以上・已上(読み)いじょう

精選版 日本国語大辞典 「以上・已上」の意味・読み・例文・類語

い‐じょう ‥ジャウ【以上・已上】

[1] 〘名〙
① ある数量や程度より上であること。
(イ) (数量、段階などの基準を表わす語について) その基準を含んでそれより上であることを示す。⇔以下(いか・いげ)
※続日本紀‐文武天皇元年(697)八月壬辰「賜王親及五位已上食封各有差」
※社会百面相(1902)〈内田魯庵投機「『百円以上!』と織江は呆れ返った」 〔論語‐雍也〕
(ロ) (物事を比較するとき、一方の事柄を表わす語について) その他がそれより程度の著しいことを示す。
※古い玩具(1924)〈岸田国士〉一「黙ってゐるのが、云ひ出すのと同じくらゐ、いや、それ以上恐ろしいやうな気がするんです」
② 室町時代以降の書状の追伸部分(追而書(おってがき))の書留(かきとめ)文言。追伸部分が終結したことを表わす。近世では追而書のほか書状そのものやその他の文書の書留文言としても使われた。
※上杉家文書‐(永祿五年)(1562)二月一三日・上杉輝虎書状「返々、細々いんしんよろこび入候。手彌あかり候へば、手本まいらせ候。以上」
随筆塩尻(1698‐1733頃)三四「近世書札の終に以上とかく此二字の意詳ならす」
③ 箇条書、目録などの文書の終結部分に使う文言。しめくくりの意。
※相模三島神社文書‐大永二年(1522)九月一一日・伊勢北条印状家朱「定法度。一西郡大井之宮社領〈略〉。一神領之事〈略〉。一社人等事〈略〉。以上。右定置条、若背此旨輩有之付而者」
④ (男子の書状の末にしるしたところから) 男のことをしゃれていう語。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「師匠さまかしこと以上別に置」
⑤ 上にあげた事柄。今まで述べた事柄。
武蔵野(1898)〈国木田独歩〉八「自分は以上の所説に少しの異存もない」
⑥ (「おめみえいじょう(御目見以上)」の略) 江戸幕府の制度で、幕府直参の一万石以下の士で、将軍に謁見する資格のあるもの。⇔以下
※雑俳・柳多留‐六(1771)「けんきゃうの娘以上へやる気也」
⑦ (接続詞のように用いる)
(イ) その後。また、その結果。つまり。
平治(1220頃か)上「親類皆梟(けう)せられ、已上義朝一人にまかりなり候へば」
(ロ) 全部で。合わせて。合計。
平家(13C前)七「大将軍には小松三位中将維盛〈略〉悪七兵衛景清を先として、以上大将軍六人」
⑧ (接続助詞のように用いる。助詞「は」を伴う場合もある) ある事態が起こることはやむを得ないと考える理由を示す。…のうえは。…からには。
雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上「我々が社会を組織する以上は、多数の幸福の為めに必要なる時は、一身の利益を放棄せねばなるまい」
[2] 〘副〙 どうしても。まるっきり。
※人情本・縁結月下菊(1839)上「さっきから考へますが、いじゃうわけがわかりませぬ」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「あせる計りで凄み文句は以上見附からず」
[語誌]「以上」で示される基準に達しない場合は、「以下」あるいは「未満」を用いて表現する(「五人以上」⇔「四人以下・五人未満」)。現代語では「以下」は基準となる数値を含んでその数値を割る場合、「未満」は基準となる数値を含まないで、その数値を割る場合である。なお、古典語の場合、基準となる数値を含むかどうかは必ずしも厳密ではない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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