仕出屋(読み)しだしや

精選版 日本国語大辞典 「仕出屋」の意味・読み・例文・類語

しだし‐や【仕出屋】

〘名〙 料理弁当仕出しをする家。また、それをする人。
人情本・英対暖語(1838)初「此一軒隣のが仕出し屋ござゐますから、私が直にあつらへて参じますが」
[補注]上方では、近世初期に「仕出弁当屋」という形で出現し、特に観光地京都で大いに繁盛した。江戸では、「奈良茶飯」のような料理茶屋の方が早く現われ、料亭が仕出し屋を兼業するようになるのは近世後期になってからである。その後、仕出し専門の料亭も現われ、一業種として確立していった。

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改訂新版 世界大百科事典 「仕出屋」の意味・わかりやすい解説

仕出屋 (しだしや)

注文に応じて料理をつくり届けることを業とする家。会席料理などのフルコース,ないしはそのなかの数品を供するのが本来で,そばやすし出前とはニュアンスを異にする。《江戸買物独案内(えどかいものひとりあんない)》(1824)を見ると,高級料亭の大半が仕出しを行っている。山谷(さんや)の八百善は江戸第一と称された店だが,一時は仕出専業であった。そのころのようすを《皇都午睡(こうとごすい)》(1850)は〈当時は精進料理の仕出しのみをして,町家にて三十人五十人の法事仏事あれば,誂へ(あつらえ)に任せ朱黒青漆とか膳碗家具迄残らず取揃へ,引菓子に至る迄揃へ……〉と伝えるが,そのように膳椀はじめ道具一式を運び込んで宴席を調えることも多かった。関西,とくに京都の仕出屋には特色がある。家業に忙しい商家が夕食を仕出屋からとる風習があるためで,いたるところに仕出屋があり,なかには同業の飲食店だけを顧客とするような店もある。また,茶道の諸流派や大寺院などに属して懐石料理や精進料理の仕出しをする家もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕出屋」の意味・わかりやすい解説

仕出屋
しだしや

仕出料理の業者。仕出弁当屋ともいう。仕出料理は出前(でまえ)料理ともいい、注文に応じて調製して客方に届ける料理で、そうした専門業者は幕末期の江戸に出現した。客の注文に応じて特殊料理の調達供応にあたる、いわゆる「会席料理」の発達に伴い、「料理屋」が出現すると、野外行楽の携行食事(弁当料理)の調達も、それに依託されるようになっていった。古くは「食籠(しょくご)」に詰めた食物を現場で面桶(めんつう)(弁当)に盛り分けていたのである。『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に、天保(てんぽう)年間(1830~44)に江戸で有名であった料理茶屋の八百善(やおぜん)が仕出業専門に切り替えたとあるが、このころに仕出料理業も一般化したのであろう。客数に応じ個別に「折箱(おりばこ)」に盛り分けた料理を調製して一般の注文に応ずる仕出業は、明治以後さらに各地に広がった。魚屋、飲食店、料亭の兼業も普通になり、またいわゆる「駅弁」の一般化とも関連して、広く全国に専門の仕出業者を出現させた。そしてその余流は今日の外食チェーン企業にも及んでいる。

[竹内利美]

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