仙貨紙(読み)センカシ

デジタル大辞泉 「仙貨紙」の意味・読み・例文・類語

せんか‐し〔センクワ‐〕【仙貨紙/仙花紙/泉貨紙】

こうぞ原料にしていた厚手の強い和紙。包み紙やカッパなどに用いた。天正年間(1573~1592)伊予の人、兵頭仙貨ひょうどうせんかが作り出したという。
くず紙を漉き返して作った粗悪な洋紙。第二次大戦後の物資欠乏の時代に作られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仙貨紙」の意味・わかりやすい解説

仙貨紙
せんかし

伊予(いよ)国(愛媛県)原産の、コウゾ(楮)を原料とした厚手のきわめてじょうぶな和紙。天正(てんしょう)年間(1573~92)に、伊予国松渓(まつだに)(西予(せいよ)市野村町松渓)の城主、兵頭(ひょうどう)太郎左衛門が、戦乱を逃れて付近の安楽寺で剃髪(ていはつ)し、仙貨居士(こじ)と名のり、この紙を創製したと伝えられる。泉貨、仙過、仙花とも書くが、正しくは仙貨である。江戸時代には、宇和島藩がほかの紙とともにこの紙を保護育成した。元禄(げんろく)年間(1688~1704)からは大坂の蔵屋敷に送り、文化(ぶんか)年間(1804~18)には、領内の農民の反対を排して専売仕法(江戸時代の宇和島藩の法規の一つ)を確立し、明治維新に至った。伊予以外の土佐(高知県)、吉野(奈良県)、阿波(あわ)(徳島県)でも類似の紙が仙過の名で漉(す)かれ、帳簿、傘、合羽、袋などに広く用いられた。第二次世界大戦の末期には、統制外の用紙として機械漉きの粗悪紙が「仙花紙」の名で多量に抄造されたが、まったく別の物である。本来の仙貨紙も、いまはほとんど漉かれなくなっている。

[町田誠之]

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