仄めく(読み)ほのめく

精選版 日本国語大辞典 「仄めく」の意味・読み・例文・類語

ほの‐め・く【仄めく】

〘自カ五(四)〙 (「めく」は接尾語)
① ほのかに形や光が見える。見え隠れに姿をあらわす。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「かげろふのあるかなきかにほのめきてあるはあるともおもはざらなん」
② ちらちら姿を見せて通って来る。ちょっと立ち寄る。また、ちらと姿を見かける。
源氏(1001‐14頃)花散里「御おとうとの三のきみ、うちわたりにて、はかなうほのめき給ひしなごりの」
③ それとなく本心態度やことばのはしばしにあらわれる。
※土左(935頃)承平四年一二月二七日「かみの館の人々のなかにこのきたる人々ぞ、心あるやうにはいはれほのめく」
④ ほのかにかおる。ほんのりと香りが流れる。
※源氏(1001‐14頃)蛍「うちよりほのめく追風も、いとどしき御匂ひのたち添ひたれば、いと深くかほり満ちて」
⑤ ほのかに音が聞こえてくる。ほのかにかき鳴らす。
※源氏(1001‐14頃)橋姫「をりをりほのめく箏の琴のねこそ」
⑥ 人のうわさにたつ。うわさをされる。
源平盛衰記(14C前)三二「彼女房みめ形類なく、心の色世に有難しと、ほのめきければ」
⑦ 女性が、やさしい声でいう。
浄瑠璃・孕常盤(1710頃)四「優しい声にて何成共云かけ給へとほのめけば」
⑧ 期待して、わくわくする。うきたつ。
※中華若木詩抄(1520頃)中「心もほのめくほどに、馬のをそきが、せうし也」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「仄めく」の意味・読み・例文・類語

ほの‐め・く【×仄めく】

[動カ五(四)]
ほのかに見える。かすかに目にとまる。「霧の中に姿が―・く」
ほのかに香る。「風に―・く花の匂い
それとなく言葉や態度に表れる。「人のよさが―・いている」
ちらりと寄る。ちょっと顔を出す。
「思ひもかけず―・き給ふめりしを」〈夜の寝覚・三〉
[類語]ぼやけるぼかす薄明かり明かり灯火ライトともしびきらめき輝き光明光輝光耀こうよう光彩光芒こうぼう明るみ雪明かり月明かり星明かり川明かり花明かり街明かり窓明かりほの明るい薄明るい余光薄明かわたれ時たそがれたそがれ時残照夕明かりおぼろ微光薄ら日ほのぼのトワイライト

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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