮下組織のためである。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交尾」の意味・わかりやすい解説

交尾
こうび
coitus
copulation

体内受精が行われる動物で、生殖口を密着させて雄の精子を雌の体内に送り込む行動をいい、交接ともいう。進化の過程で陸にあがった動物は、魚や多くの水生無脊椎(むせきつい)動物のように、生活している場にある水を精子の運搬手段として使えなくなった。そこで雄が直接、雌の体内に精子を送り込む必要が生じた。このため、多くの種では、精子を送りあるいは受けるための交尾器官が発達している。普通、雄の交尾器官を陰茎、雌のものを腟(ちつ)という。もっとも典型的な例は哺乳(ほにゅう)類で、よく発達した陰茎を腟に挿入して交尾が行われる。多くの鳥類では交尾器官はとくに発達せず、総排出口を密着させて交尾する。爬虫(はちゅう)類では総排出腔(こう)の内壁が発達してできた半陰茎とよぶ交尾器官によって交尾が行われる。両生類のカエルの仲間では体内受精は行われず、雌は水辺で産卵し雄が精子をかけるが、この際、雄は雌を抱きかかえ生殖口を近づける。これは交尾とはいわず抱接という。魚類は多くの場合体外受精であるが、ソードテールのように臀(しり)びれが変化した交尾器官をもち体内受精を行うものもある。サメの仲間にも、臀びれの変化した交尾器が発達したものが多い。無脊椎動物では昆虫やミミズ、カタツムリなどが交尾を行い、独特な交尾器官が発達しているものもある。また、雄は、交尾可能なところまで雌に近づくために、さまざまな求愛行動を行う。

[和田 勝]

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百科事典マイペディア 「交尾」の意味・わかりやすい解説

交尾【こうび】

交接とも。体内受精を行う動物で,雄の精子を雌の体内に送り込むための行動をいう。鳥類のように相互の生殖口を合わせて行われるものもあるが,多くは雄側に交尾器(陰茎)の発達をみる。ミミズ,カタツムリなど雌雄同体の場合は,結合も相称的となる。カエルなど体外受精を行う動物の性行動は抱接と呼んで区別される。
→関連項目自家受精性交

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交尾」の意味・わかりやすい解説

交尾
こうび
copulation

体内受精を行う動物において,雌雄の個体が生殖口または交尾器を密着させ直接精子を雌の体内に送り込む行動。交接ともいう。

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普及版 字通 「交尾」の読み・字形・画数・意味

【交尾】こうび

つるむ。

字通「交」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の交尾の言及

【性交】より

…男女の心理的・肉体的交わりをいい,具体的には,精子と卵子の結合を図るために,陰茎を腟内に挿入することを指す。動物における交尾と同じであるが,ヒトの場合には〈性交〉という言葉を用い,〈交接〉〈交合〉などともいう。また古くは〈目合(まぐわい)〉などともいわれた。 性交も含め,男女の性の行為が〈性行為sexual act〉であり,さらに拡大して性に関する行動を総称したものが〈性行動sexual behavior〉である。…

【性交】より

…男女の心理的・肉体的交わりをいい,具体的には,精子と卵子の結合を図るために,陰茎を腟内に挿入することを指す。動物における交尾と同じであるが,ヒトの場合には〈性交〉という言葉を用い,〈交接〉〈交合〉などともいう。また古くは〈目合(まぐわい)〉などともいわれた。 性交も含め,男女の性の行為が〈性行為sexual act〉であり,さらに拡大して性に関する行動を総称したものが〈性行動sexual behavior〉である。…

【接合】より

…2個体が接着し細胞融合を起こし,核物質を相互に交換した後,分離して2個体に復帰する。配偶子間の合体copulationでは2細胞が1個体を形成し,この点で接合と異なる。接合は任意の2個体間に起こるのではなく,接合型の異なる個体間で特異的な接着が起こることによって始まる。…

※「交尾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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