交趾焼(読み)コーチヤキ

デジタル大辞泉 「交趾焼」の意味・読み・例文・類語

コーチ‐やき【交趾焼】

明代後期に中国南部で作られた三彩陶器。純粋の三彩と、文様粘土の細い線で縁どり、その内外うわぐすり充塡じゅうてんしたものとがある。茶人の間で特にその香合が珍重された。交趾から舶載されたことからの名称

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精選版 日本国語大辞典 「交趾焼」の意味・読み・例文・類語

コーチ‐やき【交趾焼】

〘名〙 中国南部地方で焼成された三彩陶器の一種。明代末期から清朝にかけて広東地方で作られたと見られる。胎土暗色で緑、黄、紫の三彩釉が施され、特に型造りの香合は交趾香合といい茶人に愛好される。コーチン焼。

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改訂新版 世界大百科事典 「交趾焼」の意味・わかりやすい解説

交趾焼 (こうちやき)

もとは交趾産の陶器という意味であるが,おそらく桃山・江戸初期に交趾通いの交易船が運んだ陶器のことで,実際には中国南部で焼かれた陶器が多いと考えられている。最も有名なものは茶人が珍重する交趾香合で,緑・黄・紫などの鉛釉でいろどった,さまざまの形の三彩香合であるが,すべて広東付近の製品ではないかといわれている。また三彩の鉢や皿で,明後期の中国南部産と考えられるものもあり,華北産の明三彩をこの名で呼んだ例もすくなくない。したがってある時期には鉛釉陶器あるいは三彩陶器の総称として,この名が用いられた可能性がつよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「交趾焼」の意味・わかりやすい解説

交趾焼
こうちやき

中国、華南地方で焼かれた明(みん)後期の三彩陶。中国物でありながら交趾(南ベトナムの古い地方名)とするのは、この方面に輸出されたものを、日本が再度輸入することが多かったためと思われる。交趾焼は技術、様式とも明らかに中国の明代陶磁の系譜を引く。素地が柔らかい陶胎と固い半磁胎とに分かれ、とくに半磁胎の交趾焼は景徳鎮窯の法花(ほうか)と同一線上にあり、この窯(かま)の傍系の窯の作品かと判断される。とくに日本の茶人の間でやかましい交趾焼の香合(こうごう)は、後者に属する典型である。なお、わが国では、江戸後期に各地の窯が交趾焼に倣って三彩を焼き、その三彩釉(ゆう)を交趾釉と称する。

[矢部良明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交趾焼」の意味・わかりやすい解説

交趾焼
こうちやき
Jiao-zhi-shao

中国,明末~清代に交趾地方で生産された陶器の総称。交趾は中国の南方の地域で,漢代には交趾郡がおかれたことが知られ,早くから開けていた。この地方の窯,すなわち広東省の諸窯,浙江省の宜興 (ぎこう) ,蜀山などの窯で交趾手のものが制作されたようで,青,黄,緑,紫などの釉 (うわぐすり) を用いて三彩釉に似たやわらかみのある色調が特徴。

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